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マクロスさんの論考に対するハンキンの見解ーハンキンが語る日本経済ー (下)

編集部追記:この記事は、サポーターの方による寄稿で、前回の記事の続編です。また、以前投稿されたマクロスさんの記事への反論記事です。

以下本編

4.日本経済及びアメリカ経済が陥った罠ーMMTが出てきた背景

 筆者は、MMTが提唱する経済政策には全面的には賛同していないし金融政策無効論まで主張するMMTerではないことを留意して欲しい。そして、いわゆるリフレ派とMMTと名指しされるグループが提唱する経済政策は9割程度は近いと考えている。

 その上で、筆者としては、MMTが出てきた背景や問題提起は参考にしていきたいと考え方だ

 少し古いが、下記のマネタリーベースとマネーストックの推移のグラフを見てほしい。

 2015年までのグラフで恐縮だが、2012年以降の量的緩和と2013年以降の量的緩和で大きくマネタリーベースを増やしてもマネーストック(マネーサプライ)が増えていない現実がある。

 マネーサプライの数式は以下のように決まる。

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マネタリーベース × 貨幣乗数 = マネーサプライ

 1992年〜93年、東洋経済で岩田規久男上智大学教授と翁邦雄日本銀行日本銀行調査統計局企画調査課長との間で論争が繰り広げられた。岩田さんは、リフレ派の理論的支柱とされる人物である。上述の数式をもとにマネタリーベースを増やせばマネーサプライは増える、と論じた。一方、翁さんは銀行の貸し出しによってマネタリーストサプライの量は決まり、マネタリーベースの量でマネーサプライの量はコントロールはできないとした。主流派経済学では、信用乗数は一定であるとしている。ところが現実、マネタリーベースを増やしてもマネタリーストックが増えていない。この状況をどう考えるべきであろうか?

 この状況について井上智洋さんは「信用創造の罠」と呼んでいる。貸出高が増えない局面が発生しておりマネーストックが増えていないと考えている。そのため、インフレ率変動型ベーシックインカムを主張して、インフレ率に合わせた分の貨幣を直接国民に配当することを提唱している。こうしたベーシックインカムプランに対し、れいわ新選組ではデフレ脱却給付金を政策として支持しており、維新の音喜多駿さんもベーシックインカムプランを提唱している。

 一方、MMTでは、国債=貨幣供給と見なし、国債の発行を通じた貨幣供給こそ必要だと考えている。その背景には、「信用貨幣」論がある。主流派経済学では、家計が民間銀行に預金しその預金を基にお金を貸し出す「又貸し」説を採用する。その場合、家計は最初に預金すべきお金はどこから来たのか?という謎が残る。MMTでは、預金があって貸し出されるという説明ではなく、貸し出しの際に預金が作られる、としている。Aさんが100万円をある銀行に預金としたとして、その銀行が90万円をBさんに貸し出した場合、経済学の教科書ではマネーの総量は100万円ではなく、190万円としている。これが「信用創造」である。MMTでは、貸し出しの際に現金通貨の創造があるとする。貸し出しの度に預金通貨が創造されるということである。「信用貨幣論」ではAさんが100万円を銀行に預けたとして銀行が700万円貸したとしてもありえるし、現実の実務ではそのように運用されている。MMTでは「キーストロークマネー」と呼んでいる。「キーストロークマネー」として国債を発行できるとしており、制約はインフレ率と考えている。

 MMTでは、金融政策無効論を採用する理由は、マネーストックとマネーサプライに相関は乏しく、財政支出でコントロールするべきという考え方だからである。この点について、筆者は、金融恐慌のような信用収縮の局面ではマネタリーベースの増大には効果があること、インフレ率の期待が高まる効果があると考えている。

 もう一つは、労働参加率に関するデータである。

 フィリップスカーブが正しければ、インフレ率と完全失業率が相関する。ところがアメリカで発生していることは労働参加率の低下している現実がある。失業者とは、「仕事がなくて少しも仕事をしなかった者のうち、就業が可能でこれを希望し、かつ仕事を探していた者及び仕事があれば、すぐ就ける状態で過去に行った求職活動の結果を待っている者」と定義される。アメリカで2008年以降生じていることは、インフレ率がプラスの状況でも労働参加率が横ばいないし低下が見られている。下記リンクの4/8のアメリカの労働参加率のグラフを読んでいただきたい。

