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政治教育の重要性を探る ①日本における主権者教育の現状【定義と実施状況】

 2015年に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことにより、中学校・高校生に対する主権者教育の重要性が高まった。世界にならい、主権者養成に関する様々な取り組みが行われているが、多くの制約があり、問題点も存在する。

 このシリーズ記事「政治教育の重要性を探る」では、日本の主権者教育の問題点や今後の展望、または世界に目を向けることで、主権者教育の在り方を考えていく。

 まず、最初のテーマは「日本の主権者教育の現状」と題し、現在の主権者教育の取り組みを知ることで、今後の記事への導入としていきたい。

そもそも、主権者教育とは?

 主権者教育は、比較的最近盛んになってきた事業であるため、その内面を知らない方も多いかと思う。辞典においては、次のように定義される。

社会で起きている出来事について自ら考え、主体的に行動できる人間を育成するための教育。また、若者が有権者として政治に参加するための政治的教養を身に着けること。

コトバンクより

 つまり、若者の政治参画を円滑に進めることができるよう、学校教育の段階から政治的素養を身につけさせようという考えのことだ。現在は公立中学校・高校をはじめ多くの学校で取り組まれるようになっている。

主権者教育の現状 ①実施状況

 文部科学省の2019年度の調査によると、主権者教育の実施状況は以下の通りとなっている。

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 公立高校はほとんどで実施されていた一方、私立高校では少し低い結果となった。また、特別支援学校や通信制過程では十分に行われていないという現状も読み取ることができた。

主権者教育の現状 ②実施教科

 主権者教育はどのような形で行われているのか。以下の図をご覧いただきたい。

 社会科の授業の中で行われているという回答が4分の3近くを占めた。一方、総合的な学習の時間を活用し、主権者教育を行っているという学校も見られた。

主権者教育の現状 ③実施内容

 主権者教育は、ただ政治の仕組みを学ぶだけでなく、様々な工夫が凝らされている。

 模擬選挙やディベート活動などがその最たる例であるが、中にはSDGsについて考え、街づくりに生かす、などといった先進的な取り組みを行っているという学校も見られた。何よりも生徒が「主体的に」動ける活動を艇庫油していくことが重要だろう。

主権者教育の現状 ④諸機関との連携

 主権者教育を行う上では、学校だけでなく外部の専門家を取り入れることも重要となってくる。主権者教育にかかる諸機関との連携は進んでいるのか。

 およそ半数の学校が他機関と連携して主権者教育を行っているとした。地方公共団体や選挙管理委員会など、公的組織が目立ったが、中には民間のNPO法人などと連携している学校も見られた。

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まとめ

 今回は主権者教育の現状について触れた。問題点や今後の課題については、次回以降の記事で触れていくが、この状態から分かるように、現在の主権者教育の体制には多くの問題点が存在する。

 若者が政治参画を積極的に行える環境を作るためにも「主権者教育」は重要なものとなる。国・文部科学省が主導で進めているこの事業を今後どのように発展させていくべきなのか。今がまさに正念場といえるだろう。

シリーズ「政治教育の重要性を探る」特設ページ

引用・参考資料

コトバンクー主権者教育

主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査の結果について

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