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【政治家インタビュー#2】中谷一馬議員に聞く!後編

前回の記事の続きです。

カジノに反対する理由

横浜市の市長である林文子氏はカジノを含む統合型リゾート(IR)を横浜市へ誘致しようとしています。横浜市の選挙区から立候補している中谷議員はこのカジノ誘致に対しどのような見解なのか伺いました。

まず、中谷議員は林文子市長の態度を批判しました。林市長は2017年の7月の市長選を前にカジノ誘致は「白紙状態」であると宣言し、選挙での争点化を避けました。また、議会でも「白紙から態度を決める場合は市民の声を聞く」と発言していました。

しかし2019年の国会でカジノ管理委員会が設置された影響もあったのか、同年7月に突如横浜市へ誘致したい意向を表明しました。

中谷銀はこの林市長の態度をめぐり、「平然とうそをついたことに対して心底から軽蔑をするし、一横浜市民としては、横浜市民の意見を露骨に無視をしたことに対して怒りを禁じえない」と批判していました。

数々の全国世論調査や市民意向調査でも多くの人が反対していることを挙げ、「林市長は横浜市民に対して十分な説明責任を果たさぬまま、カジノ誘致を強行しようとしており、不誠実極まりないもの」とも言っていました。

中谷議員は、カジノの経済的影響を5つに分類しています。

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まず一つ目に土地造成や施設建設、資材の生産・運搬などに関わる事業者に対する「建設事業の波及効果」、二つ目にカジノを行う顧客を集客し消費を促す「目的地効果」を挙げています。中谷議員によれば政府や事業者の資料はこの二つしか記載されていないといいます。

そして、問題なのは次の三つの経済効果であると中谷議員は言います。

カジノの経済的影響の三つ目は、地域外のギャンブル場を利用していた住民が地域内のギャンブル場を利用することによる所得流出の阻止による「再獲得効果」だが、今回のカジノ法認められた民設民営のカジノで運営者が海外の事業者だった場合は海外に巨額の資金が流出することになります。

また、カジノ法ではカジノの粗利益のうち70%が事業者の利益となり、残りの30%は国と自治体が山分けすることになります。仮に立地自治体で年間1200億円の税収を獲得しようとしたら、8000億円の利益が必要となり、その内の5600億円は事業者に納めなくてはならなくなります。

また、その利益がどこから出てくるのかも問題です。政投銀が行った「訪日外国人旅行客の意向調査」日本のIRでカジノを利用してみたいと回答した外国人観光客は、なんと全体の9%。これはIRの中で利用してみたい施設として、最も低い順位にランクインしています。訪日外国人観光客は日本においてIRに足を運ぶなら、カジノ以外で楽しみたいと思っているのが”明らか”だということがわかります。

また、韓国で唯一国内人がカジノに入れるIR施設「江原ランド」では98.7%以上の客が国内の韓国人で、こうした数値を見れば日本のIRのほとんどは日本人が顧客になると考えられます。

そのため中谷議員は、日本人がギャンブルで負けた多額の資金が外資系企業に流れる構図が出来上がってしまうと警鐘を鳴らしています。

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カジノの経済的影響の四つ目は、地域内の住民のカジノ支出の増大の結果、地域内の他の経済活動や消費に対する支出が減少することによる「代替効果」です。中谷議員はこれを「共食い」と称しています。

実際にネバダ州のストリップ地区では2018年に6兆9000億円のお金がカジノで利用され、90%の6兆2100億円は利用者に還元され、10%の6900億円を事業者が粗利益として徴収しました。この6900億円はよくよく考えてみると、ギャンブルでお金を失った人たちが他の場所で購買する予定だった消費を奪っていることを意味します。

つまり、本来地場産業で消費されるはずだったお金がカジノに吸い上げられてしまうと中谷議員は主張しています。

そしてカジノの経済的影響の五つ目はカジノ誘致でもたらされる「負の経済効果」。中谷議員は「市の税収が増えるという効果は最も裏切られる効果になる」と言います。

韓国「射幸産業統合監視委員会」の研究によれば2014年の韓国全体でのギャンブル産業の売上高が19.8兆ウォン(約1兆9800億円)であるのに対し、ギャンブル依存症による負債の利子費用、仕事の生産性低下・失業、医療、犯罪被害、警察関連、自殺関連などの社会的費用(ソーシャルコスト)は、78兆ウォン(約7兆8000円)に上るとされており、差し引き約60兆ウォン(約6兆円)の負の経済効果が発生しているとの結果が公表されています。

