日本共産党は紛れもなく「全体主義政党」である。

  脈絡もなく、突然この記事を書くに至ったわけではない。もちろん、「日本共産党は全体主義か否か」なる一種の論争に加担する為に書くわけでもない。この不毛な議論に終止符を打つことが目的である。

 「不毛な」と形容したのは、このような議論が有権者国民にとって何ひとつの得にもならないからである。特定の思想を攻撃することは、概して健全な議論の土壌を破壊することになりかねない。特に我が国では戦前・戦後を通して「反共主義」が幅を利かせてきた。そうした歴史的な事実は、宗教上の理由や国民性・風土、さらには地政学上の理由など、様々な条件によって重層的に形成されてきた。以下の田村智子氏による発言への反論という形をとって、本稿では可能な限り「事実ベース」で論を構成していく。

共産党の田村智子政策委員長は16日の記者会見で、国民民主党と連合の政策協定で排除すべき対象とされた「全体主義」という文言を巡り、同党の玉木雄一郎代表が「共産党のことだ」と名指ししたことについて、「事実と違う発言だ」と強く否定した。選挙協力など共闘への影響については言及を避けた。

共産・田村氏「全体主義とは無縁」 国民・玉木代表の発言に反論 | 毎日新聞

議論の発端

 日本共産党の政策委員長であり副委員長である田村智子氏が反論しているのは、国民民主党代表の玉木雄一郎氏の発言である。

  この田村氏の記者会見の前日である15日、とある政局的に大きな動きがあった。これまでも選挙で民主・民進系政党の支援に動いてきた労働組合・連合が、立憲民主党・国民民主党とそれぞれ個別に政策協定を締結したのだ。「個別に」、つまり「立憲民主党&連合」「国民民主党&連合」という枠組みであり、「立憲民主党&国民民主党」という関係はここでは存在しない。この判断は、国民民主党とその組織内議員を多く抱える連合の一部(産別組合)が、立憲民主党と日本共産党の選挙協力(いわゆる民共共闘)に反発していることを理由としている。

 と言っても、実はこの個別に結ばれた協定、内容は全く同じだ。

  • 新型感染症の拡大という世界規模の課題に直面する今、わが国の最大の課題は、コロナ危機の克服であり、命とくらしを守ることをあらゆる政策の起点とする。
  • コロナ危機で明らかとなった日本社会の脆弱性、すなわち、医療資源の偏り、不安定雇用の拡大、デジタル基盤の遅れ等、あらゆる歪みを改め、誰一人取り残さない包摂社会を構築する。
  • あらゆる政策資源の積極投入により、誰もが希望する働き方・くらし方を選択できる安心社会に向けた、雇用のセーフティネットを実現する。
  • 新しい資本主義を志向する世界の潮流と呼応しつつ、税財政の構造改革を通じ、持続可能な日本社会を将来世代に引き継いでいく。
  • 左右の全体主義を排し、主権者意識の涵養を軸とした健全な民主主義の再興を力強く推進する

 以下の5点がそれぞれ連合の神津里季生会長と立憲の枝野代表、神津会長と国民の玉木代表の署名で締結された。「内容が同じであれば、対立のしようがない」というのが普通の人の認識だろう。事実、連合執行部はこの2党の必要以上の対立を望んでいないため、内容を同じにしたと考えることができる。

 しかし、「ボロ」はすぐ出てしまった。この内容の一部に関する「解釈違い」が露呈したのである。その内容とは、太字部分「左右の全体主義を排し」だ。この「左右の全体主義」が何を指すのかについて、枝野氏と玉木氏の認識が異なっていた。

玉木氏は記者会見で、「『左右の全体主義』とは共産主義、共産党のことだと認識している」と指摘。「神津氏は『立民と共産の連立は意味不明』『閣外協力もあり得ない』と明言している」とも述べ、共産に接近する立民を強くけん制した。

一方、枝野氏は、国会内で記者団に「(左右の全体主義は)どこか具体的に特定しているという理解はしていない」と述べるにとどめ、「一丸となって戦うことは国民も同じ認識だ」と強調した。神津氏はこの日、「共産に対する考え方はこれまでも申し述べている」と言葉を濁した。

連合が立民・国民と個別に政策協定、中身は全く同じ…共産との連携に温度差で : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

 枝野氏が「左右の全体主義」は「どこかを特定してはいない」としている一方、玉木氏は「共産党のことだ」ときっぱり言い切ったのである。この玉木氏の発言に、当の共産党が大反発している、というわけなのだ。

