税は財源だ!持続可能な税制を考える。

先日、おとな研究所で「消費税という有害無益な税」との記事が寄稿された。その記事の中では、税は財源ではないとの主張がなされ、そして消費税は逆進性と消費に対する罰である観点から廃止すべきとの主張が展開された。

この記事の第一部として、税は財源であるとの前提を歴史的、経済的背景から実証し、第二部は有料となるが、実際に成長する財政を考えていきたいと思う。

経済学はそもそも「限られた資源の効率配分」を第一に考える学問だ。その原点に立ち戻って、「税」と「財源」の意味を考え、イデオロギーに囚われない税制とあり方をエビデンスファーストで考えていきたいと思う。

参考記事:経済学のイロハ― 1.需要と供給

参考記事:経済成長、インフレと長期総供給

※なおこの記事の第一部は私の知人である2名にも協力してもらっている。この記事は彼等の協力なしには実現不可能であった。この場を借りて感謝を申し上げたい。
S.S氏のツイッター
ひでしゅう氏のツイッター


税は財源なのかーS.S. 氏の論考

税は財源である。

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というより「税は財源ではない」というのは、表現が不適切で、実際には「税だけが財源じゃない」と言う方が適切だろう。

政府支出においては、社会保障にしても、公共事業にしても、産業政策にしても、実物資源(=労働力、資本ストック)を民間に変わり使用する。ここで税は民間の潜在需要(購買力)を吸収して、それを政府の実物生産に振り向ける役割を持っている。要するに、税金は民間の供給力を政府が利用する行為なのだ。


税は供給力を利用する言う実物供給の前提から考えれば、スペンディングファースト(政府の支出が先で後に納税がある、との主張)は明らかに間違っている。実際の循環は逆で、民間の供給力を貨幣として政府が徴収して、それを政府支出として利用する事になるのだ。要するに税は「財政スペース」を確保する役割を持っているわけだ。これを「財源」と表現する事も可能だ。

確かにこの財政スペースを埋める手段としては、税だけでなく国債発行でも可能ではある。よって、支出は税収の範囲内でしかできないというのは間違いと言える。

しかし、税は財源でないというのは単なるレトリックにすぎない。これでは真に重要な実物供給能力を見えづらくするだけだ。税であろうが、国債であろうが政府が供給力を使用するには何らかの形で民間から供給力を徴収する必要性がある。実際に貨幣単位でしか経済を見れない人たちがツイッター上で大量発生しており、その方々が「税は財源ではない」と主張する様になった。

参考記事:MMTをぶった切る!?本当に経済の為になる財政政策は??

これらの人たちは消費税廃止を主張してるが、その根拠に次のようなものがある。消費税は景気調整機能を果たさない、なぜなら不況であろうが好況であろうが、税収が変化しないからだという、批判だ。しかし、これは意味をなしてないように思える。というのも、消費には異時点で平準化動機が働くという性質があり、日本のように相対的リスク回避度が高ければ、景気変動の影響がより少なくなり、実質消費は安定的に推移するわけで、消費税はこの性質を利用してるだけだからだ。むしろ徴税安定性はメリットではなかろうか。

そもそも日本で消費税廃止ができるだろうか。失業率は歴史的水準まで下がっており、労働供給がほぼ限界と言ってもよい。このような状況で消費需要を過熱させる政策をとれば、直ぐに供給限界に達し、低成長高インフレのスタグフレーションになるだけだ。

1986年から2021年までのGDPギャップとインフレ率の推移


実際コロナ前には、納期遅延や受注キャンセルといった現象が観察されている。ただ物価は直ちには変わりにくく、インフレ圧力になっても、すぐに物価が上がらないから気づきにくくなっている。しかしながら、消費需要を過熱すればいずれインフレが起きる事は明白だ。

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インフレ率(縦軸)とGDPギャップ(横軸)には強い関係性がある。

