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市民連合を介した立民・共産・社民・れいわの「共通政策」を徹底解説!

 立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の主要野党4党は、8日、市民連合の仲介のもと、「共通政策」を締結した。この「共通政策」は、市民連合が日本維新の会、NHK党以外の全ての野党に参加を呼び掛けたものであり、国民民主党を除く全野党が参加したものだ。

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福島みずほ社民党党首のツイートより引用

 市民連合側は、今後も国民民主党への参加を呼び掛けるとしているが、国民の榛葉幹事長は8日の幹事長定例会見で、今後も署名をするつもりはないと、不参加を貫く姿勢を明確にした。

 そもそも、市民連合とは、平成27(2015)年に制定された安保法制の廃止を目指す市民団体であり、同じく安保法制の廃止を目指す「立憲野党」と連携を図って活動している。

気になる「共通政策」の内容は?

 共通政策の内容の骨子は、以下の通りである。

1 憲法に基づく政治の回復

2 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化

3 格差と貧困を是正する

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4 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行

5 ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現

6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する

市民連合と立憲野党の政策合意にあたっての声明

 「安保法制を廃止する」ことを謳った団体であるだけに、あくまで「憲法に基づく政治の回復」をトップとして主張する。この他にも、中国の武漢を発祥とし、昨年から流行が続く「新型コロナウイルス対策」に対する政策、「格差と貧困の是正」等が連なる。

 続いて、この中から「憲法に基づく政治の回復」、「格差と貧困を是正する」、「地球環境を守るエネルギー転換」、「権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する」をそれぞれピックアップして、盛り込まれている政策を詳しく解説していきたい。

「憲法に基づく政治の回復」とは何を目指すのか?

 この項目では、「立憲野党」が繰り返し違憲だと主張してきた安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止することや、コロナ禍に乗じた「憲法改悪」に反対することを盛り込んでいる。また、平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行うとしている。

 まず、安保法制については、個別的自衛権についてはともかく、4野党とも集団的自衛権行使が違憲だと言う考えで一致している。したがって、集団的自衛権行使を限定的に容認した安保法制は、廃止すべきという考え方に立っているものである。ただし、参院長野補選の際には無かった、「違憲部分を」という点には留意が必要である。これは、安保法制の完全廃案を警戒した立憲民主党の保守派に配慮して加えられた可能性がある。

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 次に、改憲反対の姿勢は、参院長野補選の際の政策協定と同様明確となっている。さらに、「コロナ禍に乗じた」とある通り、改憲に積極的な自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの保守~中道系政党に対し、コロナ禍が収束しない中での改憲は許さないと牽制する意図があると考えられる。

 平和憲法の精神に基づいた総合的な安全保障手段の追求とは、軍縮を意味していると考えられる。実際に、共産党が、機関紙で「異常な軍拡路線を軍縮の方向に抜本的に転換し、コロナ禍に苦しむ国民の暮らしや営業の支援に回すことが求められます」(しんぶん赤旗令和2年12月23日付)と主張している通り、軍縮を目指すと言うことである。憲法9条を変えることで、現実に合わせた安全保障法制を目指す与党とは異なり、4野党は、軍縮と外交努力によって現実を憲法9条に近づけることを目指すと言う対立軸がある。

経済政策は、「格差と貧困を是正する」ことがメイン!

 市民連合と4野党は、格差と貧困を是正することを経済政策のメインに掲げた。様々な政策があるが、徹底的に社会的弱者に立った政策である。まず、最低賃金の引き上げや、非正規雇用やフリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくすことを掲げた。また、富裕層の負担を強化することで再分配機能を強化し、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充することを掲げている。ここまでは、従来の市民連合の政策にもあった徹底的な弱者救済策である。

 目新しいことは2点ある。ひとつは、消費減税が共通政策の中に盛り込まれた点である。もうひとつは、長野補選まではあった「アベノミクスの経済構造の転換」などのように、暗に金融緩和を否定する文言が消えたという点である。これらは、消費減税に積極的で、かつ、積極財政の手段としての金融緩和に前向きなれいわ新選組に配慮したものと考えられる。

 他方で、中間層を中心とする経済全体をどのように豊かにするか、マクロ経済政策をどうするかについては、言及がなかった。4野党は、まずは、再分配を行うことを経済成長より重視するという立場をとったものと考えられる。

環境政策は「原発無き脱炭素社会を追求」

 環境政策については、自民党との対立軸を明確にした。自民党が、原発への依存度を再度強めつつ火力発電からの脱却を目指す一方で、4野党は、原発も無くし火力発電も無くすという道を目指すことを明らかとした。

 これについては、実現可能性という点から、与党から批判が出ることが想定されるが、市民連合としては、再生可能エネルギーの普及によって原発無き脱炭素社会を目指したいと言う格好である。

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権力の私物化や不透明な行政を徹底的に許さないという立場

 4野党は、森友・加計学園問題、桜を見る会の真相究明を共通政策として掲げた。すなわち、安倍政権で起きたこれらの疑惑への追及を今後も継続していくというスタンスを明確にしている。

 さらに、学術会議の会員を推薦通りに任命することも掲載している。

 モリカケ桜や学術会議の問題は、4野党が最重視してきた問題であり、コロナ禍においても多くの予算委員会の質問時間を割いて、政権への追及を行ってきた。これらの問題での真相究明は、4野党としては譲れない課題であろう。

社会的弱者に寄り添った政治

 市民連合の共通政策は、この他にもジェンダー差別の問題に1つの項目を使うなど、社会的弱者とされる人々に徹底的に寄り添ったものとなっている。したがって、差別や貧困などの当事者からの評判は、良いものになると期待できるだろう。

 また、市民連合を介して共通政策を掲げることで、野党のバラバラ感が、大幅に緩和されることが期待される。少なくとも、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4野党は同じ政策を掲げて団結して戦っていると、有権者に認めてもらえるだろう。自民党政権との対立軸を、これで明確にすることができた。

 市民連合を介した4野党の共闘は、うまく行くのだろうか。今後の展開に目が離せない。

関連記事:「市民連合」とは何か-野党共闘の影で暗躍する組織がもたらすものとは

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