アイドルと歌詞とセクシズム 第3回

 第1回では、日本のアイドル業界で生産された、規範に則った有害とも言える歌詞を取り上げ、第2回では対照的なK-POPにおける女性解放的な歌詞を取り上げた。第3回となる本記事では、そのような変革が日本においても可能なのか模索する。

日本に現れる新たなアイドル像

 第2回で解説したような、ジェンダー規範から解き放たれたアイドル像を今後日本で見ることは可能なのだろうか。昨今の日本のアイドル事情の変化について見ていく。

実力主義

 平成に入ってから、日本のアイドルはルックス・愛嬌が重視され、実力主義でのデビューや人気上昇はあまり見られなかった。AKB48が「会いに行けるアイドル」という価値を生み出したのち、日本のアイドルといえば距離の近いライブや、直接話すことができる握手会が主な活動になった。よって、ビジュアルの美麗さや、コミュニケーション能力の高さ、ファンをどれほど思っているか、などが「アイドル」として重要視される要素になったのだ。

 しかしながら、この規範から逸脱するような流れが日本でも生まれている。それはオーディション番組の流行である。例えば、韓国大手事務所JYPと協力して行われた「Nizi Project」である。これはグローバルアイドルを見つけることを目的としたサバイバルオーディション型の番組で、最終的に9人のメンバーが選ばれ「NiziU」が結成されたことは記憶に新しいだろう。その後もサバイバルオーディション番組は日本国内でも何回か放送されており、「PRIKIL」などが結成された。

 このようなコンテンツに日本人が本格的に参画したのは、2018年に放送されたPRODUCE 48である。AKB48グループからもメンバーが参加し、最終的には宮脇咲良・矢吹奈子・本田仁美の3名がデビューした。彼女らを目的に番組を視聴していたファンは、日本のアイドル価値観とは異なる実力主義のオーディションに衝撃を受けることとなった。

 グループ活動終了後も、宮脇は韓国に残り活動を続け、2人も帰国後圧倒的なスキルを見せるなど、日本のアイドルの歌唱力・ダンス力の重要性を刺激する出来事となった。

 このような影響を受け、日本でもパフォーマンス力を重視した「アーティスト」と形容すべきアイドルグループが生まれるかもしれない。

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音楽スタイル

 日本のアイドルの音楽スタイルは典型的なJ-POPであり、海外のロックやカントリースタイルから派生した、メロディを重視する曲調が多い。アイドルソングやアニメソングなど、独自の曲調を有しているJ-POP である。

 しかし最近ではヒップホップの要素を強めた曲調や、日本語ではあまり用いられないラップの要素を曲に取り入れるなど、K-POPやグローバルな動向を意識した曲作りがなされるようになってきている。

エンパワーメント

 また、日本の女性アイドルが発するメッセージも時代と共に変化してきている。第1回で述べたような、甘えて媚びるような男性中心的な歌詞から着実に脱却しているのだ。ジェンダー規範から離れ、人々をエンパワーするような歌詞がある曲をいくつか紹介する。

エンパワーされる歌詞3選

Be selfish / =LOVE

君のままで生きてほしい

君のパレット

好きな色だけで

私のまま、我がままなだけ

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邪魔はさせない

Be selfish / =LOVE

 まず紹介するのは、=LOVEの最新曲「Be selfish」だ。=LOVEは元HKT48の指原莉乃氏がプロデュースしたアイドルグループだが、ありのままの自分自身を肯定する言葉が溢れた歌詞は、若い女性である指原氏が作詞したからこそ多くの女性の共感を呼ぶものになっているのではないか。

性別なんてさ

必要じゃないんだし

誰を想ってても

恋をしてても、

してなくても

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君は君だよ!

Be selfish / =LOVE

という歌詞もまた、恋愛、特に異性愛を強要されがちな社会において、多くの人を勇気づけるメッセージになった。

タチアガール / アンジュルム

夢 だけじゃ生きられない

恋愛だけがすべてじゃない Oh Yeah!

自慢したいMy人生 HAPPYへGO!

タチアガール

タチアガール / アンジュルム

 ハロー!プロジェクトのグループ、アンジュルム(旧スマイレージ)が2011年に発表した曲である。「僕」人称で恋愛について歌う曲が多数を占める日本のアイドルソング界隈で、恋愛を第一に置かずに自分の人生を大切にするメッセージを打ち出したこの曲は際立っている。

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Mascara / XG

I’ll never let another boy ruin my mascara
もう誰にも私のマスカラを汚させない

This my party, I can cry when I want to, cry when I want to
これは私のパーティだから 私が泣きたい時に泣くから

Mascara / XG

 この曲はK-POP産業から生まれた曲なのだが、驚くべきにXGは全員が日本人のグループなのである。日本人が異国に渡って研修を積み、世界に目を向けたガールズグループとしてデビューしたことにエンパワーされる女性も多いのではないだろうか。

 女の子が傷ついた女の子を慰め、励まし、強い意志と気持ちを広げていくという歌詞は、ザ・ガールクラッシュであり、社会で生きる女性の背中を押してくれる。

アイドルから受け取るメッセージ

 本記事では、日本における女性アイドルグループの展望について述べた。人々を元気にする存在のアイドルが、女性を含む全ての人をエンパワーするような歌詞やメッセージを発信するようになることで、社会を生き抜く私たちの日々に輝きが加わるだろう。

 もはや生活に根付くようになったアイドル文化、推し文化が、より包括的でポジティブなものになる未来を予想している。

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Alice編集部員

投稿者プロフィール

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おとな研究所 編集部員
ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。

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