インフレは一般物価水準と相対価格の識別の誤りから生産の撹乱要素となりえるし、インフレ税で実質消費が減退し、厚生損失となる可能性もある。資源制約で生産はすぐに追いつかず、インフレ圧力が長期化すれば、成長率にもマイナスになるだろう。日本においては不適切な政策だ。


明治初期における財政ファイナンスとインフレーションーひでしゅう氏の論考

次に、消費税廃止を主張する記事では「明治時代では税は財源ではなく、通貨発行によって歳入を確保していた」との主張がなされていた。しかし、この財政政策が実際に引き起こした結果を歴史学生である私の友人、日本維新の会九州学生部副部長であるひでしゅう氏に解説して頂く。

筆者は本文中で明治初期は歳入の大半を紙幣発行で賄っていたと述べ、自身の論の補助に用いている。たしかに明治初期において財政基盤の弱い新政府は太政官札を発行することで、歳入の不足を補っていた。しかしこの制度は成功せず、インフレーションと言う大きな問題を引き起こしている。

この時発行された太政官札は、明治元年度は3割、明治2年度からは8割近くが赤字補填のために用いられており、加えて明治元年12月に発案者である由利公正が失脚した後は無統制な発行が続けられている。このように行政上の必要だけを念頭とした通貨発行が行われたため結果として急速なインフレーションが進むこととなった。

そしてその後、このインフレーションは明治10年の西南戦争の勃発により財政規模が拡大し、紙幣発行の増加による更に加速した。当時、経済の中枢を占めた米価指数を見ると、明治十年を100とした場合、十三年までには203まで高騰している。一年に約70%近いインフレとなっている。東京重要品物値指数は十年を100とすると、13年までには130とまで高騰している。一年10%程度のインフレとなる。

事態を収拾する為、最終的には紙幣発行による財源確保から税を中心とする財源へ移行された。紙幣整理、軍以外の歳出の削減と地租以外の増税、起債の停止が行われ、以後近代国家財政の基礎となった。長期的には税以外の財源が無い事は明治時代に判明した事である。

このように当該期においては紙幣発行によって歳入を賄っていたが、それは最初期を除き専ら各行政庁などの赤字補填に用いられていた。そのため本質的な市場の拡大には寄与せず、結果として急速なインフレーションを引き起こしたのである。

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結局、「税は財源」


S・S氏とひでしゅう氏による上記の論考で示した通り、税以外の財源は基本的にあり得なく、短期的に財政ファイナンスを行ったとしてもそれはインフレによる貯蓄価値喪失か税で返済する事が求められる事は明白だ。インフレと言う事実上の「資産税」を引き起こして、「税は財源ではない」と言い張る事はおかしいだろう。実際に、あの記事の筆者が持ち出しした明治の例では、インフレが国民負担に繋がり、それ以降税による近代財政が整えられた事は彼の言う逆に、

「税は財源である」

と言う事を示しているだろう。消費税廃止や無税国家論やMMT的な政策を掲げる識者はもっと歴史的事実と基礎的な経済理論に立ち返るべきかと考える。

税は実際に財源であると言う事が明白になった以上、安易な減税一点張りの政策は不可能と言うことが読者には分かっていただいたと思う。しかしながら、実際に日本は近年国民負担率が上昇してきており、人口構造の変化により、現役世代に特段重税感を感じさせている事は事実だろう。そして、税収の名目弾性値が1以上である事を鑑みると、やはり日本でも国民負担率を減らす事は重要だと考える。

更に、日本の税制(特に所得法人税制)は複雑であり、一部逆進性も見られるところがある。これは納税コストを増大させ、民間への「見えない税」となっている。やはり、そこの面も改正していかないと、重税感は克服されないだろう。

ここからは、どうやったら問題が散見している日本の税制を改善できるのか、考えていきたい。

神谷ゆうた

投稿者プロフィール

ライターページ
オーストラリア国立大学、政治哲学経済学部(PPE)在籍の19歳。日本維新の会学生部広報課長

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