POST-FACTCHECK #1

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新連載、「POST-FACTCHECK」がスタートした。

唐突だが、タイトルの「POST-FACTCHECK」という言葉は「Post-truth」になぞらえた私の造語である。簡潔に説明すると、近年ファクトチェックの影響力、信憑性が薄れている中、ファクトチェックに代わる「Post-truth」時代に代わる新たな対抗策が必要だということだ。「Post-truth」に関しては次項で説明する。

この連載は有料記事限定だが、今回は初回無料版として「Post-truth」世界の背景に迫ってみることとする。

「Post-truth」とは

インターネットが普及してからは個人が気軽に発信できるようになり、主にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上でフェイクニュースが拡散されている。記憶に新しいのは2016年の熊本地震の際に「動物園からライオンが逃げた」という趣旨のツイートをして逮捕されたケースや、同年のアメリカ大統領選において「ローマ法王がドナルド・トランプ氏を大統領選で支持」というフェイクニュースが拡散されたケース、昨年にはコロナの影響で「トイレットペーパーやティッシュペーパーがなくなる」というデマが拡散されたケースもあった。こうしたフェイクニュースはサイトのページビューが増えることで広告収入を得ることができ、フェイクニュースというジャンル自体がビジネス化してしまうという恐ろしい事態となっている。

このようなフェイクニュースが蔓延する世界で最近新たに作られたワードが「Post-truth(ポスト・トゥルース)」だ。これはセルビア系アメリカ人作家のスティーブ・テシック氏が湾岸戦争のエッセイで用いた言葉で、「世論形成において政策の詳細や客観的事実よりも個人的信念や感情の方が重視される状況」という意味の単語である。イギリスのEU離脱(ブレクジット)やアメリカ大統領選の際に多く用いられた。

SNSの普及とエコーチェンバー現象

インターネットの普及に伴い、昨今ではオールドメディアのニュースがデジタル媒体に進出している。しかしそこには思わぬ副作用があった。かつてマスコミの虚偽報道は責任問題になりかねないのでほとんど見られなかったが、デジタル媒体においてはニュースの発信元や記者が不明瞭であるなど責任主体が曖昧になり、プロパガンダまがいのニュースを流しやすくなった。その為、明らかに恣意的な煽り記事や見出し詐欺などが見られるようになってしまった。

かつては情報を発信するメディアがマスコミしか存在せず、権威性もあった。しかしSNSの普及によって、多くのユーザーがマスコミの報道に目を光らせ各自おのおのが真偽をチェックするようになると、マスコミの偏向報道や捏造・虚報が露になりマスコミの権威性は失墜した。

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しかし、この波があまりにも大きすぎた。SNSでは「マスコミは必ずしも事実を報道しているわけではない」というのが「マスコミは必ず事実を報道しない」と受け取られてしまった。その結果、SNS上ではマスコミは全く信用されず、自分にとって都合のいい、信じたい情報を真実として受け取るような風潮になってしまった。

SNSは誰もが情報を発信することができ、また拡散も容易である。また、SNSのアルゴリズムの性質上、自分と考えが近い人の情報が多く流れ込んでくるのでSNS上のコミュニティは分断しやすい傾向にある。その結果自分の見たい情報だけがそのまま真実となり、そのコミュニティ内でも強固な共通認識となるので誰も止められなくなる。仮に第三者が風穴を開けようと反論をぶつけても集団の数で淘汰されるのがオチだ。日本人は同調圧力が強いと言われていてこうした事態がよく起こる。ちなみに、こうしたSNSなどの閉鎖された空間において自分と似た考えの人と交流することで考えが固定化される現象をエコーチェンバー現象と呼ぶ。

(関連記事)

嘘は真実より早く拡散される

マサチューセッツ工科大学の研究によれば、フェイクニュースは正しいニュースよりも早く拡散されることがわかった。具体的には、フェイクニュースが1500人以上に広まるスピードは正しいニュースの6倍で、またフェイクニュースは正しいニュースよりもリツイートされる確率が70%高かった。

フェイクニュースは恐怖を煽ったり驚きを与えるようなニュースが多く、不確かな情報や根拠の薄い情報でも人々は内容が過激的であるほど正義感に駆られて拡散されやすい傾向にあると考えられる。

真実よりも嘘が拡散されやすく、人々は信じたいものを信じる世界、今はまさに「Post-truth」の時代であると言えるだろう。

次回は、そうした「Post-truth」時代に対抗する手段として生まれた「ファクトチェック」の光と影について特集する。

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よもぎ

よもぎおとな研究所 副編集長

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