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統一教会ってなに?【大学生のあなたに知ってほしい】

 本記事は一切、特定の宗教を信仰することを非難したり、それに対する偏見を流布する目的で作成されたものではありません。信仰の自由は保障されるべきものです。

 中高生や大学生を対象に、自身と宗教の関わりを見つめ直し、心身または経済的な被害を被らないよう知識を蓄えてもらうことを目的に本記事を執筆しました。

日本における宗教

 日本において、自身が進行している宗教を聞かれた時「無宗教である」と答える人は一定数いるのではないだろうか。NHK放送研究所が2018年に行った調査によれば、「ふだん信仰している宗教がありますか」という問いに対して、何らかの宗教を信仰していると答えた人は36%だったのに対し、「信仰している宗教はない」と答えた人は62%にものぼったという。宗教の内訳としては、仏教が31%、神道が3%、キリスト教が1%などであった。(参照:https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20190401_7.pdf)

日本人は本当に無宗教なのか?

 この日本人の「無宗教」自認に対して興味深い指摘がある。それは日本人の日常に根付いている神道や民間信仰と、一般的な宗教としてのイメージが強い「創唱宗教」が比較されているというものである。日本人の信仰心のベースは民間信仰、土着の宗教にあり、飛鳥奈良の時代から仏教という創唱宗教の影響を受けてきたにも関わらず、深く日常に根付くことはなかった。

そのため強い創唱宗教に出会うと何か戸惑ってしまい、自分は創唱宗教にはなじめないと考える日本人は多い

島薗 進 – nippon.com https://www.nippon.com/ja/in-depth/a02901/

「カルト」と「新興宗教」

「カルト」という語

 宗教の中で、「伝統宗教」と分類して位置づけられるのが「新興宗教」である。「伝統宗教」が仏教やキリスト教など長い歴史を有するものであるのに対し、「新興宗教」は読んで字の如く比較的成立以後の時間が浅いものをさす。そして「カルト宗教」とは、新興宗教と一部が重なって存在すると定義される。

 「カルト」とはそもそも、ラテン語で「崇拝・礼拝」を意味する”cultus”から派生した言葉である。言葉元来の意味では、「儀礼」や「祭祀」など単に宗教的活動を表す語で、そこに否定的なニュアンスは含まれていなかった。

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「カルト」とは、何等かの強固な信念(思想)を共有し、その信念に基づいた行動を熱狂的に実践するように組織化された集団のことをいう。

西田公昭 – 『マインドコントロールとは何か』

 立正大学の西田教授の定義において、「熱狂的」という部分が、人々が「カルト」という言葉を聞いて思い浮かぶイメージに最も近いのではないだろうか。

「カルト」の定義

 青木歳男弁護士は「消費者法ニュース」において、「カルト」による害悪について述べることで、それらの害悪を社会や人々に対してもたらす集団を「カルト」として定義しようとしている。

  • 信教や思想信条の自由を侵害する
  • 構成員や一般の人々に対して献金等の名目で経済的収奪を行う
  • 構成委員に対して暴力や性的虐待を行う
  • 集団自殺や犯罪行為に及ぶ
  • 集団のために奉仕を強制する

などが害悪の例として挙げられている。宗教集団とカルトに明確な境界線を引くことは難しいが、経済的/身体的な搾取が行われることが特徴的である。また信者が自由意思でその集団に参加したと確信し被害を認識しづらいことが、カルトが悪質だとされる所以である。

旧統一教会とは何か

 安倍元首相の銃撃以来メディアで取り沙汰されている「世界平和統一家庭連合(旧略称:統一教会)」について、現在の大学生や高校生では知らない人も多いだろう。実際、筆者がそのようなツイートをしたところ、大きな反響があった。旧統一教会について、その実態と問題点について見ていく。

名称と成り立ち

 現在の正式名称は「世界平和統一家庭連合」であるが、旧正式名称は「世界基督教統一神霊協会」であり、「統一協会」と略して呼ばれていた。創設は1954年に韓国で文鮮明氏によって行われ、日本での伝道は1959年に始められた。教典としては、文鮮明の教説を弟子の劉孝元が1957年にまとめた「原理解説」というものが存在している。

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 日本では1964年に宗教法人の認可を得、同年に大学生や青年への伝道を目的にして全国大学連合研究会が創立された。この研究会は現在でも主要大学で活動を継続しているとされている。

統一教会の教え

 1957年にまとめられた「原理解説」は1966年に「原理講論」として完成した。統一教会ではこれに加えて、教祖が説教で語った「御言葉」そして聖書の参照から構成された教えを信仰している。創造原理、堕落論、復帰原理が教えの中心にある。

旧統一教会への批判

 旧統一教会には、その活動においてこれまでも度々批判が向けられてきたが、そのひとつが「霊感商法」である。そもそも統一教会が多額の資金を要するようになったきっかけは、政治的対外活動の経費や国際的な伝道活動である。これらによる資金難を受けて、日本の統一教会は資金調達の命を受けるに至った。

 初期は細々とした個人事業や、会社組織の体を成したビジネスなども行われていたが、手っ取り早く宗教活動そのものを経済活動に転換するため、いわゆる「霊感商法」が編み出された。これは、いわば「救済」や「開運」のため、朝鮮人参茶や高麗大理石壺などを販売し利益を得るという方法であり、1980年代から広く行われるようになった。高校生や大学生でも、騙されやすい人に対して「そんなんじゃ壺売られるよ」などといった言い回しをすることはあると思うが、単なる比喩ではなく実際に行われているのである。

 1987年には全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成され、霊感商法の被害者を助けるため商品の返還交渉をしたり、損害賠償請求の提訴を行なったりしてきた。結成からの約34年間で統一教会に関する相談は3万4537件寄せられ、被害総額は約1237億円にも上るという。

 また、人々が統一教会に対して不気味に思う要素のひとつが「合同結婚式」である。教祖が統一教会員同士をマッチングさせ、その場で結婚させることで、教義に著されている「原罪」がない子供が生まれるというのだ。1960年から今までには37回にわたり国際合同結婚式が挙行されており、これまでに結ばれたカップルは30億組を越えるとされている。

私たちは「宗教」にどう向き合うか

 ここまで、日本における宗教観について、また統一教会という存在について解説してきた。普段あまり意識することがなくても、「宗教」や「信仰」は人間が生きる中で深く根付いたものである。自分がいかに信仰を選択し、それを実践するのかということを今一度考えてみたい。

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 そして、今の学生は多くが社会の教科書で「政教分離」について習ったことがあるだろう。自国の政治がどう宗教と付き合っているのか、関心を深めてみるのはいかがだろうか。

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Alice
ライターページ おとな研究所 編集部員 ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。