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「緊急事態宣言」とはなにか 特措法から迫る実態

「緊急事態宣言」とはなにか 特措法から迫る実態

 2月から3月にかけて急速に広まった「新型コロナウイルス感染症」。日本国内の感染者数は2500人に迫る勢いであり、東京など都市部ではいわゆる「クラスター(小規模集団)感染」が確認されるなど、状況は日に日に緊迫化している。日頃は政治や法律などに興味がない高校生までも、ここにきて多く飛び出す言葉が「緊急事態宣言」だ。

 マスコミから盛んに報道されることはもちろん、4月1日には日本医師会が宣言を要請するなど、現実味を帯びた単語となっている。

 しかし、その内実や法的根拠については意外と知られていないのではないだろうか。また小池百合子東京都知事が言及したことで波紋を広げた「ロックダウン」との違いなどについても、まだまだ広まっていない部分が多い。

 今回は「緊急事態宣言」とはなにか、根拠となる法律を軸に解説していく。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法」

 そもそも緊急事態宣言の正式名称は、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下:緊急事態宣言)」。根拠となる法律は「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下:特措法)」だ。この法律は字のごとく、2009年に感染が広がった新型インフルエンザへの対策法として制定された法律である。また同法2条の規定で、新たに対象とする感染症を定めることができる。そのための「新型インフルエンザ『等』」なのだ。言うまでもないが適用される感染症には、最長2年という条件付き(特措法附則第一条の二)のもと、先月14日から法律が改正されたうえで新型コロナウイルス感染症も適用されている。(改正の官報)

 この法律のうち、32条から61条までが緊急事態宣言についての条文だ。31条以前の条文は、この宣言を出す前段階の体制整備が主な内容となっている。

  1. 国、地方公共団体の行動計画の作成・指定公共機関(電力、ガス、医療、輸送等を営む法人)の指定、業務計画の作成
  2. 権利に制限が加えられるときであっても、当該制限は必要最小限のものとすること
  3. 発生時に国、都道府県の対策本部を設置、新型インフルエンザ等緊急事態に市町村の対策本部を設置
  4. 発生時における特定接種(医療関係者、社会機能維持事業者の従業員等に対する先行的予防接種)の実施
  5. 海外発生時の水際対策の的確な実施

 たとえば先月26日に設置された「新型コロナウイルス感染症対策本部」は、内閣総理大臣を政府対策本部長とすることなどを定めた特措法15条に基づくものである(官邸発表)。これらのうち、実施可能な1,2,3,5などの行政対策は、既に完了済か進行中だ。

 32条から61条までの緊急事態宣言に関する条文の内容は以下の通り。(参照元:厚労省)

 ご覧の通り、都道府県知事の権限がかなり大きいことがわかる。外出自粛要請やイベント自粛要請、指示はもちろん、緊急物資の運送や売買にも要請や支持が可能である。法律全体をこれらを総覧しても、行政における内閣総理大臣の権限は緊急事態宣言を行うこと程度で、その多くは都道府県知事が持っている。またそのほかに、市区町村対策本部長を兼ねる市区町村長は各地域の統合調整を行うことができる。

 また、これ以降の62条から70条までの条文は財政上の措置が記されている。国や都道府県による費用の負担についての規定、損害補償等についての規定などがされている。

 国、都道府県は、検疫のためにやむを得ず特定病院等を同意なく使用する場合や臨時の医療施設開設のため、土地等を使用する場合等による損失を補償しなければならない。また要請や指示による医療等を行う医療関係者に対して、実費を弁償しなければならない。要請や指示による医療の提供を行う医療関係者が、そのため死亡や負傷した場合等は、損害を補償しなければならない。

宣言発令に必要な条件

 4月2日現在緊急事態宣言は発令されていないため、以下の条件のうち何らかの事柄をクリアしていないと考えられる。

  • 「国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれ」「全国的かつ急速なまん延により国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすおそれ」があると政府対策本部長(=首相)が判断した場合
  • 以下の3点を公示し、国会に報告すること。
    1. 緊急事態措置を実施すべき期間(ただし2年以内。延長した場合でも最大3年)
    2. 緊急事態措置を実施すべき区域
    3. 緊急事態の概要
  • 以下の2点を行う際も公示し、国会に報告すること。
    1. 期間、区域を延長する際
    2. 宣言を終了する際

 これらハードルの高い条件があるうえ、この期に及んで発令されていないことを考えると、先ほど紹介した宣言の内容はいかにも弱く感じるが、その理由は次で説明する。

発令しても、「ロックダウン」はできない

 「ロックダウン」とは、緊急事態における都市封鎖のことだ。新型コロナウイルスの世界的な蔓延に際しては、既にイタリアやスペイン、アメリカなどで実施されている。これらの国で行われている措置は、一定期間、都市の封鎖や強制的な外出禁止、店舗の閉鎖をする強硬的なもので、しかもこれらには罰則が伴う。

 対して、特措法の緊急事態宣言における「外出自粛要請」は罰則を伴わない「お願い」であり、しかもこれは既に首都圏の知事らによって出された。法的な履行義務が生じる「指示」をすることも可能ではあるが、これにも罰則規定はない。強制力を持った措置が可能なのは臨時の医療施設を開く目的で、土地・建物を同意なしに使用することや、政府への医薬品売り渡しに応じない場合の罰則などだが、感染防止に直接影響のあるものではない。

 西村康稔新型コロナ対策担当大臣も、連日の答弁でこれらの事柄を裏付ける発言を行っており、宣言に恐怖以上の効果があるかは未知数であるとしか言いようがない。既存の法律を改正し適用させるくらいなら、新法を制定してより強力な法整備をする必要がある気もする。

https://jp.reuters.com/article/nishimura-lockdown-idJPKBN21I1H2

 またこの法律のほかに、新型コロナウイルス関連で対策可能な法律があるが、この紹介はまた次の機会に譲りたい。

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