タリバンの背景にちらつく中国の存在 これからのアフガン情勢の展望

アフガニスタンの情勢が混迷を極めている。アメリカのバイデン大統領が8月末までにアフガニスタンからの駐留米軍撤退を進めていることをうけ、反政府武装勢力タリバンが州都を次々と掌握。今月15日に勝利声明を発表し、アシュラフ・ガニ大統領は出国、事実上ガニ政権は崩壊した。

タリバン、アフガニスタンでの「勝利」を宣言 ガニ大統領の出国後に首都掌握 より

タリバンはかつて厳格なシャリア法の解釈に沿った恐怖政治を行い、2001年の同時多発テロ事件を受けた多国籍軍の攻撃を受け一度は崩壊したが、20年ぶりに復権することとなる。人権弾圧への懸念が広がる中、国連は「イスラム首長国」の復活を支持せず国家として承認しない姿勢を示している。

また、既に国内は大混乱に陥っており、カブール空港は国外への脱出を望む多くの国民でごった返していたようだ。

アフガニスタンの情勢悪化を受け、昨年の大統領選で火花を散らしたバイデン大統領とトランプ前大統領が再びバトルを起こしている。簡単に言うと責任の擦り付けだ。

ドナルド・トランプ前米大統領は15日、米軍が20年近く駐留してきたアフガニスタンから撤退を進める中で、旧支配勢力タリバンが勢力を急拡大していることの責任を取るべきだと主張し、ジョー・バイデン大統領に辞任を求めた。

トランプ前政権は2020年、カタールの首都ドーハでタリバンと和平合意を結び、タリバンが国内でテロ活動を許さないことなどを条件に、2021年5月までに米軍を完全撤退すると確約した。

しかし、今年1月に大統領に就任したバイデン氏は、撤退期限を延期する一方、無条件とした。

トランプ氏、バイデン氏に辞任要求 タリバン急進撃の責任取るべき より

記事にもある通り、トランプ氏は条件付きで米軍を撤退させるとしていたが、バイデン氏は無条件で撤退させるとしていた。また、実際に米軍撤退を開始したのはバイデン政権になってからだ。そのため、今回の米軍撤退の責任は全面的にバイデン政権に降りかかることとなる。

しかし、米軍撤退によってタリバン勢力の拡大を許してしまったことは事実であるが、アフガニスタンの治安は米軍に依存した状態であり、手を引こうにも引けない状態が続いていた。

アフガニスタンはいわゆる「大国キラー」であり、かつては大英帝国やソ連、そしてアメリカまでもが苦しんだこともあるスポットであり、アフガニスタンに介入すること自体が大いなるリスクとなる。現に20年以上もアメリカがアフガニスタンに介入したにもかかわらず、国軍と市民社会が根付かずタリバン勢力の拡大を招いてしまったことはアメリカのアフガニスタン介入が水の泡に化したことを証明している。アメリカの国益を第一に考えるのであれば、アフガン介入はすべきではなく、米軍撤退も正しい選択であったと私は思う。

<スポンサー>

ところで、今回のタリバン勢力の急拡大の背景には中国が絡んでいることも噂されている。タリバンはイスラム原理主義の立場でウイグル族(ムスリム)の弾圧を進める中国とは一見相容れないように思えるものの、タリバンが欲しがる金と中国の欲しがる資源、両者の思惑が一致したのだろう。少なくとも短期的には協力関係を築くのではないか。

現に中国の外交官である華春瑩氏は、タリバンがアフガニスタンを掌握でき次第同国と「友好的かつ協力的な」関係を深める準備ができていると語っている。

また、意外と知られていないが中国とアフガニスタンはワハーン回廊で国境を接している。2009年にアフガニスタンは中国に対し回廊の解放を求めていたが中国側は新疆ウイグル自治区の情勢不安を懸念し拒否している。しかし、タリバンと裏で手を組んでいるはずの現在では解放する可能性も十分あるだろう。さらにワハーン回廊の北部には中国の軍事施設が建設中といううわさもあり、今後はこのワハーン回廊が中国とアフガニスタンにとって一つキーポイントになる可能性はある。

アフガニスタン政府は、ワハン回廊とバダフシャン州の他地域を道路で結ぶ可能性を探るため、空から測量を実施する計画を発表している。さらにアフガニスタン当局によれば、ワハン回廊の北端に中国が軍事基地を建設する計画があり、両国は協議を進めている。

戦火さえ来ない最果ての地、アフガニスタンのワハン回廊 より

しかしながら、中国がアフガニスタンに介入することは得策と言えるのだろうか。

まず、アフガニスタンは中国を除けばパキスタン、イラン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、インド(カシミール)と国境を接している。中国政府は一帯一路政策もかねてこれら全ての国と経済協力等を行うなど影響力を強めている。パキスタンはアメリカの同盟国だが近年関係が悪化、またサウジアラビアではアフガニスタン同様米軍の撤退を進めており、またタリバンの支援も行っていることから中国側につく見方もある。国境を接することでの懸念点としてはイランがここ最近アメリカと接近していることくらいか。

また米軍の残した軍用車両などは既にほとんどがタリバンに行き渡ったとみられており、中国の武器技術の向上につなげられるかもしれない。

しかし、世界の警察であるアメリカですら管理しきれなかったアフガニスタンを海洋進出を進める中国ができるのかと言われたら微妙なところだ。地政学的には「大陸国家であることと海洋国家であることは両立し得ない」と言われているが、果たして内乱の激しい地域を抑え込みつつ東南アジアや太平洋方面への影響力を強めることはできるのだろうか。

<スポンサー>

それに中国はウイグル族の弾圧を進めているが、イスラム圏の国々が反感を持たないわけがない。短期的には中国からの投資や資金援助を求めて手を組んだとしても、将来それを踏み倒して中国に牙を向けることは容易に想像がつくシナリオだ。何しろワハーン回廊は中国と国境を接していると前述したが、正確に言うと新疆ウイグル自治区と国境を接している。逆手に取ればイスラム勢力がなだれ込む、あるいは逃げ出すルートになりうるということだ。

また、中国がタリバンと組んでいることが槍玉にあげられればアメリカが中国を「テロ支援国家」に指定し米中対立が激化する懸念もある。シンプルに考えてアメリカが経済制裁に打って出れば中国は危うい。アメリカがドル決済の枠組みから中国を外したり、ドル建て資産の凍結などという反則級の手段に出たら中国国内は大混乱に陥るだろう。ただでさえ国内でも最大250倍の格差があると言われる中国、内需で引きこもろうにも無理だろう。

大英帝国、ソ連、アメリカと次々と大国の衰退を招いた「大国キラー」アフガニスタンに対し、中国は攻略することができるのだろうか。米中対立を読み解くうえでも中国とアフガニスタンの関係は注目していきたい。

 

フォロー・いいね・チャンネル登録での
ご支援よろしくお願いします!

おとな研の”今”を知ろう!

 

よもぎおとな研究所 副編集長

投稿者プロフィール

ライターページ
おとな研究所副編集長、ブロガー
Twitterフォロワー数8000人超
時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

あなたへのおすすめ



ピックアップ記事

  1. 登録されている記事はございません。

スポンサー







Twitter・FaceBook

公式チャンネル

有料コンテンツサイト

スポンサー




スマホでもおとな研

スポンサー




ページ上部へ戻る