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【編集部】投票日まであとわずか 参院選公約を徹底解説!「立憲・国民」

令和4(2022)年6月22日に第26回参議院議員選挙が公示されました。

おとな研究所編集部では、各党の政策比較をシリーズとしていますが、今回は立憲民主党と国民民主党の政策を比較していきます。

コンセプト

立憲民主党は、『生活安全保障~もっといい未来~』をコンセプトに政策を発表しました。「生活安全保障」とは、国家の平和や経済、雇用あるいはデジタルといった「安全保障」を、生活の目線で見つめ直したもので、物価高や国際情勢の変化を受けて採用された言葉です。

このコンセプトは、立憲民主党の代表が枝野幸男氏から泉健太氏に変わってから作成されたもので、昨年秋に行われた衆院選で掲げた『変えよう~あなたのための政治へ~』とはコンセプトが大きく変更されています。

一方で国民民主党は、『給料を上げる。国を守る。~「対決より解決」で日本を動かす~』をコンセプトにしています。これは、昨年秋の衆院選で掲げた『動け、日本。~停滞するこの国を動かすため 私たちは「対決より解決」を選ぶ~』とは方向性が大きく変わっておらず、「動け、日本」がサブタイトルのような扱いになりました。

そして、新たに追加されたのが「国を守る」という文言です。この文言は、ウクライナ戦争や物価高、電力不足などを受けて採用されたということです。

それぞれの大きな柱

立憲民主党は、参院選公約で3つの柱を掲げています。1つ目は「物価高と戦う(暮らしを守る)」、2つ目は「教育の無償化(学びの保障)、そして3つ目は「着実な安全保障(対話による平和)」となっており、昨年衆院選で掲げた7つの柱よりもコンパクトな内容になっています。

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一方で国民民主党は5つの柱を掲げており、1つ目が『「給料が上がる経済」を実現』、2つ目が『「積極財政」に転換』、3つ目が『「人づくり」こそ国づくり』、4つ目が『自分の国は「自分で守る」』、そして最後に『「正直な政治」をつらぬく』としています。この5つは順番が前後しているものの、内容は変化していません。

それでは、それぞれの分野の政策を見ていきます。

経済

立憲民主党は、現在の物価高を抑えるため、アベノミクスから脱却するとしています。そのため、アベノミクスの大きな柱である「異次元の金融緩和」を見直すと主張しています。そして、一時的に消費税を5%まで引き下げたり、小麦の価格を引き下げたりすることで物価高を抑えるとしています。また、昨年衆院選で国民民主党が訴えていたトリガー条項の凍結解除も公約として採用しています。

併せて、中小企業支援をしつつ将来的に時給を1500円まで上げることや、低所得者における年金の上乗せ、家賃補助なども訴えています。

一方で国民民主党は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」を維持し、積極財政に転換するべきであるとしています。そして、物価高に対応するために国民一律10万円の「インフレ手当」と、賃金上昇率が物価+2%に達するまでの消費減税、また、昨年秋の衆院選から訴え続けているトリガー条項の凍結解除を公約にしています。

併せて、中小企業支援をしつつ、早期に時給を1150円まで上げることや、後で触れる「人への投資」と、デジタル化およびカーボンニュートラルへの投資により経済を好転させることも訴えています。

子育て・教育

立憲民主党は、教育の無償化を訴えています。その内容は、義務教育における公立小中学校の給食費無償化と、高校の授業料無償化の所得制限の撤廃です。そして、大学については、国立大学の授業料無償化と私立大学の授業料減額をし、奨学金を拡充します。そのために、教育国債を創設することによる、教育・科学技術予算の倍増することを主張しています。

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また、併せて子ども手当ての延長と所得制限撤廃をし、1万5000まで引き上げます。また、教育予算の倍増と、子どもの問題を第三者機関が調査する「子どもコミッショナー」、そして、教職員の待遇改善の実現を訴えています。

