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令和3年(2021)6月7日、政府による皇位継承に関する有識者会合が終わり、実に通算21名の有識者によるヒアリングが終了した。
その結果をまず示したい。
- 女性天皇賛成(条件付き含む) 13名
- 女性天皇反対慎重 5名
- 「女系」天皇賛成(条件付き含む) 5名
- 「女系」天皇反対慎重 10名
- 女性宮家創設賛成(条件付き含む) 4名
- 女性宮家創設反対慎重 6名
- 旧皇族皇室復帰賛成(条件付き含む) 8名
- 旧皇族皇室復帰反対慎重 6名
女性天皇賛成が大多数、「女系」天皇が反対多数。女性宮家は反対寄りで、旧皇族の皇室復帰は賛成寄りで賛否が別れる結果となった。
新聞社はじめマスコミの世論調査をつぶさにみてきたひとには、新鮮にみえる結果かもしれない。
特筆すべきは、女性天皇賛成が大多数は世論調査と同じなのだが、「女系」天皇への反対慎重意見が際立ったことである。
新聞社の世論調査などでは多くが、女性天皇のみならず「女系」天皇への賛意は高い傾向が続いている。
「女系」天皇反対慎重多数となった有識者会合のヒアリング結果は、そんな世論に対して一石を投じた格好となった。
なぜ、このような解離が起きたのか
目次
それは、一般人と有識者との皇室に対する意識と知識量の違いに起因する。
特に「女系」については興味深い世論調査結果がある。それは「女系」に賛成しつつも、一方で「女系」の意味や女性天皇との違いを理解していないひとが、かなりの割合でいたことである。
「女系」ってなんだ?女性とは違うの?
「女系」天皇というのは、有史以来存在しないことになっている。全くの新概念であるとされる。いわば、初めからずっと醤油ベースでやってきたタレを、これからソースベースにするというものにするくらい(?)違うものなのかもしれない。「知らない」が多数になるのも当然である。
ここでひとつ整理しておきたいのは、なら「女系」とは何ぞやということである。一言で表せば母親で辿っていくルーツである。例えば、愛子内親王殿下の母親は雅子皇后陛下で小和田家がルーツになる。
仮に女性天皇(男系女子)として即位されたあと、一般男性とご成婚され御子を授かられると、男系で辿ってきたとされる皇統からは全くの別系譜になる(但し男系の旧皇族とご成婚されて御子様を授かられた場合はこの限りではない)。
全く別の男系の系譜が入り交じり、皇室と血縁があるだけで系譜から皇統が外れてしまう。これが「女系」である。
多くの国民はここまで認識しているかと思えば、確かに疑問ではある。
皇統を破壊したいから「女系」賛成しているひとは一握りだと思う。
大多数は、
「興味薄いし女性?女系?男女平等で認めてもいいじゃん」とか
「跡継ぎいないんでしょ?とりあえず存続して欲しいから」とか
「旧宮家とかよくわかんないし、みんな言ってる女性・女系でいいんじゃないか」などで、「女系」に賛成しているのではないだろうか。
何故なら筆者も含め我々日本人は、相当な高齢者を除いて、天皇や皇室について教育らしい教育を施されていないからである。
学校での皇室教育を放棄したツケ
我々は公立の学校において、天皇や皇室について教育らしい教育を受けた経験は凡そ皆無である。
少なくとも筆者の経験によれば、憲法の真っ先1条に書いてあるはずの天皇については、公民の授業でさらっと流されたくらいである。
何故に、憲法の最初の章に書かれてあるくらいの国の象徴である天皇について、相応の重点的な教育をしないのかと疑問に思うのは高校生くらいになってからだ。
我々は女性天皇や「女系」天皇容認云々のまえに、あまりにも国から知らされなさすぎるのではないだろうか。青山繁晴参院議員も警鐘を鳴らす。知らない国民が悪いのではない、教えない国のせいである、と。
戦後長らく政権を担当してきたのは自民党であるし、それを支えてきたのは保守派のひとたちであるのは間違いない。彼らが「女系」反対をいうのは結構だが、それ以前に皇室教育を推進しきれず、自民党政権による怠慢を黙認していたことに関しては猛省を促したい。
有識者会合ヒアリングのあとは…
6月16日の有識者会議では、一定の見解が示された。
現在の継承順位を前提に対策検討を確認するというもので、皇族数の確保のための方策を検討していくというものだった。
政府は秋に見解を示すそうだ。
私見だが、有識者ヒアリング結果と世論を加味しながら、「女性天皇を容認しつつ、旧皇族の皇室復帰は要検証」という妥協的なものになるのではないだろうか。
筆者はどう思ってるの?
妥協が悪いとは思わない。実際に筆者のスタンスを明確にすれば、「女性天皇容認、その場合婚姻は旧皇族男系男子間に限る=旧皇族男系男子の皇族復帰容認」である。
つまり、昔ながらの先例に基づくフルスペックの皇位継承システムに回帰することで、この問題は解決すると自負している。
そして、皇統の維持と世論とのベターな妥協点であるとも思っている。
女性天皇を容認するのは、世論との妥協であると同時に、旧皇族の皇室復帰同様に先例があるからだ。かつて女性天皇は、皇位を継承予定の男系男子が幼少の場合にリリーフ役として機能していた。将来において旧皇族復帰が養子論で行われた場合、その養子はスキャンダル性が低い幼少の少年の可能性が高く、その際に、他に男系男子がいない場合に女性天皇が役割を要する事象があるかもしれない。
女性天皇は「女系」天皇の呼び水?
女性天皇は「女系」天皇の呼び水だと懸念する保守派の声をきくが、これに関してはしっかりと「女性天皇の婚姻は旧皇族男系男子間に限る」と皇室典範に明記されれば問題はないだろう。先程述べたように、先例に基づくフルスペックの皇位継承システムに回帰することで皇位継承問題は解決するので、「女系」云々の議論は自然に下火になるとみている。
でも旧皇族復帰は憲法14条違反じゃ?
いわゆる左派から指摘される門地による差別といいたいのだろうが、その指摘は当たらない。それをいうならば、皇室に嫁ぐことはできるが婿養子にいけない皇室典範は性別差別をしているので、これまた14条に違反しているということになるが、そういう話にはならない。それは憲法2条において皇室典範として特別に定められてるからである。二律背反してる場合、矛盾しないように憲法を読む必要がある。つまり皇室典範は14条の適用外・例外と読むべきなのだ。従って皇室典範に旧皇族復帰が定められた場合でも14条の適用外・例外ということになる。
まとめ
筆者のスタンスはともかくとして、センセーショナリズムに流されることなく、皇室を守ってきた先人の歴史を重視したうえで、国民の分断を引き起こさない皇位継承の形と、必要な前提となる知識や説明の宣布を政府や国会は示すべきである。
ライター:弐羽辰 Twitter:@niwatatsuK プロフィール:歯科医師
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