アフガニスタンへの自衛隊派遣 法的根拠や経緯をQ&A形式でまとめてみた

自衛隊派遣の根拠は?

今回の自衛隊の派遣の根拠は、自衛隊法84条の4が根拠となっている。

(在外邦人等の輸送)

第八十四条の四 防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。(後略)

自衛隊法 より

実際に自衛隊法84条の4が適用され在外邦人等の輸送を行ったケースとしては、これまで2004年のイラク、13年のアルジェリア、16年のバングラデシュと南スーダンの4例がある。

なぜ他国より派遣が遅れたの?

一部の人は自衛隊の派遣が遅れ邦人救出が思うように進まなかったと日本政府を批判している。ではなぜ日本政府は自衛隊の派遣に時間がかかってしまったのだろうか。

当初防衛相や自衛隊は自衛隊法84条の4に記されている「当該輸送を安全に実施することができると認めるとき」という条件が満たせないとしており、また後述する自衛隊法84条の3も同様に条件が満たせないとして、自衛隊の派遣には消極的であった。

ところが、8月20日になってアメリカ政府から急遽、自衛隊の派遣を含めた協力を要請してきたのだ。

混乱が続くアフガニスタンから、大使館職員や民間人の国外退避を進めているアメリカが、日本政府に対して、自衛隊の派遣を含めた協力を要請していることがわかった。

外交筋によると、8月31日までに、すべての民間人の国外退避を目指しているアメリカ政府は、同盟国の日本にも民間人を退避させるための協力を要請していて、自衛隊の派遣の可能性などについて協議しているという。

アフガン 米が日本に自衛隊派遣協力要請 米民間人の退避に向けて より

また、そのほか各国がアフガニスタンで国外退避の活動を進めているにもかかわらず、先進国である日本が全く協力しないとなれば国際的な批判を受けることも考えられただろう。こうした理由から、日本政府が急転直下で自衛隊の派遣を決めたのは国際協調を意識した総合的な判断だと考えられる。

先ほど説明した自衛隊が消極的であった点について、加藤官房長官の説明によれば、カブール空港内はアメリカ軍が管理しているため、安全が確保されているとみなしたようだ。空港付近では爆発が起こっていることもありなかなか苦しい釈明には思えるが、人道上仕方のない手段だったのだろう。

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空港の中では、アメリカ軍が安全確保や周辺区域の航空管制を行い、航空機の離着陸も正常に行われていると聞いている。

自衛隊機輸送 “カブール空港で銃撃戦も安全は確保” 官房長官 より

なぜ退避を希望する人が全員退避できないの?

答えを一言で言ってしまうと、自衛隊が空港外で活動することはできないからだ。

一昨日、アフガニスタンから日本人1人が自衛隊の輸送機で国外退避することに成功したという報道があった。

アフガニスタンからの国外退避をめぐり、退避を希望している日本人1人が首都カブールの空港に到着し、自衛隊の輸送機でパキスタンに向かいました。

日本人1人が自衛隊機でアフガニスタンからパキスタンに退避 より

これに対し、立憲民主党の福山幹事長は「なぜわずか1人なのですか」とコメントするなど、退避を希望する日本人が全員退避できなかったことにあちこちで疑問の声が上がっているようだ。

(関連記事)

前述したように、自衛隊法84条の4の規定では「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは」という条件付きで輸送を実施することができる。

先程紹介した加藤官房長官のコメントでは空港内はアメリカ軍が管理しており安全だが、空港外は管理が行き届いておらず、輸送の安全が確保されていない。そのため、空港外で活動を行うことはできていない。

26日には空港付近で爆発があったこともあり、空港にたどり着くこと自体が難しく退避が進んでいないのが現状だ。

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日本時間の26日夜、日本人に加え、大使館や国際機関のアフガニスタン人スタッフなど退避希望者数百人が空港とは別の場所に集まり、20台以上のバスに分かれて空港に向けて出発していたことがわかりました。

しかし移動中、空港付近で過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織の関与が指摘される大規模な爆発が起きたことで、移動を断念し引き返したということです。

アフガニスタン 日本人などの国外退避 爆発で空港への移動断念 より

なぜ”保護措置”を適用することはできないの?

自衛隊法84条の4に類似した規定として自衛隊法84の3がある。

(在外邦人等の保護措置)

第八十四条の三 防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。

一 当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。
二 自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従つて当該外国において施政を行う機関がある場合にあつては、当該機関)の同意があること。
三 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。

自衛隊法 より

ここで注目していただきたいのは、自衛隊が保護措置を行うためにはさまざまな条件があるということだ。

まず第一項で「当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっている」「戦闘行為が行われないと認められる」という条件だが、アフガニスタンの情勢悪化は深刻で実際にテロ行為も行われている中、この条件に当てはまるかと言われたら微妙だ。

第一項の規定を大目に見たとしても、第二項・第三項では「当該外国の同意がある」「当該外国の当局と連携ができる」という条件だが、アフガニスタン政府が事実上崩壊し日本政府が認めていないタリバンが実権を握っており、この条件を満たすことは難しい。

そのため、自衛隊法84条の3、在外邦人等の保護措置は適用されなかったと考えられる。

 

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よもぎおとな研究所 副編集長

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おとな研究所副編集長、ブロガー
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時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

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