【大人研究#1】DaiGo氏発言の問題点を見誤ってはいけない。−猫もホームレスも助けようよ

※この記事は、2021年8月13日に開始したシリーズ「大人研究」の第一弾です。このシリーズでは、おとな研究所編集長の現役高校生が、著名人からSNS上の匿名発信まで、さまざまな「大人」の言動にスポットライトを当てて内容を「研究」していきます。

 著名人から飛び出た衝撃的な言動が取り沙汰されることは、もはや現代社会の恒例行事となりつつある。これはある意味当然のことで、無名の人がした問題発言など、そもそも誰も興味を持たない。メディアは著名人を作ることもできるが、その著名人を潰すこともできる。そして時として、そうした著名人の言動の問題点を曲解することもしばしばあるのだ。

 DaiGo氏の発言については、恐らくご本人が想定していた以上に批判の嵐となっただろう。筆者も当然この発言は看過できる物ではないし、DaiGo氏は発言の責任を取ることになるだろうと考える。だが、批判の論点を誤ることは、健全な言論空間を育むことに更なる障害を生みかねない。

 本稿では氏の発言の問題点を冷静に考察するとともに、誤った批判に対しても丁寧に指摘していきたいと思う。

DaiGo氏の発言と文脈

 内容をご存知ない方のために、8月7日に配信されたYouTubeLiveにおける彼の発言を簡単に紹介したい。

僕は生活保護の人たちにね、あの、なんだろう、お金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。

生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、あの、猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人生きてても僕べつに得しないけどさ、あの、猫はさ、生きてれば僕得なんで。

(後ろの猫を話しかけながら)ね? 癒される。そうだねー。ねー。ほんとそうだねー。

猫が道端で伸びてたらかわいいもんだけど、ホームレスのおっさんがさ、伸びてるとさ、なんでこいつ我が物顔で段ボール引いて寝てんだろうなって思うもんね。うん。

僕はあのー、今日辛口だと思いますけど、ダークなんで、うん。人間の命と猫の命は人間の命の方が重いなんて僕全く思ってないからね。自分にとって必要もない命は僕軽いんで。僕にとって軽いんで。そうそうそう、だからべつにホームレスの命はどうでもいい。

てか、どちらかっていうと、みんな思わない? どちらかっていうといない方がよくない? ホームレスって。言っちゃ悪いけど。本当に言っちゃ悪いこと言いますけど、いない方が良くない?

いない方がだってさ、みんな確かに命は大事って思ってるよ。人権もあるから。いちおう形上大事にするよ。でもいない方がよくない? うん。正直。邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ。ねえ。治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。猫はでもかわいいじゃん? うん。って思うけどね、僕はね。

うん。もともと人間はね。自分たちの群れにそぐわない社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐなわい人間を処刑して生きてきてるんですよ。犯罪者を殺すのと同じですよ。犯罪者が社会の中にいると問題だし、みんなに害があるでしょ? だから殺すんですよ。はい。同じですよ。

Yahoo!ニュース|メンタリストDaiGo「ホームレスの命はどうでもいい」と差別発言。炎上後も「辛口だから」と言い訳

 細かい部分についての批判は後ほど行うが、全体として「批判されて然るべき」の一言に尽きる。一方で、そもそもなぜこのような発言に至ったのかという点には検証が必要だろう。

 そもそもこの日の生放送は「科学的にバッサリ斬られたい人のための質疑応答」と題して行われたもので、視聴者の質問に対してDaiGo氏が辛口で答えるという形をとっており、上記発言についても、視聴者の「幼い頃、親に『お前のやることは全て間違っている』と言われたことを引きずっていて、克服したい」という質問の回答の中から出てきたものだった。

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メンタリストDaiGo氏 公式Twitterより

 これに対し、DaiGo氏は「自分でやったことで正しかったことはある。そんなこと言う親は間違いなく間違っている。」とした上で、「体のいい言い訳になる」と切り出す。その上で、「いじめや虐待で成功できなかったと言う人がいるが、同じ環境に育って成功した人はいくらでもいる。貧しい人や障がいを持っている人でも。理由にならない。」とした。

