地球温暖化に対する政策手段のメリットデメリット 環境税か排出量取引か

近年地球温暖化が世界中で大きな話題となっている中、重要性を増してきているのが温室効果ガスの削減である。削減の手法は様々考えられてきたが、今回はそれらのメリットデメリットを解説し、経済的にどの手法がより優れていると考えられているかを説明しようと思う。

なお、今回の記事では日引・有村(2002)を参考にしている。

ピグー税&ピグー補助金

ミクロ経済学の教科書ではよく「ピグー税」や「ピグー補助金」が紹介される。ここでは政策のメリットデメリットを紹介したいので簡潔に説明すると、ピグー税は温室効果ガスの排出を伴う生産活動に税金をかけることで企業の最適な供給量を減らし排出量を削減する手法で、ピグー補助金は温室効果ガスの排出量削減に補助金をかけることで排出量を削減する手法だ。これは「外部不経済を内部化」する手法で、どちらをとっても社会的な利益を最大化することができる。

ピグー税とピグー補助金はほとんど同じ効果を発揮するが、異なる点もある。まず第一にピグー補助金の場合は財源が必要であるということ、第二に経済学における「長期」においてはピグー補助金のほうが排出量が多くなるということだ。

様々な企業が産業に参入したり撤退したりするが、その際にはピグー税とピグー補助金では違う結論となる。ピグー税は企業の費用を引き上げるので企業の撤退が進む。一方でピグー補助金は企業の費用が相対的に安く、企業の参入が促進される。このため、長期においてはピグー税よりもピグー補助金の方が排出量が多くなってしまう。

ただし、ピグー税を採用する場合は税がなかった場合に操業できた企業の一部が操業できなくなり失業が増えてしまうので、ピグー税で得た財源を再分配に回すなどのポリシーミックスが望ましいと考えられている。

ピグー政策vs排出量規制

さて、まず検討したいのは前述したピグー税&ピグー補助金と排出量そのものを規制する施策のどちらがより望ましいかについて検討する。なお、ここで言う排出量規制は総量規制を忌むすることとする。

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排出量規制はその名の通り、各企業に対し排出量の制限を課すことである。この施策のメリットとしては各企業が割り当てられた排出量を守ることができれば確実に目標の排出削減量を達成できることにある。

ただし、当然ながらデメリットも存在する。そもそも政府が企業に対し排出量の制限を課すためには政府は企業のあらゆる情報を把握しなければならないが、現実的には難しい。その結果市場の生産費用が大きくなってしまうので、社会的利益を最大化することはほぼ不可能だ。また、割り当ての際に交渉力の大きい企業ほど政治家と癒着することで、企業間で排出量規制の格差が生まれる懸念もある。

また、企業がきちんと割り当てられた排出量を守らなければ制度自体が崩壊してしまうので、企業を監視する行政コストがかかってくることになる。

一方でピグー政策は市場メカニズムを利用することで社会的利益を最大化することができる。そのため、ピグー政策と排出量規制ではピグー政策の方が勝っていると言えるだろう。

ただし、一つデメリットを挙げるとするならば、炭素税では削減量を達成するための税率を正確に策定しなければならない。経済事情が絶えず変化する現代においてはかなり難しいだろう。

ピグー政策vs排出量取引

続いて、ピグー政策と排出量取引について検討する。排出量取引は各企業間で定められた排出量を取引できる制度である。日本ではあまりなじみがないが、EUやアメリカでは導入されているところもある。また、排出量取引はピグー政策とは異なり国際的な取引でも拡張しやすい。

排出量取引のメリットとしては排出量規制とは異なり社会的利益が市場メカニズムによって最大化されることにある。しかし、排出量の割り当ての段階で政治的な癒着が起きたり、行政コストがかかってしまうというデメリットは消えていない。前者のデメリットを解消するために最近ではオークション方式で割り当てを行う動きもある。

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一方でピグー政策、特にここ最近世界でも主流の炭素税は当然ながら税金分の目に見える負担が国民に転嫁されてしまうので政治的に実現しづらいというデメリットが存在する。また、排出量取引の場合は目標値から逆算して割り当てれば削減目標を達成できる一方で、前述したように炭素税は削減目標を実現する税率を定めるのは現実的ではない。

ちなみに、ここ最近ではピグー政策(炭素税)と排出量取引のポリシーミックスが世界的な潮流となっているようだ。

排出量取引と炭素税の組み合わせについて より

以上、今回は地球温暖化に対する施策としてピグー政策、排出量規制、排出量取引を挙げそのメリットデメリットを検討した。経済学者の中でも「これがベストだ!」という策は見いだせていないが、現時点ではピグー政策と排出量取引が一歩リードしている。読者の皆さんが最適な地球温暖化対策を考えるきっかけになれば幸いである。

 

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よもぎおとな研究所 副編集長

投稿者プロフィール

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おとな研究所副編集長、ブロガー
Twitterフォロワー数8000人超
時事・教育・経済など幅広い分野に関心あり

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