《あなたの知らない中国》忍び寄る思想統制 —ゲストライター記事

※この記事は、ゲストライターの寄稿記事です。寄稿の応募はコチラから可能です。

 大手メディアの共同通信は5月16日に、『中国、「学問の自由」認めず』という記事を掲載した。記事では「中国共産党はこのほど大学の研究や教育の場で党の社会主義思想や歴史観を徹底し、教員や学生の思想監視を強化する規則を通知した。一党支配の下でこれまでも制約を受けていた「学問の自由」は監視強化により完全に否定された形だ」としており、いわゆる「習近平思想」の教育が強化されるとしている。

【世界経済解説】中国が抱える時限爆弾 -いつまでも続かない「大国」の幻想

着実に強化される「習近平思想」

 習近平思想、正式には「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」と呼ばれるこの思想は、中国の時代区分を「站起来、富起来、強起来(立ち上がる、豊かになる、強くなる)」という3つに分類し、習近平の時代はこれらの中で「強起来」として、「中華民族の偉大なる復興」を建国100周年である2049年までに完了させるものだとしている。

 今回、共同通信はこれらの思想教育が強化されたと報じているが、この流れは今に始まった事ではない。

 建国70周年を迎えた2019年にリリースされた「学習強国」というアプリ。強国である中国を学ぶという意味と、習近平を学ぶというダブルミーニングのジョーク要素があるこのアプリは、中国での思想教育を画一的に進める必須のプラットフォームだ。

大人気の中国共産党アプリ、アリババが開発=関係者
「学習強国」アプリ。参照元:NewsPicks

 最大の特徴はなんといっても、このアプリでの学習に応じてポイントが付与され、そのポイントや社会における信用に直結するというシステム。ニューヨークタイムズはこのポイントについて、このポイントが一定水準に達しなかった場合は公開の反省会などが課せられると指摘している。

<スポンサー>

 また大学に対する思想統制も以前から行われている。2017年ごろから、中国の名門大学で習近平思想の必修化に備えた動きは進んでおり、2020年には習近平思想が必修化され始めている。当初は名門大学と分類される「国家重点大学」などに絞られていたが、それは段々と拡大しており、今後は中国全土の大学で習近平思想が必修になるだろう。

思想教育の現状と危険性

 では、ここからは実際にそのような思想教育の現状はどうなっているのか、実際に中国の国立大学で本科生として所属している筆者の経験をもとに書いていきたい。

 筆者は本科生とはいえ、基本的に海外からの生徒がメインの学部に所属しており、また新型コロナウイルスによる渡航延期で、オンライン授業を強いられているために、現地にいるよりはその思想統制の場面に遭遇した経験はない。しかしそれでも、留学生に対して思想教育のようなものは行われているのが現状だ。

 まず、大学一年次では中国のことを理解するために月に1つほど、小論文の提出が求められている。その際に小論文のテーマに使われるのが「人民中国」という雑誌だ。

 「人民中国」とは、建国直後の1953年に創刊された日本語雑誌で、中華人民共和国政府傘下の紙媒体情報誌である。政府傘下というだけあり、雑誌の最初の方は習近平国家主席の活動報告から始まり、共産党や政府の活動、そして論説記事、コラム、文化……。という形で展開される。

 これらを基に小論文で自身の意見を述べて提出するという課題が初年度で必須になっている。

 他には、中国のことを理解するために購入が求められている参考図書でもその思想教育の片鱗が透けて見えてくる。例えば『南京事件』『「大日本帝国」崩壊』『中華人民共和国史』といった、比較的政治的要素の濃い書籍を参考者と指定されている。

<スポンサー>
南京事件 (岩波新書) [ 笠原十九司 ]
「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年 (中公新書) [ 加藤聖文 ]
中華人民共和国史新版 (岩波新書) [ 天児慧 ]

 このように留学生に対しても徐々に思想教育の片鱗が見え始めているが、一方で上に書いた参考書はまだ使われたことがないし、小論文についても同級生は適当な内容で問題がなかったと言っていることもあり、まだ留学生に対してはそこまで強制的ではないのだろう。

 中国としても、わざわざこの情勢で中国に興味を抱いている珍しい外国人相手に過剰な思想教育を強いるようなことはしていないのかもしれない。

 しかしそれでも、事実として思想統制は進んでおり、その影響がいつ留学生にも及ぶか分からない。国家の根幹である教育。世界の超大国を目指す中国が教育面で行き着く果ては、かつての毛沢東時代の再来なのだろうか。

関連記事:《あなたの知らない中国》月面戦争と神話 —白石顕治(ゲストライター)

ライター:白石顕治 Twitter:@shiroishi_offi 自己紹介:中国やアジアへの趣味が高じて北京の大学に進学した中華オタク。

【参考文献】

https://this.kiji.is/766541317536694272

http://www.nytimes.com/2019/04/07/world/asia/china-xi-jinping-study-the-great-nation-app.html

<スポンサー>

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

あなたへのおすすめ



ピックアップ記事

  1. 2021-6-17

    【速報】山尾志桜里衆議院議員 次期衆院選不出馬を正式に表明 政界引退か

    おとな研究所のインタビューに答える山尾志桜里議員  国民民主党の山尾志桜里衆議院議員は、自身…

カテゴリー

スポンサー







今日の天気

札幌市 Booked net
-4°C

東京都 Booked net
+10°C

名古屋市 Booked.net - hotel reservations online
+11°C

大阪市 Booked net
+C

福岡市 Booked.net - hotel reservations online
+C

スポンサー




スポンサー




ページ上部へ戻る