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【ファクトチェック】「コスト218億」の嘘と真実

【ファクトチェック】「コスト218億」の嘘と真実

メディアの偏向報道が、今や頂点に達している。

「間違ったことは言っていない」「本質的な部分を語っているように装う」といった姑息なやり方であれば、デマを流しても良いと言わんばかりだ。

昨日昼、毎日新聞が次のような記事を投稿した。

大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算

一息つく間もなく、NHK、朝日新聞がこれに続く。

市分割でコスト218億円増試算

都構想の追加コスト、1年で218億円増 大阪市が試算

27日現在のTwitterではこれに関する議論が絶えず、朝方には「追加コスト218億」がトレンド入りするなどし、情報も錯綜している。

おとな研究所では、既にこの件について維新支持者の立場から反論した記事が投稿されている。筆者は、非維新支持者の立場から冷静にファクトチェックをしていきたいと考えているので、しばしお付き合い願いたい。

そもそも何が「218億」なのか

「追加コスト218億」と聞くと単純な驚きが湧くことは仕方が無いだろう。だがここは理性的に判断しなければならない。そもそも何が「218億」なのだろうか。

これは、都構想賛成団体「おおさか未来ラボ」さんが公開したもので、大阪市財政局からマスコミ各社に送付されたものだという。経緯については後述するとして、このデータを元に「追加コスト」報道がなされたことは間違いない。

読み解くと、この計数表が「大阪市」と「大阪市を4市に分割した場合の合計」の「基準財政需要額」の差額を示したものであることがわかる。そもそも基準財政需要額とは何だろう。

基準財政需要額」とは、各地方団体の財政需要を合理的に測定するために、当該団体について地方交付税法 第11条の規定により算定した額である(地方交付税法第2条第3号)。 その算定は、各行政項目別にそれぞれ設けられた「測定単位」の数値に必要な「補正」を加え、これに測定単位ごとに定められた「単位費用」を乗じた額を合算することによって行われる。

難解な単語が並んでいるが、要は国が地方自治体に「地方交付税」を交付する際に必要となる数値である。

もう一つ、必要となる数値が「基準財政収入額」だ。これは、道府県民税や事業税に代表される「標準税」の75%に地方譲与税などを足したものである。残りの25%は「留保財源」と呼ばれ、地方自治体に留保される。

この「基準財政需要額」から「基準財政収入額」を引いたものが、「地方交付税」として都道府県と市町村に交付されるのだ。

すなわちこの基準財政需要額が高いということは、地方交付税が交付される額が高くなるということになる。

以下は、基準財政需要額と標準税収入がそれぞれ100億円の市の例である。需要額を満たす税収でも、その構成は複雑な制度の中に組み込まれることがわかると思う。

話を基準財政需要額の話に戻そう。この算出方法の中に「補正係数」というものがあったが、これは同一とされる交付団体の単位費用に対し、自然条件や社会条件に合わせて補正するための値であり、いくつか種類がある。というのも、需要の各項目は物によってその算出方法が複雑なものもあり、人口規模、人口密度、土地面積、消防力など、元となる値から算出しうるものでなくてはならないからだ。

少々解説が長くなったが、各社報道の「218億」とは、「基準財政需要額の差額」であることは理解いただけただろう。

データが「都構想」と無関係である理由

では、この「基準財政需要額」が今回の都構想とどのように関係あるのだろうか。先述の通り、財政局が提示した計数表は、「大阪市の基準財政需要額」と「大阪市を4市に分けた際の基準財政需要額」の差だ。

ご存知の方も多いとは思うが、「大阪都構想」は「大阪市を4つの特別区に分割再編すること」を中核としている。「特別区」に「地方交付税」は交付されないのだ。代わりに交付されるのが「財政調整交付金」と呼ばれるもので、大阪府が地方交付税を府の分と特別区の分を合算して受け取り、財政調整交付金として各区に分配するという形式である。これは東京都の特別区も同様だ。

一方計数表では「大阪市を4市に分割」とある。大阪市を含む政令市は地方交付税の交付対象団体だが、特別区はその需要が大きく異なるためそもそも算出方法を総務省として発表していない。すなわち、「4市に分割」自体が前提として異なるのである。

