主権者教育はどこへ向かうのか 最終報告まとまる

2年8か月にわたって今後の主権者教育を議論してきた文科省の「主権者教育推進会議」は3月31日に最後の会合が行われ、「今後の主権者教育の推進に向けて(最終報告)」をまとめた。

主権者教育という言葉自体に明確な定義があるわけではないが、一般的には「主権者としてどう政治と向き合っていくか」を学ぶ教育である。言うまでもなく主権者教育は若者の政治リテラシーの向上や政治参加意欲をかきたてるために重要である。特に昨今は選挙権が18歳に引き下げられた一方での若者の政治離れが深刻化しており、主権者教育の重要性は増している。

今回は主権者教育推進会議の最終報告の内容を紹介していこうと思う。

最終報告の内容

今回の最終報告は「Ⅰ 主権者教育推進の背景と経緯」と「Ⅱ 主権者教育をめぐる課題と今後の推進方策」の二部構成となっている。今回は今後どのような主権者教育を行っていくかにフォーカスしたいので、「Ⅰ 主権者教育推進の背景と経緯」の内容に関しては割愛する。

「Ⅱ 主権者教育をめぐる課題と今後の推進方策」は、

1 各学校段階等における取組
2 家庭・地域における取組
3 主権者教育の充実に向けたメディアリテラシーの育成
4 社会総がかりでの「国民運動」としての主権者教育推進の重要性

の4観点で構成されている。これを一つずつ深堀りしていきたい。

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1 各学校段階等における取組

まず、小学校中学校の時期から主権者としての意識を芽生えさせるため、モデル校での実践研究を行う。具体的には現実で起こっている政治的事象を取り上げ、異なる主張も取り入れるなどして多面的な・多角的な思考を養う。また、小学校中学校の社会科の学習と高校で新設される必修科目「公共」のカリキュラムの連携も図る。

また、教科にこだわらず主権者教育に関する内容を取り入れるなど、教育課程全体で主権者教育を充実させることも重要だとされている。

政治的中立性に関してはドイツで中立原則の下「連邦政治教育センター」で開発した教材を超党派の議員で構成する委員会でチェックしている他、外部機関と連携していることなども挙げた。

2 家庭・地域における取組

人格形成における基盤となる幼少期は、家庭ですごすことが多い。それだけに、家庭内も主権者教育の場として重要になる。

主権者教育推進会議は将来的に家庭教育省(仮称)やこども庁(仮称)といった組織を作るなど家庭教育に関わる部局の設置を検討すべきとしている。さらにはPTAやNPO、シンクタンクなどとも連携し、主権者教育の重要性の普及啓発を図るとともに家庭内で政治的事象について話し合う場を設けるなども実施する。

3 主権者教育の充実に向けたメディアリテラシーの育成

主権者教育において、多くの情報やメディアを選び抜いて活用するメディアリテラシーは重要な要素だ。主権者教育の第一歩は社会への関心を持つことであり、多様なメディアが発信している情報に触れて考える機会はとても重要になる。また、収集した情報の妥当性を自ら判断し、情報を取捨選択して自分なりの意見を持つことも重要だ。

そこで、モデル校ではメディアの特性に応じて情報を収集し、情報の妥当性や信頼性を踏まえながら自分なりの意見をまとめるなどの指導を開発する。また、NPO・シンクタンクなどの情報を活用し教育プログラムを開発する。

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メディアリテラシーの育成は学校だけでなく家庭でも図ることが重要だという見地から、家庭で話し合う機会を設けることも大切になってくる。

4 社会総がかりでの「国民運動」としての主権者教育推進の重要性

主権者教育を推進するためには、社会全体で「国民運動」としての機運を高めることも必要となる。

例えば、選挙で選ばれる側の各政党や候補者は自らのマニフェストをわかりやすくまとめたり、発信活動に注力することが大切だと記されている。

投票の義務化は「投票の質」を低下させる

ところで、この最終報告書が主権者教育推進会議の篠原文也座長は最終報告とは別に、「投票の義務化も選択肢」という見解を示した。

一方、篠原座長は会合の最後に、報告書とは切り離した座長見解を示した。この中で篠原座長は「推進方策を進めても『投票率』や『投票の質』の向上・深まりにつながらない場合は、諸外国の状況も参考にしながら、将来的には投票の在り方について検討すべきではないか。その際、憲法改正が必要になるかもしれないが、投票の義務化も選択肢になるのではないか」との意見を述べた。

「投票の義務化も選択肢に」 主権者教育会議で座長見解 より

しかし私は投票を義務化して無理やり投票率を上げることは良くないと思っている。確かに投票を義務化すれば投票率は100%に近い数字となり、選挙結果の正統性は高まるものの、それとは別の問題が生じる。

「投票率」や「投票の質」が上がらないからといって強制的に投票に行かせるようなことをしてしまっては、「誰でもいいから投票しよう」と半ば投げやりで投票する人が増え、「投票の質」は低下してしまうだろう。「投票の質」を上げるためには最低限の政治リテラシーを持った上で投票するべきで、そのために主権者教育が存在するのだ。

義務化賛成派の意見として、「投票を義務化することによって有権者は主権者としての意識が芽生え、次第に投票の質が高まる」というものを耳にするが、はっきり言って根拠に乏しい。逆に投票が義務化されることで政治が嫌だと感じて政治離れが加速する恐れもある。

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追記:こども庁創設を公約化か

この記事の編集中にこのような記事が飛び込んできた。

子ども・子育て政策を一元化して対応する「こども庁」の創設について、自民党は次の衆議院選挙の公約に掲げ、実現を目指す方向で調整していることが分かりました。

【独自】こども庁 自民が次期衆院選の公約化を調整 より

自民党が、次の衆議院選挙で目玉政策としてこども庁を設置することを検討しているようだ。菅政権は現在進行形でデジタル庁創設を進めるなど省庁再編を行っている。現時点ではこども庁が創設されればどのような役割を果たすことになるのかはわかっていないが、今後の動きにも期待したい。

 

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よもぎおとな研究所 副編集長

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おとな研究所副編集長、ブロガー
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時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

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