【日本の難民問題を解説】入管法改正案とは 内容と問題点を読み解く

難民申請による送還停止を2回までとするなどの内容が盛り込まれた入管法改正案が今月16日、衆院本会議で審議入りした。この入管法改正案は入管施設に長期滞在する外国人が多いことなどが背景にあるが、難民申請者や人権団体などからは反発する声も上がっている。

政府が今国会に提出した入管法改正案に反対するため、埼玉県川口市で暮らすクルド人ら約80人が18日、同市内で記者会見した。

クルド人が入管法案反対 難民申請3回で送還対象「人生終わる」 より

国会で審議予定の出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案に反対するオンライン署名が4万348筆を超え、外国人支援をするNPO法人「POSSE」が14日、参議院会館で入管庁職員に提出した。

入管法改正案の反対署名4万筆超、NPOが提出 外国人保護訴え より

ちなみにあらかじめこの入管法改正案についての私のスタンスを表明しておくと、基本賛成、一部反対といったところだ。今回は今国会で大きな議論を巻き起こしている入管法改正案に迫ってみることとする。

入管法改正案の目的

近年、日本に入国し、不法に在留している「不法残留者」が増加の一途をたどっている。とりわけ多いのが、許可された在留期間を超過した(オーバーステイ)不法残留者の多くは退去強制令書が発付され、国外退去処分が下されるが、中には自ら出国を拒否する不法残留者もいる。その結果、入管施設での収容が長期化し、施設がパンクするケースも出ている。

2019年6月には、大村入管(長崎)で長期収容に抗議しハンガーストライキを行っていたナイジェリア人の男性が餓死したこともあった。

今回の入管法改正案は、この入管施設での収容長期化を解消することを主な目的として議論が進められた。

編集部注:pixabayより

現在の入管法の問題点

現在の入管法は、主に以下の部分が問題となっている。

難民認定申請中は送還停止

現行の入管法では難民認定を申請している外国人は強制的に国外退去させることができない。たとえその外国人が犯罪者やテロリストであっても、である。また、幾度となく難民申請をして国外退去を逃れるケースも出ている。

入管施設の滞在長期化を招く

現在の入管法では、原則不法残留者を入管施設に収容することとなっている。一部の条件を満たせば仮放免されるケースもあるが、それはほんのごく一部である。

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改正案の主な内容

改正案の内容は主に3つだ。

難民条約上の「難民」にあたらない人でも、難民に準じて保護すべき外国人を 「補完的保護対象者」と認定する。難民認定までは至らなくても、それ相応の理由があれば難民と同じように定住が認められるようになる。今までは人道上の配慮が必要だとされるケースに限り日本の在留を認めていたが、その根拠が明文化されていなかった。今回「補完的保護対象者」を設けることで難民条約上の「難民」でなくても在留を認めることができるようになる。

難民申請は何度も行うことができ国外退去を逃れるために悪用されているケースもあることから、3回目以降の難民申請では申請中であっても強制送還を可能とする。また、送還時に暴れるなどして妨害した場合などに罰則が設けられる。

さらに、収容に変わる「監理措置」の制度を設ける。逃亡の恐れが低い不法残留者に「監理者」をつけ監理させることで、入管施設に収容しなくても一定の条件の下社会内で生活することができるようになる。

改正案の疑問点

最後に、私が感じる今回の入管法改正案の疑問に思った個所を記す。

今回の入管法改正案で「補完的保護対象者」が新設されるのだが、不法残留者の新たな抜け道とならないかが心配である。補完的保護対象者の定義としては、「難民以外の者であつて、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第一条Aに規定する理由(人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見)であること以外の要件を満たすものをいう。」とされているものの、具体的な内容はよくわかっていない。恐らく、現行では「人道配慮による在留許可者」とされている人がそのまま補完的保護対象者になるのではないかと考えられているが、どこまでを補完的保護対象者とするかは明確な説明が欲しいところだ。

監理措置においても納得できない部分がある。まず監理措置の判断は入管に限定されることだ。「逃亡の恐れが低い」とはいうもののその基準はあいまいで、監理措置を行うかどうかを決めるのは入管に一存されるので判断の公平性が保たれるかが疑問だ。司法の介入があってもよいのではないかと思う。

一方で、一部人権団体からは長期収容問題の解消のため解放措置、要は不法残留者を野放しにしろと言っているわけであるが、私はそれにも違和感を覚える。それは本来日本から退去しなければならない不法残留者が全員日本社会に溶け込むことになり、入管は不法残留者の把握や送還が困難になる。これは難民申請を繰り返す行為以上に大きな問題を生んでしまうだろう。

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「国際」カテゴリー

参考

入管法改正案について
そこが知りたい!入管法改正案
入管法改正案Q&A
入管法に「監理措置制度」を導入することに反対する会長声明
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する意見
アングル:入管法改正案に批判の声、難民申請にも罰則など制度厳格化
送還忌避者の実態について
送還規定見直し、疑問の声相次ぐ 入管法改正案審議入り
難民認定制度の運用の更なる見直し後の状況について

 

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よもぎおとな研究所 副編集長

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おとな研究所副編集長、ブロガー
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時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

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