 このような言説はDaiGo氏のオリジナルというよも、心理学 –特にアルフレッド・アドラー博士ら個人心理学− において議論される話題であり、特段議論は不要だろう。いわゆる「目的論」と「劣等コンプレックス」の考え方だ。

参照:いつも「環境のせい」にする人は、なぜ成功できないのか?|ダイヤモンド・オンライン

 なるほど確かに辛口でもある。話がここで終わっていれば、事は大きくならなかっただろう。冒頭の発言は、この後DaiGo氏が「日本では生活保護貰えば生きていける」と言及したことにより、始まったわけである。

 ここまでをまとめると、批判されている発言内容は明らかに質疑応答の流れから逸脱したものであり、蛇足だったということでは無いだろうか。

なぜ「猫」か「ホームレス」の二者択一に持ち込んでいるのか

 発言冒頭から見ていこう。「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、あの、猫を救ってほしいと僕は思う」としているが、そもそもこのような提起自体が破綻している。

 様々な主体による政策決定の際、個別政策の中で優先順位を決めることは往往にしてある。だが現実問題として、「生活保護制度」と「猫を含む動物保護」で、限られた予算が二者択一を迫られることはあり得ない。それぞれ必要とされた予算が配分され両方とも実行されるし、実行されている。

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 根拠として「僕」が得かどうかを語っているが、国民市民1人1人が自らの希望を述べていたらキリがない上、それが「Aを切り捨ててBを取る」ような話であれば、真逆の考えを持つ人との間にいらぬ軋轢と批判を招くことくらい、考えればわかるはずだ。少なくとも「メンタリスト」を名乗るならば。

 「生活保護の人たちを食わせる」ことも、「猫を救って」いくことも、両方やればいいだけの話で、なぜその選択肢が排除されているのか理解に苦しむところである。これは「辛口」や「ダーク」以前の話だ。

 明らかに「生活保護」「ホームレス」に対する嫌悪感と「猫」に対する好感という結論ありきの論理に過ぎないだろう。

 そしてその論理はさらに飛躍する。「人間の命」と「猫の命」を比べ始めるのだ。確かに彼にとって「ホームレス」がどうでもいいのは事実かも知れない。人間誰しも、自分とは全く縁もゆかりもない人に、興味も関心も湧かないのは普通のことである。「どうでもいい」という発言自体にはさほど問題はない。

 問題は、それを「命の重さ」で比べようとしたことである。繰り返しになるが、「Aを切り捨ててBを取る」話は極めて危険で、比較するものが「命」ならば尚更だ。議論があまりにも極端で、好き嫌いで決めている感が否めない。

「いらない」とする論拠の幼稚さと、同意を求めることの悪質さ

 ここから、さらに発言は危ない方向へと転ぶ。「どちらかっていうといない方がよくない? ホームレスって。言っちゃ悪いけど。本当に言っちゃ悪いこと言いますけど、いない方が良くない?」だ。視聴者に同意を求めているのである。

 しかも、「いらない」「いない方がいい」理由として挙げたのが「邪魔」「プラスにならない」「臭い」「治安が悪くなる」だ。この議論には2つの大きな問題がある。

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 1点目は「いらない」とする論拠の幼稚さだ。前項で述べたとおり、DaiGo氏は数秒前に猫の命と比べて「人間(=ホームレス)」の命に言及している。その中での「いらない」「いない方がいい」という発言は、極めて猟奇的なニュアンスにも取られるのである。

 一方でその論拠として挙げられたのは、(せいぜい「治安が悪くなる」を除いても)幼稚な物ばかりである。「邪魔」「プラスにならない」は抽象的で説得力に欠け、「臭い」に至っては偏見でしかない。

 こうした論ずるに値しない根拠を挙げて最もらしく視聴者に同意を求めているのが、問題の2点目だ。極めて危険なことを言っておきながら、「自分以外の人も同じ意見を持っている」というように誘導している事に加え、ホームレスや生活保護受給者の側から見れば、自分たちのことを不要と考えている「共犯者」を多く生み出していることにもなる。

