最低賃金制度を導入する効果とは!? 労働市場のモデルを基に徹底解説!

最低賃金制度は政府の介入による非効率性の象徴だとしてミクロ経済学の教科書では批判されることが多い。例を挙げると、『ゼミナール 経済政策入門』(岩田規久男&飯田泰之)では最低賃金制度を「労働者の賃金を引き上げる政策としては、効率性基準からみて落第です」と評している。(P63)

しかし、労働市場の形態によっては最低賃金制度は雇用量を増大させることもある。今回はミクロ経済学を知らない人でもわかりやすいように最低賃金の効果を丁寧に解説する。

労働市場の需要と供給

最低賃金の効果を調べるためにはまず初めに労働市場を分析しなければならない。労働市場は他の市場と同じように需要と供給に従う。

まずは労働供給曲線について考える。「労働供給」と聞くとピンと来ないかもしれないが、ここでは労働者側がある賃金によってどれだけ働きたいと思うかを示している。”労働力を供給している”と捉えた方がわかりやすいかもしれない。

普通、賃金が低いとその賃金で働こうと思う人は少ないので労働供給は少なくなる。一方で、賃金が高いとその賃金で働こうと思う人は多くなるので労働供給は多くなる。そのため、労働供給曲線は基本的に右上がりの曲線になる*。

*ここでは話を簡略化させるために労働供給曲線を右上がりのものとして考えるが、労働供給曲線は後方屈曲的になることで知られている。なぜなら、あまりにも賃金が高い場合は働く時間を削って余暇に充てる人が増えるからである。詳しく知りたい方は、『ミクロ経済学の力』(神取道宏)のP204を参照してほしい。

続いて、労働需要曲線について考える。「労働需要」とは労働を欲しがっている側、つまり企業がある賃金によってどれだけ雇いたいと思うかを示している。

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企業としては賃金が高いと雇う人を増やそうとは思わないので労働需要は少なくなる。一方で、賃金が安いと雇う人を増やそうと思うので労働需要は多くなる。そのため、労働需要曲線は基本的に右下がりの曲線になる。

そして、労働供給曲線と労働需要曲線を重ね合わせると一つだけ交点ができる。この交点では労働供給と労働需要が釣り合っていて、ここでの雇用量を「均衡雇用量(E₀)」、賃金を「均衡賃金(W₀)」と呼ぶ。政府の介入が無ければ賃金は需要と供給が釣り合うように自然に調整される。

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完全競争市場

さて、ここで先ほど示した労働市場に拘束力を持つ最低賃金を導入したとする。ここでは、最低賃金の値をWm、最低賃金に対応する雇用量をEmとする。

まず、最低賃金Wmが均衡賃金W₀よりも小さい場合を考える。この場合は最低賃金Wmは賃金が低すぎて、均衡価格W₀のままで変わらないだろう。Wm<W₀の場合では最低賃金制度は意味をなさない。

一方で、最低賃金Wmが均衡賃金W₀よりも大きい場合を考える。この場合は最低賃金Wmが存在することによって企業の「雇いたい」というインセンティブが失われるので、雇用量はE₀からEmに減少する。その結果、労働者側の超過供給になり失業が生じてしまう。

また、当初の均衡雇用量E₀よりEmに減少する。ここでは、W₀からWmの間で働きたかった人が失業を強いられている。その結果、濃い灰色の部分で社会的損失が生まれている。

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このため、一般的なミクロ経済学の教科書では政府が労働市場に介入し、最低賃金制度を導入することは社会的損失を生み出すとして悪い政策として紹介されることが多い。

不完全競争市場

しかし、最低賃金が導入されることで必ずしも雇用量が減少するとは限らない。

先ほど、最低賃金制度で社会的損失が生まれることを示した章では「完全競争市場」という見出しを付けたが、労働市場には完全競争市場に対して「不完全競争市場」も存在する。労働市場でいう不完全競争市場とは、独占など企業の力が強く一方的に賃金を決められる状況で、コストカットを目的に企業が労働者を生産性よりも低い賃金で雇っている場合を指すことが多い。

さてここで、「不完全競争市場」において最低賃金制度が導入された場合を考えてみる。まず初めに、最低賃金Wm<当初の賃金W₀(不完全競争市場は均衡していないので均衡価格でないことに注意)の場合では完全競争市場と同様にW₀のままで最低賃金制度は意味がない。

一方で、最低賃金Wm>当初の賃金W₀の場合は様子が変わってくる。企業はコストカットのためにわざと賃金を抑えていたが、最低賃金がW₀を上回ると「W₀より高ければ働いてもいい」と思っている人が働くようになる。その結果、雇用量はE₀からEmに増加している。

不完全競争市場下で最低賃金Wmが導入されれば、企業側の利益は減るがその分労働者が増えるので濃い灰色の部分で新たに社会的利益が生じている。そのため、ここでは最低賃金は正当化される。

ただし気を付けなければならないのは、最低賃金がW’mを超えるほど高くなると雇用量はE₀よりも下回ってしまい雇用は減少してしまう。また、最低賃金の価格を設定する政府は市場と違って均衡価格を知っているわけではないので、最低賃金の価格のコントロールには注意が必要である。

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次回の記事では、最低賃金制度は結局良いのか悪いのか私見を述べることにする。

参考文献

N・グレゴリー・マンキュー(2013)『マンキュー経済学 ミクロ編(第3版)』

岩田規久男・飯田泰之(2006)『ゼミナール 経済政策入門』

神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』

明日山陽子(2006)『米国最低賃金をめぐる論争

 

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よもぎおとな研究所 副編集長

投稿者プロフィール

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おとな研究所副編集長、ブロガー
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時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

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