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シリーズ 日本の離島に目を向けよう #4 南西諸島防衛の現状と課題

シリーズ 日本の離島に目を向けよう #4 南西諸島防衛の現状と課題

今回はシリーズ「日本の離島に目を向けよう」で記事をお送りしていくが、今までの内容とは打って変わって、「防衛」の観点から解説をしていく。

相次ぐ”危機”

「島嶼防衛」「離島防衛」と聞いて思い浮かぶのは、やはり尖閣諸島だろう。事実として、昨日7月20日までに中国公船が98日連続で尖閣諸島の接続水域に侵入している。新型コロナウイルスの国内における感染が広がりを見せた4月14日に始まった今回の連続侵入では、中国公船のべ365隻が接続水域に、のべ32隻が領海に侵入している。既成事実を積み上げて現状変更を狙う中国政府の暴挙は、我が国に対する明確な主権の侵害だ。

参考記事: https://www.jiji.com/sp/article?k=2020072000837&g=pol

先週の今日発表された「令和二年防衛白書」は、中国政府のこうした挑発的な態度を念頭に様々な島嶼防衛に対する考え方が盛り込まれている。そもそも防衛白書とは、日本の防衛政策について広く国民が理解し、その実態を確認するために防衛省が毎年刊行している一次資料だ。

この内容についても、中国は反発している。

参考:防衛白書に中国反発「でっちあげ」 “歴史カード”も持ち出す

https://www.sankei.com/world/news/200714/wor2007140026-n1.html

しかし、当然ながらこれも内政干渉に他ならない。しかしだからこそ私たち国民は、防衛省自衛隊が行っている我が国の主権を守る大切な仕事をしっかりと理解することが重要なのだと思う。

島嶼防衛に対する考え方

既に以前の記事で紹介しているように、我が国には255の離島を含む多くの島嶼が存在する。当然これらの島々に対する攻撃への対応には平素から部隊の配置・警戒監視が必要である。さらにこれを能率的に行うため、海上優勢・航空優勢の獲得、維持が行われている。また敵に先んじて攻撃が予想される地域に舞台を機動的に展開し接近上陸を阻止する方策や、万が一占拠された場合の制圧・奪回に関する想定もなされている。

防衛白書で特に取り上げられている南西諸島を軸に説明していこう。

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島嶼への部隊配置については、航空自衛隊による2016年の第9航空団の新編に加え、2017年には南西航空方面隊の新編が行われた。陸上自衛隊は2016年に与那国沿岸監視隊の新編が行われたが、2018年には画期的な舞台が新編される。「水陸機動団」だ。いわゆる「水陸両用車」を擁する部隊である。

これは、万が一占領された際、速やかに制圧・奪回をするための水陸両用作戦部隊で、飛行甲板の塗装をジェット噴気に耐える耐熱塗装とし、その先端を少し上に反らした「スキージャンプ」に改装し、垂直離着陸機が短距離を滑走して発艦できるようにし兵装の搭載力を増すようにすれば、対空、対艦、対地攻撃力を持つ小型空母としての側面もある。

「水陸機動団」への批判

この部隊が新設されたことの意義は大きいが、一方で批判も相次いだ。


自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由

https://diamond.jp/articles/-/166765?display=b

島を奪われることを前提にする日本の論外な防衛戦略

https://news.livedoor.com/article/detail/14566437/

批判の主な理由は、この部隊の新設が「島嶼奪回」を前提にしていることで、島嶼防衛の抑止力たり得ない、という内容である。確かに平成29年の防衛白書には以下のような記述がある。

「平成29年度末に新編される水陸機動団は、万が一島嶼を占拠された場合、速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦を行うことを主な任務とする陸自が初めて保有する本格的な水陸両用作戦部隊です。(中略)水陸機動団が新編されることにより、島嶼防衛に関する能力向上が図られ、わが国の抑止力が向上します」

一の記事でも指摘されているように、制海権や制空権の確保を前提としなければバランスがとれない、という批判もまたまっとうだ。

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「奪回」だけではない「防衛」

もちろんこれらの対策が行われていないわけではない。2020年中に警戒航空隊を警戒航空団として格上げするほか、年度内に臨時滞空型無人機航空隊の新編も予定されている。常時監視体制の強化だ。

また、新要素の研究もおこなわれている。2019年に行われた日本が研究や開発を進める最新の防衛装備や技術などについて展示する「防衛装備庁技術シンポジウム」で大きな注目を集めたのが、将来的に陸上自衛隊への配備が予定されている新装備「島しょ防衛用高速滑空弾」だ。

離島というのは根本的な距離に加え、面積も広くないことから陸間の遠隔攻撃は味方にもリスクであるという難点があった。その答え「離島間の射撃が可能な射程を持ち、安全な距離から敵をピンポイントで確実に攻撃できる装備」として開発が行われているのである。

「高高度を超音速、かつある程度機動しながら飛翔するため迎撃が困難」な点や、「離島で発生した事態に素早く対応できる」ことも評価されており、将来的には移動する敵や日本本土からの攻撃も可能になるといわれている。

参考記事: https://trafficnews.jp/post/91596

どのほかにも輸送船の改修や水陸両用作戦によるオスプレイの配備など、多方面から防衛拡充・能力強化が行われている。

これらの南西方面の防衛は、今後も大きな課題となっていくだろう。実際の現場で活躍されている自衛官の方に心からの敬意を表するとともに、我が国が直面している問題にしっかりとした理解を深めていきたい。

(画像や資料は、防衛白書 該当章節…https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2020/pdf/R02030102.pdfより)

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