 「僕は」と前置きしている以上はせめて終始「個人的な意見」に留める努力をするべきで、視聴者に同意を求めることは悪質だと言わざるを得ないのではないだろうか。

「生活保護」も「ホームレス」も犯罪ではない

 DaiGo氏が振りかざす暴論の局地として、「犯罪者を殺すのは人間の群れ全体の利益にそぐわないから。害があるから殺す。それと同じ。」という趣旨の発言だ。

 根本的に理解が誤っている点として、我が国において「犯罪者が死刑になる可能性がある理由」は、「刑法などによって定められているから」以上の何物でもない。現在日本では、判決が「死刑」となる犯罪に以下のようなものがある。(なおこれらは判例上、致死の結果を生じた場合にのみ死刑判決が下るとされている。)

  • 内乱罪
  • 外患誘致罪
  • 外患援助罪
  • 現住建造物等放火罪
  • 激発物破裂罪
  • 現住建造物等浸害罪
  • 汽車転覆等致死罪
  • 水道毒物等混入致死罪
  • 殺人罪
  • 強盗致死罪・強盗殺人罪
  • 強盗・強制性交等致死罪
  • 組織的な殺人罪
  • 人質殺害罪
  • 航空機強取等致死
  • 航空機墜落等致死
  • 船舶強取・運行支配
  • 船舶内の財物強取等
  • 船舶内にある者の略取
  • 人質強要
  • 爆発物使用

 数自体はかなり多いものの、「人の生命を奪う行為」に限定されていることは判例からも明らかだ。つまり「人の生命を奪う行為」によって初めて日本という国家は犯罪者に死を宣告し、他者の死と自己の死を同一視させることができるのである。

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 これは高度の倫理上・法理上の議論であって、「社会にとって利益か害か」などという単純化された議論ではない。ましてや「生活保護を受給する人」も「居住地を持たない人」も、日本において犯罪ではないどころか、保護される対象である。もしDaiGo氏にそのような意図がなかったとしても、殺人的な罪を犯していない人の生命を安易に「殺す」とすることは、「ナチズム」との批判も免れないのではないか。

「優生思想」との批判は的外れ

 ここまでDaiGo氏の発言を徹底的に批判してきたが、筆者同様に彼の発言を批判するSNSなどでの反応の中で見られるワードとして「優生思想」がある。

 「優生思想」とは何なのか。そもそもは「優生学」という学問を、思想的な視座で捉えた際の言葉であるため、語義そのものは「優生学」で当たるとわかりやすい。

優生学とは,「人類の遺伝的素質を改善することを目的とし,悪質の遺伝的形質を淘汰し,優良なものを保存することを研究する学問」である(『広辞苑 第6版』岩波書店,2008)。
その歴史を遡れば,優生(学)的な思想は,すでに,ソクラテスやプラトンら古代ギリシャの哲学者のなかに見られるが,C・ダーウィンの従兄弟であるイギリスのF・ゴルトンが「人間の優良な血統を増やすことを研究する科学」を優生学(eugenics)と定義したことから,ゴルトンが優生学の創始者であるとされている。

「リハビリテーション研究 Japanese Journal of Rehabilitation」2017年3月(第170号) > 用語の解説 優生思想|DINF
File:Francis Galton.jpg
フランシス・ゴルトン博士

 ここで注目されているのは即ち、「人間が種の保存にあたって、生得的質の優れた血統を残す」という点だ。この議論に乗る形で、「障がい者の排除」「人種政策」などが取られるわけだが、日本においても決して無縁ではない。旧優生保護法(1948~1996)名の下で、障がい者の強制不妊手術が行われていた。信じがたい差別と同時に、被差別者に耐え難い苦痛を強いることになる。

 一方今回DaiGo氏が言及し「いらない」としたのは「生活保護受給者」と「ホームレス」であり、分類は生得的質の優劣ではなく経済的な強弱だ。また前述の通り、この直前にDaiGo氏は「いじめや虐待で成功できなかったと言う人がいるが、同じ環境に育って成功した人はいくらでもいる。貧しい人や障がいを持っている人でも。理由にならない。」という趣旨の発言しており、優生思想とは真逆の発言であると言える。

 DaiGo氏の発言は確かに批判の免れないものであるが、その論点を誤ることは、元の議論(この場合では優生思想の問題点)の本質を曖昧にしかねず、より危険な言論となってしまう恐れがあるのではないか。批判する立場に立つのであれば、この点には留意する必要があると筆者は考える。