さらに、補正係数も「段階係数」と呼ばれるものを除いて大阪市と同じ値を用いている。段階係数は人口や世帯数に関わるものであるため変更するのは当然であるが、人口密度に関わる密度補正や、消防力や移動交通に関わる態容補正は市内とはいえ地域差がある。当然これらは各4市ともに変更せねばならず、ましてや都構想のように市を4つの「特別区」に改変するとあって同じ値にするなどもってのほかだ。

この補正係数は費目ごとに算出されるということも忘れてはならない。計数表でも、左側に各費目が書かれている。だがこれについてもお粗末なものだ。計数表の費目ごとの寄与率(データ全体の変化に対する項目ごとの貢献の割合)をまとめてくださった方がいるので引用したい。

この中で、消防費についても値が算出されているが、これは特別区設置協定書のなかで「大阪府」の所管と改変されるものである。そのためこれを入れるのはおかしい。また2番目に多い「包括算定経費」に含まれる都市計画費や公園費、下水道費、高校費なども、府や事業組合の費目が多い。

さらに、地域振興費についてはその算出が非常に困難であるとされているにもかかわらず一様に算出されており、データの杜撰さが見て取れる。

先ほどから繰り返し述べているように、今回の「政令市を特別区に分割する」という試み自体が初めての事であるため、基準財政需要額の算出方法は現時点で存在しない。しかし、副首都推進局は収支の現状と周辺中核市の状況などを参考にしつつ、財源ベースでの財政シミュレーションを行っている。

特別区設置における 財政シミュレーション(一般財源ベース)

これらのなかで、「特別区になったとしても収支不足は発生しない」との結果が示された。より現実的なデータに基づく算出は、抽象的な計算式よりも大きい意味があるのではないだろうか。

データの出所にまつわる疑惑

この表自体が都構想と無関係であることを説明しつくしたところで、その経緯について確認をしたい。先述のおおさか未来ラボさんは、資料を提示した大阪市財政局とのやり取りとして、以下のような見解を示している。

これらが事実であれば、問い合わせを行ったマスコミの誘導質問だとしか言いようがない。

しかも、さらに怪しい情報まで飛び込んでいる。日本維新の会所属参議院議員の音喜多駿氏らが言及している点だが、事前のリークがあったのではないか、という問題だ。

引用している動画を見てみよう。(引用元動画)

日本共産党の山中智子大阪市会議員と、日本維新の会の松井一郎大阪市長が議論をしているが、これは今月23日、つまり5日前の事なのだ。

動画中の「自民党」とは、おそらく自民党川嶋大阪市議のことだろう。

今回の表について、自らが以前「200億近い」と言及していたことを引き合いに出したいそう喜んでいる。が、この記事は彼には非常に残念なお知らせとなるだろう。市議が以前示した「約200億」は「プール等の市民利用施設の廃止を前提とする17億円」と、コロナ禍以前に策定された「大阪メトロの中期経営計画を鵜呑(うの)みにした固定資産税と株主配当金の172億円」であり、そもそも基準財政需要額と関係が無い。たまたま数字が似通っていただけだろうか。

しかし、山中市議の場合は音喜多氏の言う通り、確かにどんぴしゃ「218億」と言い切っている。データの初出は、毎日新聞はじめメディアへの公開以前であり、しかもそれは一部政治家だったのではないか、という議論の状況証拠にはなるだろう。

私たちは、悪意に気づかなければならない

非常に恐ろしい背景を思わせるデータであることもお判りいただけたのではないだろうか。こうしたものを根拠に、毎日新聞や朝日新聞、さらに最も公平性を求められる公共放送のNHKまで、こういったデマに近い報道を行っているのだ。

私たちは、有権者・国民の責任として、「正しいデータ」に見せかけた悪意に気づくことが重要であると考える。どのような政治選択をするとしても、その姿勢だけは忘れてはならないのだろう。

大阪市が見解発表 (10/27 19:45 追記)

先ほど、大阪市がこの件の新聞報道について正式な見解を発表した。

この度は、財政局が試算した前提から外れ、特別区設置に伴うコストが増加すると受け取られるような報道がなされ、市民の皆様に誤解と混乱を招く結果になったものと考えています。市としては、今回の特別区設置に必要なコストを算出したうえで、協定書を作成し、説明資料も作成しています。市民の皆様におかれては、正確な情報に基づいてご判断いただきますようお願いいたします。

大阪市:新聞報道についての大阪市の見解について

市として報道を「誤解と混乱を招く」とするのは異例の事だろう。これら記事を都構想批判に利用することは厳に慎まれたい。

参考サイト

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