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https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/sankou_01.pdf

 つまり、労働市場からドロップアウトした人が増えているのだ。もし、インフレ率が上がり、それに応じて需要が増え、人出不足が深刻化すれば、失業率と同時に労働参加率が上昇するはずだが、上昇していない点が一つポイントである。この点についてMMTは問題提起をしている。

 こうした状況がMMTが出てきた背景にあるのではないか?と考えている。少なくとも問題提起については引き続き検討していきたいというのが筆者の立場である。

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5.筆者が望ましいと考える経済政策

 上述の考え方の上で筆者は以下の経済政策を支持している。

・100兆円の給付金・減税を中心とした経済政策。

→コロナが長引く可能性を考慮した場合、追加の200兆円の経済対策を検討する必要はあると考えている。200兆円規模を投入しても筆者の試算では570〜580兆円と程度と悪性インフレが生じる局面とは程遠く、コロナの状況次第では信用収縮など第二波の不況の可能性を考えている。

インフレ率変動型ベーシックインカム

→井上智洋さんが主張し、れいわ新選組ではデフレ脱却給付金、維新の音喜多さんがベーシックインカムプランとし提唱している考え方である。今後、AIやIT化がさらに進んだ場合、生産性が上昇したとしても雇用が減少し、供給力の増加に対する需要の減少というデフレーション圧力が高まると考えている。そうした場合に、例えば、目標インフレ率2%とした場合にその分の給付金をベーシックインカムとしてばらまくという考え方。

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AIがどんどん進歩し、技術的失業が発生してくるとなると、この政策は必要になってくると考えている。

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将来的な電子マネーの導入

https://publicmoneyforum.connpass.com/event/140294/

→れいわ新選組に比較的近いとされる経済政策のブレーン陣が集まって昨年9月公共貨幣フォーラムを開催した。電子マネーの導入や電子マネーなどを通じたベーシックインカムの可能性が検討された。れいわ新選組の大西つねきさんは、マイナンバーと紐付けた口座に対するベーシックインカムには賛成である。この政策、国民民主党の玉木さんや維新の音喜多さんも賛成である。

 マイナンバー制度についてはれいわ内でも議論はあるもののブレーン陣ではベーシックインカムの実施にあたってのマイナンバーの活用には賛成の方も多い。また、れいわ新選組のブレーンの池戸さんも公務員を現業分野(介護・保育)で増やすことには賛成ではあるが、電子マネーやAI、RPAの導入による事務分野の効率化については避けられないと考えている。

景気回復局面での規制緩和(規制緩和は是々非々、それぞれのイシューで検討すべきという立場。)

→デフレ下では規制緩和は反対だが、景気回復局面では有効だと考えている。市場の資源配分機能を高めると考えられ、景気回復局面でこそ供給能力の強化が必要となると考えている。そういう面では賛成である。ただし、僕は、是々非々の立場。

とは言え、特定の企業だけが有利になるような規制緩和ではなく、できる限り公平に市場に参入できる規制緩和が望ましいと考えている。

 上記の論点は今後、詳細に検討したいと思う。政府補償の最低賃金1500円などれいわ新選組の政策もまだまだ荒削りであり、検討する点もあるが、全政党に先駆け大規模な反緊縮を提示したことやマイナンバーの将来的なベーシックインカムでの採用を支持している方もいること、候補者やブレーンの中にはAIやRPAの行政分野での活用について他党に先駆けブレーンを集めていることなど評価できる点は多いと思う。

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 また、筆者は、反緊縮だがれいわ新選組が「社会主義」とは考えていない。安冨歩さんのような特別会計改革・規制緩和に賛成のブレーン・候補者がいることや辻村千尋さんのように経済成長と環境問題の両立の政策の専門家もいる点がその証左である。その意味では非常に、「あたらしい時代」を切り開ける数少ない政党ではないかと考えている。

 筆者は、自民党・公明党・立憲民主党・日本維新の会・国民民主党・共産党・社会民主党・れいわ新選組・N国党に至るまで薔薇マークキャンペーンの経済政策を支持する政治家を応援していきたいと思う。筆者は、比較的、れいわ推しだが、同時に薔薇マークキャンペーンの井上智洋さんの経済政策に賛同している維新の音喜多さんや足立さんも同時に注目しており、国民民主党の動向にも注目している。

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