新自由主義とは一体何か?(2)

日本の政界では小泉政権以降、「新自由主義」との名の思想が激しい論争を引き起こし、その賛否によって政治関係者、特にネット上での政治議論が分裂する事が頻発している。一般的には竹中平蔵氏などを始めとする経済学者、シンクタンク「政策工房」を始めとするブレーンを起用する政治家、政党が新自由主義のレッテルと貼られ、具体的な政党名で言うと日本維新の会や自民党の一部(菅総理等)がこの対象となっている、

これに対して、れいわ新選組の山本太郎氏、藤井聡教授や立憲民主党枝野代表、そして国民民主党玉木代表などは、新自由主義が格差を拡大させたとしてこれを批判する事が多い。

この様に、新自由主義に対する論評は反対派が政敵を「新自由主義者」認定を行い、新自由主義=絶対悪と言う「設定」の下、格差の拡大や不景気の理由として新自由主義を批判する事が多い

しかしながら、この様な歪んだ言論空間の中では、「新自由主義」と呼ばれる政策等に対する公平な論評、評価は不可能となる。そこで先週の記事では新自由主義の歴史の説明と政策の概要を解説を行った。本日は新自由主義の歴史とその亜種について説明していきたいと思う。

(本日の記事を読む前に是非先週の記事を読んで頂きたい)

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前回の記事では、戦後経済政策の主流となっていたケインズ政策がスタグフレーションを引き起こしたと説明した。しかし、その根本的な理由は市場の流動性低下による供給能力上昇の鈍化だ。戦時体制中に国有化された様々な産業が肥大化し、技術の発展及び消費者志向の変化に構造的な対応を行わなかっ為、慢性的な赤字が生じたのに、組合を通じて既得権益化した産業の改革は全く行われなかった。

供給能力が頭打ちした中で、各国政府は社会保障等の歳出を拡大し続けた結果、低成長と高インフレが引き起こされた。英国ではGDP比の政府支出が50年代半には35%だったのが、サッチャー就任直前には48%程度まで膨れ上がった。

余談だが、日本の「失われた30年」はスタグフレーションでは無く、長期のデフレに見舞われた時期があった。しかし、供給能力が伸びていないのは同じである。違いは、政府支出自体がそこまで伸びてない事にある。故にスタグフレーションが誘発されず、総需要が20年低迷したままデフレが進行したのである。ただし、その裏にあるのが経済構造問題と言う事は忘れてはいけない

米英で70年代に進行したスタグフレーションの解決策として、その時期に政権に就いた米レーガン大統領や英サッチャー首相は減税と規制緩和を断行した。同時に移民受け入れの拡大に舵を切り、国家全体の供給能力も増大させた。

税制改革を説明するレーガン大統領(1981年)・ホワイトハウスより

規制緩和の例としては西側諸国の航空産業がある。米航空産業は、中間層の発展により60年代から需要が急拡大したが、新規参入が事実上禁止されていたため、主要数社による寡占状態となっていた。運賃も中央当局が設定し、価格が高止まりした状態が続いていた。この問題は70年代初頭の米ニクソン政権時代から是正の検討が始められ、78年、カーター政権の下に航空産業が自由化され、新規参入が容易となり、公的価格設定も撤廃された。この動きは欧州と日本でも追従され、LCCの台頭と航空産業の整理と言う結果となった。1970年代から物価調整後の航空価格は半減し、誰でも航空機に乗れる時代が到来した。

「新自由主義」と呼ばれる政策の中で規制緩和や減税は裁量行政の縮小と言うカテゴリーに入る。同時にレーガン、サッチャー政権(特にサッチャー首相)は肥大化した公産業の民営化も積極的に進めた。この影響は日本にもわたり、電信電話公社や国鉄の民営化が断行された。

政治的パートナーだけでなく、個人的な友人でもあった、レーガン・サッチャー氏

「新自由主義」と呼ばれる政策を最も早く採用したのが米英の保守派だったり、南アメリカ(アルゼンチン等)の右派政権だったので、「新自由主義」は右派的な思想だと考えられやすい。実際、これらの政権は社会政策では中絶や同性愛反対など保守キリスト教的な政策を推し進めたが故にそう捉えられる事が尚更多い。

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しかしながら、「新自由主義」と呼ばれる一連の経済政策は思想的に左派や右派とカテゴライズできるものではない。レーガンやサッチャーの同時期に豪州の左派労働党政権は同じく民営化(銀行、通信、航空、保険、年金)を強力に推し進めていた。年金など、分野によっては豪州が一番民営化を推進した国とも言える。

強力関係にあったブレア・クリントン両氏

そして、レーガンやサッチャーなどの保守勢力が席捲した80年代の次に到来したクリントンやブレアなどの90年代左派政権でも、引き続き貿易自由化や裁量行政の縮小が推進された。特筆すべき例はブレア政権による国民医療保険の半民営化の推進だろう。クリントンやブレアなどの左派政権は社会的リベラルな政策を推進し、経済政策の根幹は右派政権と共通しているが、それ以外の政策では全く異なるアプローチを取った。

仏マクロン大統領も「新自由主義者」と呼ばれる

それ以降も英カメロン政権、仏マクロン政権など、経済政策としての「新自由主義」は思想の左右問わず採用されている。主流な経済学者の全てが流動化や裁量行政の縮小などを基本的に肯定するからだ。逆に正社員制度に固執し、移民さえ入れない、規制緩和が全く行われていない先進国は日本くらいなのではないか?それだけで、日本の潜在成長率の大幅低下が説明できるのに、消費税率の争いが経済政策の主論点になっている国がまともな経済政策を実行できる事は無いだろう。

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マクロスおとな研究所 経済担当

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某国立大学の文系学生です。主に経済や選挙制度に関する記事を書きます!

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