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【都構想】世論の動向と推移

9月4日~6日に共同通信社や毎日放送などが共同で実施した大阪市内を対象とする世論調査の詳細が昨日発表された。この調査において、大阪市を新たに4つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」の賛成が反対を大きく上回っていることなどが判明し、大きな話題となった。

この調査だけを分析すると、都構想成立が有力であるが果たしてそうなのか。今回は実際の調査内容や5年前、橋下徹市長時代に行われた世論調査等を比較していきながら探っていきたいと思う。

都構想賛成は49%で反対を10ポイント近く引き離す

(質問文①)大阪市を廃止し、新たに4つの特別区に再編する大阪都構想について伺います。あなたは、大阪都構想に賛成ですか、反対ですか

賛成49.2%  反対39.6% わからない・無回答11.2%

都構想賛成が約過半数の49%となり、5年前を含めてかつて行われた合同調査の中では最も賛成が多い結果となった。

賛否の推移

共同通信社や毎日放送などが合同で行った世論調査の推移は以上のようになっている。5年前の住民投票2か月前や直前期に行われた調査より、今月行われた調査は賛成が反対を大きく上回っている事に加えて態度未定者や無回答者の割合が4回の調査の中で最も少ないことが特徴的である。

ちなみに、調査会社が異なるために単純比較はできないものの、昨年のWクロス選挙以降に行われた大阪市民を対象にした世論調査では都構想賛成が反対を全てで上回っている。都構想賛成へ一定の理解が得られてきた証左ではないだろうか。

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主な賛否理由

賛否理由の上位3項目を提示すると以上のようになる。都構想賛成理由は、「2重行政の解消」が約半数が占め、思い切った改革の必要性や大阪の成長への期待が続く。一方反対理由で最も多かったものは「メリットが分からない」であり、約3割を占めた。特別区設置に伴う住所変更への懸念や大阪市の廃止自体への廃止がそのあとを続く。

都構想反対は「都構想制度案への理解度」に大きくつながっていると思われる。調査では、「よく理解している・ある程度理解している」が約6割を占めたのに対して、「あまり理解していない・ほとんど理解していない」が4割近くに上る。また、都構想についての府市の説明に7割が「十分ではない」としている。残り4割への理解が進むことにより賛否構成が変化していく可能性が高い。

また5年前と違った傾向も調査から読み取れる。当時は「橋下市長の政策だから反対」が反対派の約3割を占めていたものもあった。「橋下嫌い」が頻差で否決を生んだともとれる。

しかし現在では松井ー吉村体制となり、松井氏の支持率は57.9%・吉村氏の支持率は75.5%となり5年前の橋下市長時代と比べて維新首長の評価が高くなっている。このことも都構想住民投票に少なからず影響してくるだろう。

支持政党ごとの動向は

支持率第一党である日本維新の会(支持率27.8%)のうち賛成が86.1%となっており支持層を固めつつある。同党の傾向より、住民投票が近づくにつれて支持層の賛成票は高まっていくのではないかと予想される。

自民党支持層(支持率27.1%)では、約半数の45.1%が賛成に回り、反対の49.4%と拮抗している。これは5年前に行われた住民投票時の世論調査や出口調査とほぼ同じ賛否構成を占めている。

一転して都構想賛成に転じた公明支持層(支持率6.2%)にはいまだ都構想への理解が広がっていないことが浮き彫りになった。支持層内の賛成が僅か26%に留まり反対が57.4%と、反対が賛成を大きく上回った。

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公明党は党員らを対象に賛成への理解を広げていくとしており、また大阪府連のSNSなどでも都構想賛成に向け積極的発信。残り2か月足らずでどこまで賛成が広がるのかが焦点だ。都構想可決するのかどうかは公明党・支持母体の創価学会の動向にかかっているのではないかと思われる。

また、情勢を大きく左右する無党派層(約25%)の動向も焦点だ。都構想賛成は僅か3割にとどまり反対が5割と、賛成を大きく上回った。投票日が近付くに投票態度表明が増加していくと思われ、残りの無党派層2割の動きも選挙結果を大きく左右することになるだろう。

(参考)大阪市内の政党支持率

日本維新の会27.8%、自民党27.3%、公明党6.2%、共産党4.7%、立憲民主党2.9%、国民民主党1.3%、れいわ新選組0.5%、社民党0.1%。NHKから国民を守る党0.0%

※あくまでも「国政政党」として調査されたものとなっている。調査方法等が異なる等があるが、仮に昨年春にJX通信社が実施した世論調査のような質問方法(大阪府政・市政での支持政党)等と聞き方を変える事により支持構成が大きく異なってくる可能性が高い。

世論調査の限界

近年の調査は正確性が高まりつつあることは事実であるが、実際の選挙結果と大きく乖離する事態もありデータの扱いには十分注意が必要である。例えば、5年前の住民投票1週間前に行わた世論調査では賛成36.7%、反対47.8%となり反対が圧倒的有利だったものの、投票箱の蓋を開けてみればその差は僅か0.8%であった。世論調査と選挙の投票動向は大きく異なることが関係するに加えて、調査媒体や質問形式により一定の偏りが生じる為でる。

もちろん、投票日当日まで態度未定者も少なからずおり、その行動により選挙結果が大きく変わってくることも十分可能性が高い。

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来たる11月1日に予定される都構想住民投票では、各マスコミが行う調査に惑わされることなく、自らの意思で投票所に足を運んでいただきたいと思う。今後の大阪市の未来が決まる極めて重要な機会となる。

【出典・参考リンク】