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【編集部】投票日まであとわずか 参院選公約を徹底解説!「日本維新の会」

今月22日に公示され、来月10日に投開票が実施される参院選選挙は自公政権による過半数維持はほぼ確定した情勢となりつつある。故に従来であれば、無風選挙である構図だが、今回は野党同士で熾烈な戦いが繰り広げられている。

社会党から民主党から続く組合系の左派政党である立憲民主党が野党第一党の座を維持できるのか、変わって前回の衆院選で躍進した新興勢力である日本維新の会が野党第一党の座を奪い、55年体制から続く政界の常識を打ち破るのか。その闘いの第一ラウンドとも言われているこの参院選、有権者の投票行動に影響する各党のマニフェストを今回おとな研究所で分析する。

今回は日本維新の会のマニフェストを分析する。

全体構成

「改革。そして、成長」と題された今回の参院選マニフェストの構成は従来通り「維新八策」と呼ばれる8本柱からなるが、この八策は更に<新しい政治行政>・<新しい外交安保>・<新しい経済社会>・<新しい国のかたち>の4項目に分類されている。この分類の狙いとして、提案型野党との側面を示しつつも、すべての政策分野において自公政権に対峙する政策メニューを整え、政権担当能力を示す事を目指したマニフェストとなった。

新しい政治行政

新しい政治行政は維新八策のうち、1番「政治・国会改革」と2番「統治機構改革」をカバーする。内容としては維新の党是である「身を切る改革」や道州制の推進が書き込まれており、文通費の使途公開をはじめとするいわゆる議員特権の是正をアピールしつつ、維新が目指す地方分権型の社会ビジョンを提示する内容となってる。

新しい外交安保

続く「新しい外交安保」は維新八策の3番目「ウクライナ危機と日本の安全保障」を指す。方針としてリアリズム外交の徹底と外交安保の抜本的な強化を掲げる。防衛費1%枠の撤廃や戦略的な反撃を可能にする「積極的防衛能力」の整備など、自民党よりも更にタカ派色を全面に出した内容となっている。

新しい経済社会

「新しい経済社会」は維新八策の4番・5番に該当し、それぞれ短期の景気対策、長期の経済構造改革を提示している。短期の景気政策では物価上昇を背景に、維新が提出した「国民負担軽減法案」の内容に沿い、消費税軽減税率の引き下げやガソリン暫定税率の撤廃、中小企業向けの法人減税・社会保険料減免と低所得者に対する社会保険料減免を柱としたコストプッシュインフレ対策を主張している。

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更に、経済活動の足かせとなっているコロナの2類指定を5類相当へ引き下げる事も主張している。続く経済構造改革では前回の衆議院選挙から引き続き、「日本大改革プラン」の推進が掲げられている。

このプランは労働市場・社会保障及び税制の三位一体改革を推進する事で日本経済の成長を促す構造改革だ。具体的には所得などのフローに対する税の引き下げと同時に資産に対するストック課税の強化をはかる事や、年金や生活保護を始めとする様々な社会保障をベーシックインカムに統一すると同時に金銭解雇を容認する事で雇用の柔軟性と社会保障の安全性を両立する「フレキシキュリティ」型社会を実現する事を掲げている。

新しい国のかたち

維新八策の6から8番は「新しい国のかたち」と題され、日本維新の会が目指す社会像を示している。6番は教育と子育てへの投資、そして多様性を尊重する政策の推進が掲げらられている。具体的には教育と出産の無償化、選択的夫婦別姓制度の実現、そして同性婚の法制化などが掲げられている。

7番では国家危機管理の一環として温暖化対策を経済成長のエンジンとする事や感染症に対する危機管理体制の構築を掲げている。そして8番では維新が掲げている憲法改正項目が提示されてり、教育無償化・統治機構改革・憲法裁判所の設置・自衛隊の明記・緊急事態条項の創設を憲法改正によって実現する事が掲げられている。

改革政党ブランドを堅持、政権担当を示す

今回の維新マニフェストは従来から維新が主張している身を切る改革、地方分権や教育無償化などに加えマクロ経済政策や社会政策、外交安全保障政策に関する記述や政策が大幅に増加した。これは、維新のルーツである「大阪発の改革政党」のブランドは残しつつ、野党第一党、そして政権交代を目指せる包括的な政策パーッケージを持つ政党をアピールする内容となっている。

更に、多様な社会を容認するリベラルな社会政策と、従来右派的政策と捉えられる憲法改正を維新が目指す「新しい国のかたち」の含める事は現実的かつ中道路線な維新の政策体系を象徴する項目であり、党の柔軟性をアピールに繋がる事を期待しているのかもしれない。

従来の保守・リベラルの対立軸上で同一政党が掲げる事が考えにくかった政策を同じ公約に含める事で従来自民に投票していた保守層から左派野党に投票していたリベラル層すべてにアピールする内容になっている。

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参院選挙で比例野党第一党を目指す野心がある日本維新の会だが、このマニフェストを通じて幅広い層に浸透するかが今後の成長を左右する事になるだろう。