【主張】今こそスパイ防止法を

ここ最近、メッセージアプリ「LINE」をめぐる個人情報の取り扱い問題が物議をかもしている。おとな研究所でもAki氏がこの話題を取り扱っており、興味のある方は以下の記事も読んでいただきたい。

さて、今回取り扱う話題はいわゆる「スパイ防止法」についてだ。機密情報をめぐって避けては通れない議論で、Aki氏の記事でも最後、スパイ防止法の言及があったが、今回はここを深堀りする。

日本にスパイ防止法は存在しない

日本はよく「スパイ天国」だと言われている。戦後日本におけるスパイ事件はわかっているだけでもラストボロフ事件や外務省スパイ事件、レフチェンコ事件など枚挙にいとまがなく、最近でもソフトバンク社員がロシアに機密情報を漏洩させていたりと日本の情報管理はあまりにも無防備である。

その背景には、日本には世界中の最先端の技術や情報が集まるにもかかわらず、スパイ活動をしても身柄を拘束されることが少ないからである。日本には特定秘密保護法や自衛隊法など部分的に取り締まる法律はあるものの、スパイ活動を包括的に取り締まるいわゆる「スパイ防止法」は存在しない。そのため、日本で情報の不正持ち出しが起こっても軽い処罰しかできず、また事件発覚前に国外逃亡される可能性もある。先ほどスパイ事件の例として挙げたソフトバンク社員機密漏洩事件もソフトバンク社員は不正競争防止法違反で有罪となったが、ロシア対外情報庁(SVR)の機関員とみられる元外交官の男は事件発覚前に出国し不起訴となってしまった。

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付け加えると、日本にはスパイ活動の摘発にあたる諜報機関がない。海外の有名どころではアメリカのCIAやFBI、イギリスのMI5などがあるが、日本は外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁が個別で対応しているのが現状だ。

世界では当たり前のスパイ防止法

ところで、国連憲章51条では自衛権は独立国固有の権利で、安全保障に関する国家機密を守り、他国の諜報活動を防ぐことは自衛権として当然とされている。

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

国連憲章テキスト より

これに基づき、世界ではスパイ活動を防止するためのさまざまな法律(スパイ防止法、国家機密法など形態は様々ある)が制定されている。

アメリカでは連邦法典794条で最高刑は死刑。ロシア・中国・北朝鮮でも同じく最高刑は死刑だ。死刑が廃止された国々でも、フランスやスウェーデンで最高刑は無期懲役と、スパイ活動に対してはどの国でも非常に重い処罰が下される。それを踏まえるといわゆる「スパイ防止法」自体が存在しない日本は異常な状態であることがわかる。

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表現の自由に反する?

じつは日本でもいわゆる「スパイ防止法」の議論が活発化し、1985年に議員立法として提出されたことがある。しかし、多くのマスコミや野党はこれに猛反発し、結局廃案となった。

特に多かった反対論が「表現の自由・言論の自由に反する」というもの。この法律案の中では第13条において「この法律の適用に当たっては、表現の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない。」と定められていたが、これは政府の努力義務でしかなく、また一般国民の権利制限になりかねない点が追及された。

しかし、既にスパイ防止法が存在するアメリカやイギリスなどでは表現の自由や言論の自由も保証されている国であり、スパイ防止法と表現の自由は両立できるものである。どうしても権利侵害が怖いというのであれば、法律案の中に仮に一般国民の権利侵害が起こった際の救済措置を書き入れることで対応できるはずだ。

もちろんスパイ防止法で懸念もないわけではなく、本来なら国民に開示すべき情報が機密情報として隠蔽される可能性は否定できないが、だからと言ってすべての情報をオープンにしろというわけにはならないだろう。国家としても機密情報があるのは当然で、それを漏洩して処罰されないというのは単純に考えておかしな話である。

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特定機密保護法の際も飲み屋で情報を耳にしたら逮捕されるなどといったまともに反論すること自体がばかばかしくなってしまうような言論が蔓延したが、スパイ防止法の議論が始まればそうしたトンデモ論が噴き出す可能性もあるので、読者の方々も注意してほしい。

スパイ防止法は意味がない?

逆に、スパイ防止法はスパイの摘発には意味がないという反対論もある。スパイの黒幕は他国の外交官であることが多く、外交官は外交特権を盾に捜査協力を拒まれる可能性があるからだ。

しかし、私はそれでもスパイ防止法を成立させる意味はあると思う。まずスパイ防止法があれば外務省を通じて相手国側に捜査協力を要請することはできるし、領事の個人宅であれば捜査当局は手続きを踏めば立ち入ることもできるからだ。また仮に相手国から捜査協力を拒まれたとしても、スパイ防止法を根拠にペルソナ・ノン・グラータ(国外退去処分)を発動することも可能である。まずスパイ防止法を成立させなければ話が始まらないのだ。

機運が高まっている今こそ

ところで、立憲民主党の国対委員長である安住氏は党会合でこのように語っている。

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国対は国会運営の司令塔で、各委員会や本会議の日々の動きについて幹部間で情報共有を図る際、通信アプリを使うことも多い。安住氏は「(情報には)機微に触れる部分が非常にある。もし第三国に流れていれば、ある意味で国会の機密(の流出)にあたる」と懸念を示した。また、ラインは自社の情報セキュリティーについて説明すべきだと主張した。

立民国対、LINEは当面禁止 第三国への国会情報流出を懸念 より

立憲民主党は今回のLINE騒動で政権批判を繰り返しており、案外スパイ防止法に乗り気なのかもしれない(笑)

また、日本はイギリスを中心にインテリジェンス協力の枠組みであるファイブ・アイズのラブコールを受けており、それを外圧として利用しスパイ防止法の制定を目指すこともできるだろう。

一連のLINE騒動で日本の個人情報の取り扱いがガバガバであることが露になった。機運が高まっている今こそスパイ防止法の議論が行われることを期待したい。

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よもぎ

よもぎおとな研究所 副編集長

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高校2年のブロガー
国際情勢が専門

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