おとな研究所は新しくなりました!

台湾・香港から人口流入過去最高。日本への影響は?

香港から台湾への移住者数が過去最高となった事が台湾当局の発表によって明らかになりました。

背景として国家安全保障法などに代表される香港での政治的弾圧や当局による厳しいコロナウイルス規制に対する不満の表れが人口移動に直接繋がった事が示唆されています。

台湾(中華民国)の国家出入国管理局の統計発表によると、昨年、約11,173人の香港在住者が台湾移住許可を取得した事がわかりました。これは前年比3.3%増となり、比較可能な1991年以降で最高水準となりました。

香港では、2019年以降、激化している当局との武力衝突を伴う民主化デモの結果、地元住民と駐在員の域外流出が激化しています。旧英国領だった香港は1997年に中華人民共和国に引き渡されましたが、いわゆる「一国二制度」による高度な自治を保障されており、中国本土よりも自由な経済と欧米との文化的近さも幸いし、人口と経済は急速に発展してきました。しかしながら、近年の中国当局による直接統治強化により、資本と人口の流出が止まらず、人口は昨年6月までの12カ月間でマイナス約8.7万人と急速なペースで減少し、公式統計によると人口は1.2%減の約739万人とされています。

急激な人口減少や企業移転を受けてもなお中国当局は、民主系勢力を取り締まる国家安全保障法や、中国当局が「愛国的」と認めた者のみが立候補できる新選挙制度などによる香港に対する支配強化政策を変更する姿勢を見せていません。結果として、この人口減少の原因である中国と香港の国際的孤立は長引く可能性があり、労働者や経営者の大規模な「脱出」に拍車をかけていると指摘されています。

2019年-2020年香港民主化デモ(2019ねん-2020ねんホンコンみんしゅかデモ、中国語: 反對《逃犯條例修訂草案》運動、英語: Anti-Extradition Law Amendment Bill Movement、2019–2020 Hong Kong protests)は、2019年3月から香港で継続して行われている一連のデモ活動の総称である。このデモは「逃亡犯条例改正案の完全撤回」や「普通選挙の実現」などを含む五つの目標「五大要求」の達成を目的としている。

2019年-2020年香港民主化デモーWeblio
June16protestTreefong15.jpg
香港に混乱をもたらした民主化デモ

民主系活動家が「弾圧」と表現する施策では、当局が「政治的」と見なす活動に従事する労働組合、慈善団体、映画製作者、専門家集団にまで表現や活動規制が課せられています。また、教育現場では、生徒が中国の歴史を「正しく理解」し、共産党指導による中国本土の憲法、文化、価値観について学ぶようカリキュラムの見直しが行われており洗脳や思想教育に該当するとも指摘されています。

<スポンサー>

対岸でのこれらの動きを受けて台湾当局は、香港やマカオ(旧ポルトガル領の特別行政区)からの移住や就労をより容易にすることを計画しています。簡素化措置により、台湾で勉強や仕事をしている人は、仕事を探している間、滞在許可を1年間延長することができるようになる様な措置が検討されています。

これらの背景には、台湾の「人口減少問題」もあります。公式データによると、少子高齢化の影響で2021年の台湾の人口は2年連続で減少し、前年比18万5900人減の2340万人となりました。これは2013年以来の低水準で、これからも人口の自然現象が予測されています。台湾側としても似た社会文化的背景がある香港人を迎え、人口減少に歯止めを掛けたい狙いがあります。

政治的要因での人口移動は従来頻発していてた中東地域のみならず、日本の隣国である中国・台湾・朝鮮半島や香港などの東アジア情勢が不安定となっている今、日本でも真剣に向き合わなければいけない問題です。近辺での難民を受け入れる道義的責任は勿論ですが、その際の社会問題対策も考えないとドイツでの難民危機の二の舞となります。しかし、海外からの人口流入はマイナスだけではありません。台湾と同じく、日本は現在、深刻な人口減少局面にあり、労働力の受け入れは喫緊の課題です。正しい施策では日本の大きな成長エンジンとなる、チャンスでもあります。

関連記事:この国は既に終わっている:少子高齢化

コメントを残す