おとな研究所は新しくなりました!

シリーズ 日本の離島に目を向けよう #1 「離島」とはなにか

はじめに

今までこの「おとな研究所」に寄稿していた記事の中では、比較的に新着のニュース解説などを多く取り上げていたが、本日からはシリーズ記事で連載していこうと思う。

テーマは「離島」だ。島国であるこの「日本」という国を語るには、本来語るに外せない分野であるが、なかなか取り上げられることが少ない。政治の分野においても、「地域主義」を掲げる政党であっても公約などに入ることはあまりないだろう。この「日本の離島に目を向けよう」というシリーズでは、多角的に我が国の離島に関するテーマを扱っていきたい。

今日はその第1弾として、「離島」の定義や現況から解説していく。

法律上の「離島」

離島に関する法律は、細則が定められている関連法を除くと三つある。インフラの整備について定めた「離島航路整備法」、離島の振興について定めた「離島振興法」、外海に接する離島の地域社会や保全について定めた「有人離島保全特別措置法」だ。

このうち、「離島」の定義を定めているのは離島航路整備法で、以下のように定義されている。

第二条 この法律において「離島航路」とは、本土(本州、北海道、四国及び九州をいう。)と離島(本土に附属する島をいう。)とを連絡する航路、離島相互間を連絡する航路その他船舶以外には交通機関がない地点間又は船舶以外の交通機関によることが著しく不便である地点間を連絡する航路をいう。(後略)

離島航路整備法 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=327AC1000000226

島国である日本で、離島ではない島は「本州、北海道。四国、九州」のみで、それ以外の島は離島であると定義されている。

<スポンサー>

だが一方、異なる記述をしているものもある。国土交通調査室によって2009年に発行された「離島振興の現況と課題」においては、以下のように記述されている。

我が国の国土は、6,852の島嶼により構成され、このうち本州、北海道、四国、九州と沖縄本島を除いた6,847が離島とされる。

『離島振興の現況と課題』国立国会図書館 https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000557_po_0635.pdf?contentNo=1

本土―沖縄本島間の航路は「離島航路」であるのに、沖縄本島そのものは「離島」ではないという矛盾した解釈もできる。離島という概念は必ずしも一義的に定義されるものではなく、論じる目的によって、何を離島とするかを個別に定義する必要があると考えられる(大石麻子『制度から見た離島におけるインフラ整備事業の位置づけ』2014)。

ここでは、後者の解釈を取る。

離島の現況

先述した「離島振興の現況と課題」と、参考論文を参照した。

我が国の総面積は32.8万㎢で、離島面積は1.6万㎢。国土全体の約4.2%に当たる。このうち、「離島振興法」に規定された政府が特別にその振興の支援の対象とした島は255島で、78の地域、70市31町11村に及ぶ。その総面積は5323㎢で離島全体の3分の1であり、総人口は378,751人にも及ぶ。 (平成31年 国交省) この数字は全国人口の0.3%を占めるものだ。

その人口は1955年から2010年までの50年間で5割以上減少し、高齢者比率は1990年から2010年までに30%以上増加している。

<スポンサー>

また財政力指数は2003年から2009年までを通じて0.2前後だ(全国市町村平均は0.5前後)。

総務省資料

以上のように、我が国に数多く存在する離島は古くから第一次産業の重要な拠点であるにもかかわらず、現代社会においてはインフラ整備の遅れや経済活動上の不利な条件から経済発展や生活向上に相対的な遅れが指摘されている。その状況に対して離島振興法や離島航路整備法などが制定され、基盤整備推進や産業立地促進、交通手段確保などが図られてきたが、その定住条件の維持に強い不安が残っている。

次弾では、具体的な制度やその変遷について解説していきたい。

次弾→シリーズ 日本の離島に目を向けよう #2 離島振興の中身と足取り