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そもそも「左右の全体主義」は共産党を指す連合の常套句

 この協定内における解釈違いはとりあえず横に置くとして、「左右の全体主義」というワードそのものが共産党を暗示することが事実であることは述べなければならない。

 連合は1983年に設立された、有力な労働組合が結集したナショナルセンターだ。先述のように、支援してきた候補の殆どが民主党・民進党の公認候補である。政治的な役割が非常に大きく、その権力は時に国政政党をも凌ぐものである。そんな連合は結成以来の党大会で「連合の政治方針(pdf)」なる政治活動上の綱領のようなものを掲げ、定期大会のたびに採択し続けている。

 この「連合の政治方針」の3章目、「連合の求める政治」の第1番目に以下の内容が盛り込まれているのである。

連合は、左右の全体主義を排し、民意が適正に反映されて、健全な議会制民主主義が機能する政党政治の確立を求める。

連合の政治方針(pdf)

 この「左右の全体主義を排し」というワードは、連合が結成以来使用し続けてきた「常套句」であり「れっきとした連合用語」なのである。なぜ歴史的にこのワードを使い続けてきたかと言えば、それは特定の政治思想を連合内から排除するためなのだ。

 「左右の全体主義」という言葉そのものを検証してみよう。「全体主義」というのは個に対して全体を優先させる主義で、個人の権利や利益、社会集団の自律性や自由な活動を認めず、すべてのものを国家の統制下に置こうとする主義だが、主に自らと異なる政治思想を批判する際に用いられる。歴史的な全体主義としては、ナチス・ドイツのヒトラー、ソ連のスターリン、中国の毛沢東、そして戦時下の日本における軍国主義などが挙げられている。

 そしてこの言葉の中では「左右」つまり「右派における全体主義」と「左派における全体主義」というものを想定している。「右派における全体主義」というのは国家主義・国粋主義を指すものとして考えて差し支えないだろう。ナチス・ドイツ、ファシスト党・イタリア、大政翼賛会・日本がこれに当たる。一方で「左派における全体主義」というのは、ソ連におけるスターリン専制や中国における毛沢東独裁を指すのは間違いない。これらはどちらも「共産主義」だ。「左右の全体主義」が指す政治思想として、「国家主義」「共産主義」を想定していることは想像に難くない。

 では仮に連合が共産党をこの常套句によって排除しているとして、何が目的なのか。それはそもそもこの両者が犬猿の仲であるからである。永田町で政治改革が行われていた1980年代、日本共産党は全労連を除くほぼ全ての労働界から排除された。労働界への返り咲きは共産党の悲願である。一方の連合は溜まったものではない。企業労働者が殆どを占める産別などの連合は、共産党が掲げる「生産手段の社会化」など到底受け入れられないからだ。

 共産党支持色が強い労働組合の団体「全労連」は、構成団体の多くが官公労・自治労連(日本自治体労働組合総連合)や教組などの公務員労働組合で、財界と無縁な存在であった。いくら共産主義の政権が樹立されようと、既得権益を奪われる恐れがない人たちが支持母体となっているのである。

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※2021年7月24日16時47分訂正:「 自治労連(日本自治体労働組合総連合) 」とするべきところが「自治労」となっていました。誤りを訂正しお詫び申し上げます。

こうした背景から、連合はこれまでも徹底して共産党の排除に動いてきたのである。故に、連合は数々の政治声明の中で「左右の全体主義」を決り文句としている。

 なお今回の件についてだが、連合はプレスリリースの中で玉木発言をそのまま引用している。

 一方で枝野代表による「特定はしていない」という発言は紹介されていない。これは暗に連合も玉木氏の認識を追認しているということではないのか。

 以上に示した事実関係から、少なくともこの協定における「左右の全体主義」が共産党を指すものであることが確実であり、それをいたずらに隠そうとする立憲民主党枝野代表の態度こそ、有権者を欺く卑劣な行為であると言わざるを得ない。

客観的に見ても、共産党は全体主義政党である

 歴史的に共産党が政権を獲得した他国が「全体主義」とされているのは前述のとおりだが、現在世界に存在する国家のうち共産主義国家についても「全体主義」との批判がなされていることも指摘する必要がある。

