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国民民主党、分党へー①連合、旧民主、れい新、共産ー

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200811/k10012562791000.html

 秋の衆議院解散が予測されている昨今、国民民主党(以下、国民)と立憲民主党(以下、立憲)の合流交渉は今後の政界再編を占うものとして注目を集めた。国民内でも立憲との合流について意見が分かれており、分党ということになった。国民は、旧民主党の後継政党として100億円程度の資産を保有するとされており、その資産がどう配分されるかも注目される。

 今回は、国民の分党について、連合と旧民主党とれいわ新選組(以下、れい新)、日本共産党(以下、共産党)との関係性という観点からまとめたい。

旧民主党最大の支持母体の「連合」とれい新の微妙な関係性

https://www.fnn.jp/articles/-/6381

 旧民主党は、しばしば労組依存ではないかと言われている。自治労、日教組、自動車総連、UAゼンセンなどの組織内候補が参院選の全国比例区では名を連ね、立憲は2019年の参院選では、獲得した8議席のうち5議席が労組の組織内候補であった。

 実際、旧民主党の最大の支持母体は、日本労働組合総連合会(略称:連合)という労働組合が支持母体であり、組合員数699万人、推定組織率は17%とされる。同じ労働組合の全国組織でも全国労働組合総連合(略称:全労連)は、共産党に近いとされる。全労連は、政党支持・政治活動の自由を標榜している。

 立憲の支持母体は主に官公労や旧国営企業の労組が中心である。公務員の労組からなる自治労や教員の労組からなる日教組、JR総連、日本郵政グループ労組、情報総連、私鉄総連といった旧総評系(旧社会党の支持母体)の労組が立憲民主党の支持母体である。

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 一方、国民の支持母体は民間企業の労組が中心である。自動車総連、電力総連、サービス業や食品加工業、繊維工業、化学工業などの労組からなるUAゼンセン、電機関連産業の労組からなる電機総連が国民民主党の支持母体とされる。旧民社党の支持母体である旧同盟系の組合が、国民の支持母体である。民間企業の労組は、共産党との共闘に否定的である。

 連合の組合の中には、共産党との共闘に反発する労組も多い。化学総連は共産党との強力に反発し連合から2016年に離脱した。1989年に連合が結成される際に、連合と全労連は激しく対立した。歴史的経緯から共産党との共闘については、連合内では否定的な声が根強い。

 旧民主党勢力の支持率が低下している昨今、連合の支持なしでは選挙ができないのが実情ではないかと言われている。電話かけ、ポスター貼り、といったことが支持母体の労組無しでは厳しいのでは?と指摘されている。

 官公庁の労組を主たる支持母体とする立憲民、民間企業の労組を主たる支持母体とする国民。労組依存体質の旧民主党勢力の中に割って入ってきたのが、2019年4月に結党された山本太郎氏率いるれい新である。実際、2019年の参院選の全国比例区では以下のような結果であった。

立憲系の労組の組織内候補:約70万票

国民系の労組の組織内候補:約110万票

れい新:約228万票

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 れい新は、Twitter上では、「現代のカルト」、「話の通じない人の集まり」、「狂信的な支持者の集団」、などなど他政党支持者から揶揄されるほど熱心な支持者が特徴的であり、結党3ヶ月で異例の4億円のカンパを集めた。山本太郎氏の街頭記者会見と称する街頭演説会には、全政党で最大級の観衆を集めている。選挙運動のスタイルとしては、支持者のボランティアとカンパのみで行っている。

 以下のれい新の得票率ランキングを見て欲しい。

(出典は、三春充希(はる) ⭐みらい選挙プロジェクトhttps://note.com/miraisyakai/n/n07237a363319

 れい新の隠れた特徴として、八重山諸島、小笠原諸島、伊豆諸島、屋久島など離島部でも十分選挙戦ができるほどのネットワークがある点である。このランキングは、そのことを示している。れい新は、市民派選挙で旧民主党政権の選挙を地方・都市部問わず戦い抜いたボランティアのネットワークがある。それを十二分に活かしていると言えよう。

 れい新は、「消費税廃止」、「消費税5%」による野党共闘を掲げるが、これには反緊縮のメッセージとセットで、連合に踏み絵を迫る点も指摘される。消費税は、地方財政の主たる財源であるため、官公労は「消費税5%」の公約を呑むことは厳しいとされる。一方、旧同盟系の労組はバラバラである。法人税減税や輸出戻し補助金、租税特別措置の恩恵の大きい自動車総連や電機連合は消費税減税には反対の傾向があるとされ、一方、小売やサービス業等の内需主導型産業の労組は消費税減税には賛成の傾向があるとされる。消費税の税率一つで、旧民主党の支持母体が、自民党以上にバラバラな現実がある。消費税減税・廃止の公約は、連合がまとまれないアキレス腱であり、れい新が主導権を取りに行くための一丁目一番地であろう。

 今年7月に行われた都知事選では、山本太郎氏の得票は65万票に留まったものの、立憲と共産党が支持する宇都宮健児氏の得票は83万票であり、社民党(以下、社民)と共産党と新社会党が応援した2012年、14年の得票数を下回った。国民は、そもそも自主投票となった。都知事選挙では、主要政党で候補者を立てられたのは、れい新、維新、N国だけである。

 れい新の勢いは落ちていると指摘されるとはいえ、依然として、野党内で隠然たる影響力を持っている。山本太郎氏は、100人候補者を立てると怪気炎を上げているが、それによって落選しかねない旧民主勢力の議員も多い。れい新を取るのか、連合を取るのか、という選択を旧民主党勢力は迫られていると考えることもできる。

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今回の分党劇とれい新

 今回の分党劇で、玉木代表は消費税減税を公約にしている。減税研究会を主催する国民の馬淵澄夫氏は都知事選では山本太郎氏の応援に駆けつけた。今回の分党は、立憲民主党最大の支持基盤の官公労や消費税減税に反対する民間労組ではなく、れい新や次回以降特集する日本維新の会を玉木代表らのグループは選んだ、とも解釈することができる。また、共産党との連携に否定的な民間企業労組の多くは、共産党との共闘に反発し、玉木代表の側につくとも予測される。

 れい新は、日本中で選挙可能なネットワークを持つ反面、まだまだ集票能力は弱く、ボランティア選挙で戦うため短期決戦しかできない、という弱点を持つ。一方、国民の労組は、企業城下町や工業地帯では強い反面、全国展開が難しい点が特徴である。

 玉木代表が、れい新と選挙協力をする場合、全国規模で選挙を戦うには第一弾、第二弾、第三弾の仕掛けが必要となってくる。そうした仕掛けをいかに作るかが、玉木代表の腕の見せ所となろう。

おわりに

 今回の玉木代表による分党劇。立憲、れい新、維新、共産、旧民主党の支持母体の連合、との複雑な力関係が渦巻いている。野党再編の主導権もあり混沌としている。次回は、維新と国民民主党との共闘の可能性について特集する。

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