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【主張】国民民主党は、間接的であっても、共産党と政策協定を結ぶべきでない

 羽田雄一郎参議院議員の突然の死去により、4月に長野県選挙区補欠選挙が行われることとなった。そこで、この「弔い合戦」で後継者として名乗りを上げたのが、立憲民主党公認・羽田次郎氏であった。

 そこで、立憲民主党長野県連と共産党長野県連、羽田次郎氏は、直接の政策協定を結んだ。そもそも、民主系野党と共産党の政策協定は、あくまで市民連合を介したものが一般的であり、今回、初めて直接に政策協定を結んだこととなる。立憲民主・共産の長野県連が結んだ政策協定には、従来からの「安保法制の廃止」はもちろん、「日米同盟の見直し」も盛り込まれた。文言を引用すると、「韓国や北朝鮮との不正常な関係を解消」することを目的として、「日米同盟に偏る外交関係を是正し」とされる。すなわち、米国との緊密な連携を捨てて、北朝鮮と融和しろというのが、立憲民主・共産両党の長野県連の考え方である。

 これに対し抗議の意思を表したのが国民民主党であった。国民民主党は、上記の長野県選挙区補欠選挙で、羽田次郎氏を推薦していた。しかし、「日米同盟の見直し」にまで言及した政策協定が国民民主党の政策と相いれないことを理由に、推薦の取り消す方向で検討中である。

「日米同盟見直し」は、立憲民主党の政策とも矛盾

 立憲民主党長野県連は、上記の通り日米同盟見直しを目指す旨の政策協定を結んだのだが、党本部はそれと異なる考え方を取っていると主張している。泉健太政調会長は、「健全な日米同盟を軸に、アジア太平洋地域とりわけ近隣諸国をはじめとする世界の国々との連携を強化します。」と明言し、政策協定がもたらすイメージの払しょくに躍起だ。

 しかし、ここでひとつ疑問がわく。仮に泉政調会長の言う通り、立憲民主党が共産党と異なり日米同盟を堅持する方向であるのなら、なぜ党の政策と正反対の外交政策を、政策協定に持ち込んだのかということだ。泉政調会長の発言が真実であるのであれば、長野県連は支持者のことをバカにするような態度を取っているということとなる。

共産党と水と油の国民民主党、衆院選で無理に共闘してはならない

 国民民主党は、立憲民主党と比べても、共産党との間にさらに隔たりがあるはずだ。前原誠司代表代行は、新国民民主への参加を支持者に報告する際に次のように語っている。共産党と政策に親和的な新旧立憲民主党を念頭に、「共産党と協力する政党に行きたくない。憲法観、自衛隊、天皇制、日米安保、あるいは消費税といった内政のみならず、外交・安全保障の考え方が全く違う政党と協力する野党共闘にくみすることはできない」と明言している。国民民主党は、昨年12月に憲法改正案を発表するなど、改憲志向である。その一方、共産党は憲法改正の議論そのものを封じようとしている。両党の政策には大きな差があり、共闘することについて現実味がない。だから、共闘するとなった場合、国民民主党の政策と相反する政策協定を結ばされることだってあるだろう。

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 国民民主党は、「政策先導型」を標榜し、独自の立憲的改憲草案、事業規模に応じた包括的な補償法案、現役世代への10万円再給付、自衛隊法改正案など様々な政策を提案している。しかし、もし党の政策と相いれない政策を協定の中で認めてしまえば、今までの提案は水の泡と化してしまうだろう。その際には、新国民民主党結成時以来、徐々に積み重ねてきた信頼や、少しずつ増やしてきた支持者を、国民民主党は一気に失うことになる。何をしたいか分からない政党に、国民はこれ以上期待を寄せることはない。

 26日の幹事長記者会見で、共産党との共闘の是非を問われた榛葉賀津也幹事長は、「直接は(協定を)結ばない」などと、歯切れの悪いコメントに終始した。もし仮に、市民連合を介してでも共産党と政策協定を結んでしまうと、おのずから安保法制廃止、9条改正の議論反対が盛り込まれることは確実だ。これは、改憲草案を出した国民民主党の政策とは相いれないはずだ。間接的であれ、国民民主党が、他党と、自党の独自性を失うような政策協定を結ぶことには反対する。

 翻って、もし国民民主党が政策協定を組むことなく野党の中で独自の政策を打ちだすことに成功すれば、一定の支持者を新たに獲得できるだろう。目先の小選挙区一本化のために無理に共闘することで、支持を広げることに失敗すれば、元も子もない。

 立憲民主党と合流しなかった時点で、新国民民主党とは「茨の道」であることは、最初から分かり切っていた話だ。独自色を出したからと言ってすぐには支持されないかもしれない。しかし、やるべきことは、独自色を出した上で他党を上回る政策を打ち出すことである。「茨の道」を脱するため、路線の明確化は避けては通れない。