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安倍首相辞意表明 安倍政権の遺した成果と課題

安倍首相辞意表明 安倍政権の遺した成果と課題

8月28日、安倍首相が辞意を表明しました。14時にNHKから速報が入ってきた際には大騒ぎとなりましたが、17時から首相官邸で行われた安倍首相自らの記者会見で持病の「潰瘍性大腸炎」が悪化していることを受け辞任する意向を固めたことを国民に説明しました。

私も記者会見を生で見て、志半ばで辞任することは本当に無念だということが伝わってきました。まずは、約8年間首相としてこの国を引っ張ってくれたことに感謝するとともに「お疲れさまでした」と言いたいです。また、お身体の早い快復を祈ります。

今回は、安倍政権の総括を行っていきたいと思います。

アベノミクスなどの経済政策

安倍政権が主導して行った経済政策「アベノミクス」は何をもたらしたのでしょうか。

まず、アベノミクスの一つの柱である「異次元の金融緩和」を行うことで世の中のカネ回りを良くし400万人以上の雇用を生み出すことができました。また、バブル崩壊以降高水準だった完全失業率を1995年以降初めて2%台まで抑えることができました。

有効求人倍率も2012年12月時点で0.82倍だったのに対し、2018年9月には1.64倍、新人求人倍率も2012年には1.31倍だったのに対し、2018年には2.50倍と大きく伸ばすことができました。

企業の経常利益も増加しました。グラフを見ると2012年度から2018年で経常利益はほぼ倍増し、企業が通常業務の中で得た利益は増えたことがわかります。アベノミクスによって円高の国際競争力の低下に歯止めがかかり、国内で利益を上げることができるようになったのが大きな一因です。

財務省 法人企業統計調査結果より筆者作成

株価も3倍に上昇。昨日安倍首相の辞任が報道された直後に日経平均株価が一時600円近く暴落しましたが、皮肉にも安倍政権の経済対策がいかに信頼されていたかを示唆するものとなりました。

こうしてみるとアベノミクスの方向性は間違っていなかったことがわかります。

一方で、2回にわたる消費税増税、社会保険増加は可処分所得の上昇を鈍化させ消費を滞らせる一因となっていしまいました。またアベノミクスの3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」の実現ベースが遅すぎたことや労働市場の流動化政策が野党の妨害などで進まなかったことは残念でした。

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安保政策

安倍政権は安保政策にも積極的に取り組みました。
その大きな柱が安保法案、特定秘密保護法でした。

安保法案

集団的自衛権や駆けつけ警護などを容認することを盛り込んだ安保法制が2015年9月に成立、2016年3月に施行されました。

2014年まで日本は集団的自衛権は行使できないという立場をとってきました。しかし、集団的自衛権は国連が全加盟国に認める権利であり、集団的自衛権がなければ自分の国は自分の国の軍事力だけで守らなければなってしまいます。

そこで安倍政権は2014年7月に憲法解釈変更を閣議決定し、集団的自衛権の行使を一部容認する安全保障関連法案を成立させました。これは中国や北朝鮮などの軍事的脅威を踏まえた現実的な措置だと思います。

もちろん、憲法解釈が内閣によって変更され違憲になったり合憲になったりするのは問題という指摘があるのも事実です。ですが憲法にはっきりと「集団的自衛権は違憲」だと書かれていない以上解釈はいくらでも変更できますし、憲法解釈がダメだというのであれば憲法を改正して解釈の余地を許さないようにするべきだと思います。

特定秘密保護法

特定秘密保護法も安倍政権はよく成し遂げることができたと私は思います。特定秘密保護法は日本の安全保障の情報のうち、特に秘匿するべき情報を漏洩した者に罰則を与える法律です。

日本はスパイ天国と揶揄されるほど情報のセキュリティに関する意識が低く、同盟国であるアメリカからも武器の購入を拒まれたりと諸外国から信頼されていない状況が続いていました。そのため、特定秘密保護法を成立させたことは日本にとって良いことだったと思います。

一部反対派からは「特定機密」の名のもとに政府に都合の悪い情報が隠匿されるのではないかという懸念がありましたが実際にそのようなことは起こっていません。政府がこの法を恣意的に運用しないよう、内閣府に独立公文書管理監、衆参両院に情報監視審査会を設けるようにしたこともよかったと思います。

新型コロナ政策

安倍政権のコロナ対策は初動は躓いたもののそれ以降は持ち直したと思います。

日本のコロナの初動対応は惨憺たるものでした。当時日本は習近平国家主席の国賓来日が予定されており、中国との関係悪化は控えたい状況であったことは理解できます。しかし武漢で未確認の感染症が蔓延している第一報が入っても危機感がなく、2月12日の春節から多くの中国人観光客が日本を訪れました。政府は水際対策を徹底させるとしていましたがその水際対策と言えば「発熱やせきがある人は申し出てください」と呼びかけるのみ。この初動対応の杜撰さが日本でのコロナ蔓延を招いたことは否定できません。

しかし、政府は徐々にコロナに対する危機感を高めコロナ対策を徹底するとともに、持続化給付金や国民全員に一律10万円を給付するなど積極的に経済対策に乗り出しました。また中国に依存していたサプライチェーンを国内回帰させるために生産拠点を国内で整備する企業に政府支援を行いました。こうした動きは評価されるべきだと思います。

安倍政権ができなかったこと

安倍政権の悲願であった憲法改正は道半ばで終わることになりました。野党からの反発も根強かったとはいえ、改正案採決を幾度となく見送り国民に憲法改正の議論を深めることができなかったことは反省すべきです。

また、北方領土問題は具体的に進展させようと「共同経済活動案」を提示し、ロシア側の合意を取り付けたまではよかったものの、その後膠着状態に陥り結局解決することはできませんでした。

拉致問題に対しては安倍首相の熱意は凄まじく、2002年に安倍官房長官(当時)らが尽力し、拉致被害者5人が帰国しました。第二次安倍政権下でも拉致問題には積極的に取り組み、ストックホルム合意で拉致被害者や特定失踪者を調査することを北朝鮮に約束させました。

しかし北朝鮮が核実験と長距離弾道ミサイルの発射実験を行ったことから日本は北朝鮮に対する制裁を強化。すると北朝鮮は調査の中止を発表しその後拉致問題も進展がない状態が続きました。

昨日の会見で安倍首相は「拉致問題、日露平和条約、憲法改正はどれも大きな課題だ。それぞれの課題が残った。痛恨の極みだ」と述べ、自らの手で解決することができなかったことを悔んでいるようでした。

道半ば、だが基盤は築いた

安倍政権下ではデフレからの脱却や安保政策に積極的に取り組みましたが、そのほとんどは道半ばで終わってしまいました。しかし、アベノミクスも方向性は正しく、集団的自衛権を容認するなど目標への基盤は築くことができました。

次期首相は様々なことを成し遂げた安倍首相と比較されることになるでしょう。まだ誰が首相になるかは決まっていませんが、次期首相がどのように日本を牽引していくか期待したいところです。

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