 無論中華人民共和国だ。少数民族への大量虐殺行為や、香港による高度な自治権への脅威など、枚挙に暇がない。こうした事情を抱えながら、中国やその同盟国は、アメリカ合衆国やその同盟国を「帝国主義」「全体主義」だと批判している。全体主義というのは批判に使われる言葉であるため売り言葉に買い言葉だが、「全体主義」の対義語が「個人主義」で、私有財産や民主主義が機能している国家が全体主義国家でないことは自明の理だ。

 「日本共産党はそうした独裁国家と無関係だ」とする意見ももちろん理解できる。特に日本共産党は北朝鮮によるミサイル発射や拉致問題などを厳しく批判しており、そうした非民主国家の共産党と距離をとっているのもまた事実なのだ。さらに、日本共産党が国会や地方議会で行っている議論は決して「私有財産」や「市場主義」を直ちに否定・批判しているものでもない。筆者は日本共産党について「構成している個人や実体がそのまま全体主義を標榜しているわけではない」という立場をとる。

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 だが一方で、共産党・共産主義を掲げる政党や個人に「マルクス・レーニン主義」が通底していることも間違いがないのである。この思想は世界各国で数々の全体主義を生み出してきただけでなく、最終的には私有財産制の否定と極端な官僚主義によって国民を恐怖のどん底に陥れてきた。日本においてもいわゆる「51年綱領」が効力を有していた時代、「日本の解放と民主的変革を平和の手段によって達成しうると考えるのはまちがい」として、議会に議席を有しながら武装闘争に走ったのだ。警察・公安が「日本共産党は暴力革命の方針を堅持している」という認識を共有している所以である。

 そんな日本共産党の党首である「中央委員会幹部会執行委員長」は、幹部会メンバーによって密室決定されているだけでなく、現職の志位和夫委員長は20年以上その地位にある。これは民主主義政党と言えるのだろうか。

 またかつて対立した個人・組織を徹底的に排除してきたことも特筆すべき事項である。有名なのは共産党と部落解放同盟の関係だが、個人についても大きな問題があった。かつて日本共産党を除籍された有田芳生参議院議員は、2016年5月22日に都内のライブハウスで開催された若者向け音楽イベントを報じた共産党機関紙「しんぶん赤旗」のなかで、他の民進党国会議員が紹介される中で以下のような扱いを受ける。

「トークセッションをするSEALDsのメンバーと(右から)山添拓参院議員予定候補、田村智子副委員長、(1人おいて)民進党の山尾志桜里政調会長=22日、東京都渋谷区」

引用元

 「1人お」かれたのである。この後赤旗は謝罪と弁明を行っているが、苦し紛れに有田氏とのかつての因縁がその理由であることを認めている。これを全体主義と言わずしてなんと言おうか。

 確かに日本共産党は個々人が折に触れて「全体主義」に基づく言動をとっているわけではない。しかし根底に流れているのは「革命」と「生産財の共有」であり、それを純粋に実行するためには自由主義・民主主義を否定せざるを得ないということも述べなければならないのである。

一番の問題点は立憲の態度

 ここまで共産党が全体主義政党であることを滔々と述べてきたが、それ自体は実はなんの問題もない。自由と民主主義を否定しかねない政党は、まさに民主主義に基づく選挙よって判断されることによって「正しく排除」することが可能なのである。それは連合も含めてであるが、共産党という政党に政権を渡してはならないという認識をすでに日本人の大部分が共有しているからだ。事実、日本共産党が政権の座についたことは過去1度もない。

一番の問題は、そうした連合の立場を立憲民主党が有耶無耶にしているということなのである。この政党は「幅広い野党の共闘」をお題目に、参議院1人区や衆議院小選挙区における共産党との候補者調整を積極的に行っているが、共産党が求めている連立政権には応じないという立場を表明している。

 こんな無責任な話があろうか。「議席と票は欲しいが政権は組まない」というのは有権者に対する裏切りでもある。今回の協定も同様だ。明らかに共産党を排除する内容であり、それを一方の当事者である連合が事実上認めているのに、それを有耶無耶にしている。

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 もしこの立憲民主党が政権を獲得した場合、それが共産党との選挙協力の賜物であることは言うまでもないのだ。そんな共産党が言うことに立憲が首を縦に振らないわけがない。「共産党と一心同体に動く」というのであれば堂々とそれを有権者・支持母体に明らかにするべきなのである。

 無論それは、戦後日本のすべての政党・政権が守ってきた「非共産政権」という大前提を完膚無きまでに打ち壊すことを意味する。

 

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Akiおとな研究所 編集長

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おとな研究所 編集長
趣味は短歌、動画編集。不登校経験あり。

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