こうしたソーシャルコストが増えることで、税収が増えるどころか国民の負担が増えてしまうと中谷議員は言います。

中谷議員自身、賭博・ギャンブルのせいで苦しんだ人々や家族を身近で見てきた経験があり、賭博やギャンブルには否定的な考えだそうです。その中でもカジノは射幸心をあおるという点からも、パチンコの比ではないと言います。

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また、中谷議員個人としては日本全体としてカジノ自体が必要ない考えなのかを尋ねると、「ビジネスモデルがいらない」「公設で古く、大きなハコモノになるだけなので、もっとできる観光産業があるでしょう」と答えていました。

中谷議員は「綺麗ごとばかりを発信するのではなく、定量的なメリット、デメリットを検証し、それらの対策を踏まえたしっかりとした議論を行うべき」と語っていました。

反対ばかりの野党という声についてどう思うか?

よく立憲民主党などの野党は「対案を出さず反対ばかり」と言われますが、それについてどう思うかお伺いしました。

中谷議員は、「野党は反対ばかり」という意見に対し、「客観的な事実ではない」としています。

2017年11月に開会された第195回国会から2020年6月に閉会された第201回国会では、立憲民主党会派は政府提出法案の83.1%に賛成しています。

そのため中谷議員は「データから見ても明らかな通り、私たち立憲民主党は、ライバルである政権与党の提案であるから何でも反対をしているわけではありません」と語っていました。

そして、逆に16.9%の法律案に反対するのは必ず理由があり、「何かしらの問題があるから侃侃諤諤の議論を与野党で行っているのだなと客観的な目で注目してほしい」と述べていました。

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また、野党議員のみで提出した法律案は269本あり、そのうち与党が議決に応じた数はわずか7本。中谷議員は「野党が対案を出しても政権与党が審議を蔑ろにしているというのがデータから導き出される正しい見解」と話しています。

憲法改正に対するスタンス

中谷議員はまず、憲法の本質的役割は「社会」(=世の中)の統治機構と「個人」(=自分らしく生きる一人ひとり)の人権保障を定めた規範だとし、人権享有主体である国民が国家権力を統制する規範として憲法が存在するとの認識を示しました。

そのうえで、現行憲法は「憲法の趣旨という不文律によって自己を抑制することが全くできない安倍政権ほど非立憲的な政権を予定されておらず、予想外に脆弱を露呈している」と述べ、自民党の解釈変更などを批判しました。

中谷議員は「自民党の改憲四項目は全体を貫く大きな構想がなく、国民の目に映るのも改憲のための落としどころをさぐる政局調整だけ」とも語っていました。

憲法九条については「もう戦争には訴えません」という理解で、単純な護憲派と改憲派の議論よりも統制的理念と構成的理念(暫定的な政策手段)を議論する必要があると述べていました。

そして、国民投票法でCM規制が盛り込まれなければ金に物を言わせて権力者にとって都合のよい憲法改正が行われる恐れがあり、現政権下で憲法の議論をすることは立憲主義の破壊につながると批判していました。

経済対策

立憲民主党の経済対策についても伺いました。

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中谷議員は党内での議論ではそれぞれの思いがあり、最終的に政調会長が取りまとめることになると前置きしつつも、中谷議員としては、短期的に消費税減税・財政出動、中期的に第四次産業革命の支援、長期的に子供を産み育てる費用を無料化と少子化対策の抜本的な対策をするという意見でした。

また、コロナ禍ではお金を稼ごうと思っても稼ぐことが難しく、GoToをすれば感染拡大してしまうため、今やるべきことはとにかく国民全員が定期的に検査を受けて、国内で感染がなくなってきた後に経済を回した方が結果的に近道で安上がりだという考えを示していました。

今年5月の緊急事態宣言に対しては、検査数が伸びずコロナでない人まで隔離して経済活動を止めてしまったので、やらないよりは良かったものの経済と感染対策が中途半端になってしまったと語っていました。

ご多忙な中谷議員が私たちのために時間を割いてくださったことには感謝しかありません。ご丁寧にお答えいただき誠にありがとうございました!