参考:メンタリストDaiGo「ホームレスの命はどうでもいい」と「優生思想!」の問題|事実を整える

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批判への反論で、火にガソリンを撒いている

 本来は発言そのものへの批判記事であるため、ここで筆者は筆を置くべきである。だがDaiGo氏は大小問わずこの発言への批判にもう反論しており、収拾がつかない状況になっているのだ。

 まずは炎上当夜に改めて行われた生配信での反論。

「何でかって言うと、税金めちゃくちゃ払ってるから(…)こんな炎上に参加している人に聞きますけど、じゃあホームレスとか生活保護の人たちに寄付しました?たくさん税金払いました?その人たちのために炊き出しとか定期的にやったりしているんですか?そういう人は僕のことを叩けると思います」

「僕は個人的に思うので、そう言っただけなので、別に謝罪するべきことではないと思いますよ。みんなも言うでしょ?『あいつ死んだ方がいいのに』とか言うでしょ。同じよ」

DaiGo氏、殺到する批判に「個人の感想」と反論。支援者は「言語道断」「ヘイトクライムを誘発」と指摘|BuzzFeed

 自らの発言について「ホームレスの皆さんには謝ります」としたものの、j批判する人に対してはなぜか「納税額マウント」を取り出したのだ。

 彼は配信中で「おそらくだいたいの場合、統計学上自分の方が批判している人よりも多く税金を納めているから、自分の方が彼らを救っている」としたが、これは明らかな論点ずらしであり誤りだ。

 例えば、日本においては喫煙者にのみ課されている「たばこ税」という何種類もの税金が重なった独自の税制があり、税負担率は実に6割を超えるとも言われる。さらに、2019年度国税収等の総計(約62兆1,751億円)のうち、国たばこ税・たばこ特別税は約1.6%を占めているというのだから、その税収も決して少ないものではない。明らかに喫煙者の方が非喫煙者よりも多くの税金を納めているのだが、彼らは別に他人に比べて発言の正当性が認められている訳でもなければ、「ホームレスを救っている」と豪語することもないだろう。

 そもそも税金の重要な役割は「富裕層が貧困層を救った自慢のためのもの」ではなく、「富の再分配の一翼」なのだ。貧困層の生活支援や社会保障というのはまさにこれにあたり、納めた税額が高額だから何、という議論は全く意味不明なのである。

 そして、8月13日正午のツイートだ。

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そんなに助けてあげたいなら、
自分で身銭切って寄付でもしたらいいんじゃない?

国がそういう人のために、
みんなの給料から毎月3万円徴収しますって言い始めたら、皆さん賛成するんですかね?

2021/08/13 12:09 @Mentalist_DaiGo

 これに関してはもはや「誰もそんな話はしてない」としか言いようがないだろう。DaiGo氏の発言を批判している人は一言も「ホームレスを助けたい」と言ってないし、「寄付」だとか「給料から3万円」などという話はしていないのだ。批判の主要な論点を無視し、見事なまでに話をすり替える姿勢は、批判の声を引き伸ばし、拡散し続けることを助けることだろう。

表現の自由と発露の責任、そして批判する上での注意

 DaiGo氏の発言を根拠に、彼自身から言論の自由を奪う、プラットフォームを奪うようなことは表現の自由の観点から、あってはならないことだ。だが一方で、今回の発言は明らかに社会的良識に欠け、多くの人を傷つけ流ものだったと言わざるを得ない。その責任は、数え切れないほどの批判を持って知るべきなのだろう。

 そして批判する側にも責任がある。それは「論点を見誤らないこと」だ。感情的になって口走る言葉は、二次的・三次的な憎悪表現を生む恐れを十分に持っている。また的外れな批評は、巻き込んでいく論点を曖昧にしかねない。

 誰しも発言・発信には責任を伴うのである。今回のDaiGo氏の発言とそれに対する反響が、現実問題として起きている格差拡大や動物愛護、優生思想や表現の自由などに対して、解決に向けた少しでも良いインパクトを与えていくことを望む。

 

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Akiおとな研究所 編集長

投稿者プロフィール

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おとな研究所 編集長
趣味は短歌、動画編集。不登校経験あり。

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