そして、国民民主党も教育の無償化を訴えています。学校給食や教材費、塾代等の無償化をし、高校無償化の所得制限を撤廃します。そして、大学や大学院は授業料の減免をし、給付型奨学金を中所得世帯まで拡充するとしています。そのために、教育国債を創設し、教育・科学技術予算を倍増することを主張しています。

また、併せて子ども手当ての延長と所得制限撤廃をし、子ども手当てを1万5000円まで増額することと、3歳からの義務教育、インクルーシブ教育や「生理の貧困」の改善の実現を訴えています。

安全保障

立憲民主党は、日米同盟を基軸とした防衛体制を構築し、宇宙やサイバー、電磁波などにおける領域を強化します。そして、尖閣諸島の領土問題を念頭に、「領海警備・海上保安体制強化法」を制定したり、台湾有事を回避するために、QUADやASEANを含めた安全保障に関する国際会議体設立したりすることを目指します。

また、防衛費の増額については総額ありきではなく、メリハリのある防衛予算で防衛力工場を図るとしています。

一方で国民民主党は、日米同盟を基軸としつつ、自立的な安全保障体制を目指します。そのために、自衛のための反撃能力と、宇宙やサイバー、電磁波の領域を強化し、原子力潜水艦の導入も検討します。また、海上保安庁に領海警備任務を加える法改正と、自衛隊に情報収集や警戒監視活動を明記する法改正を目指します。それに併せて、食糧安全保障などの分野の強化にも力を入れるとしています。

そして、防衛費については、GDPの2%程度まで増額します。

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核共有は、両党とも明確に反対しています。

憲法

立憲民主党は、現行憲法の基本理念と立憲主義に基づき「論憲」するとしています。

内閣による衆議院解散の制約や、臨時国会召集の期限を明記するなどの政府の権限を制約する分野については議論を深める一方で、憲法に自衛隊の存在を書き込む9条の改正や緊急事態条項の創設については明確に反対しています。

国民民主党は、憲法改正に向けた論点整理を取りまとめ、内容を公表しました。

デジタル時代の意思決定を保障するデータ基本権や、緊急事態条項の創設を主張しています。また、憲法9条については、自衛隊を明記せず、実力組織の存在を制定し、自衛権の範囲について書き込むべきであるとしています。

そして、立憲民主党と同様に、政府による衆議院解散の制限と臨時国会の召集期限を定めることを主張しているのに加え、憲法裁判所の設置を検討するとしています。

エネルギー

立憲民主党は、技術革新に過度に依存せず、既存の再エネシステムを利用して温室効果ガス削減を進めます。原子力発電については、実効性ある避難計画と地元合意がないままの再稼働は認められないとしています。また、ソーラーシェアリングを推進するため、税制上の措置を導入すると主張しています。

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一方で国民民主党は、原子力規制委員会によって安全性が確認された原発は早期に再稼働をするべきとしています。また、それに併せて原発への攻撃を想定し、自衛隊のミサイル迎撃態勢や部隊配備を可能とする法整備を目指します。また、2030年には電源比率で再エネが40%になるよう、分散型エネルギー社会の実現を主張しています。

行政改革

立憲民主党は、法律改正・廃案を国民が発議できるイニシアティブ制度の導入、18歳までの被選挙権引き下げ、選挙におけるクォーター制の導入を掲げています。そして、インターネット投票の導入と立候補休暇制度を創設し、民主主義を活性化させます。

一方で国民民主党は、比例復活の在り方を含めて選挙制度の改革を検討します。そして、被選挙権年齢を最大18歳まで引き下げること、立候補から議会活動をするにあたり、ベビーシッター代支援などのメニューを自由に選べる「カフェテリア方式」を導入し、民主主義を活性化します。

また、最近問題となっている、調査広報研究滞在費(旧文書通信交通滞在費)については、両党とも日割り支給とし、使途公開をするべきとうことを主張しています。