【編集部記事】乙武洋匡氏と考える「ダイバーシティー」~意見交換で見えたもの~(後編)

参院選に出馬される予定の乙武洋匡さんと、渋谷区議会議員の橋本ゆきさんとの、ダイバーシティに関する意見交換会の様子を取材してきました。今回はその後編です。

前編はコチラ

▲ダイバーシティーについての意見交換会の様子

バッシングカルチャーがもたらすもの

橋本区議:日本はバッシングカルチャーが凄いじゃないですか。それがダイバーシティ社会の実現を阻んでいるなというところがあって、もしよくわからないでそういうことを言ったら、それが凄く失礼だと、勉強不足だとバッシングされるっていう社会に今なっていて、それがそんなこと言われるんだったら、ハナから触れなきゃよかったと思うじゃないですか。

本当はいろいろダイバーシティ、セクシャルマイノリティの方と対話したいし、私はこういうふうに支援をしたいと思っていると言いたいし、障がいを持っている方にも言いたいしと思うけど、自分の経験不足とか、認識不足もあって、もし的外れだったら、逆に凄く失礼と言われるんじゃないかという分断が起きつつあるのかなと正直思うんですよね。

色々な人がSNSで発言権を持って、自分で意見を発信できるようになって、いろいろボーダーレスになっているはずなのに、逆にそれがバッシングカルチャーによって、逆にもっと分断しているように思うんですけど、どうですかね。

乙武さん:めちゃくちゃ同感するんですよ。というのはね、僕が6年前に死ぬほど叩かれたじゃないですか。それで、一切メディアの仕事をしなくなって、2年くらいずっと仕事をせずに1年目は家にいて、2年目は海外を放浪してということをしていたんです。僕はその時ちょっと、チャンスだぞと思っていました。

どういうことかというと、五体不満足という本を出したのが20余年前。そこから20年近く障がいのある人で、日ごろからテレビに出て、意見を言う人って乙武さんしか出てこなかったんですよ。それは本当に不健全だと思っていて、もっといろんな人が出てきたらいいなと思っていたんですけど、なかなか出てこなかったという現状があった。僕がいったん社会的な死を迎えたので、チャンスだと思ったんですよ。

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つまり、僕の2か月前にベッキーさんがやらかして、ベッキーさんがいったんテレビに出られなくなったときに、代わりにホラン千秋さんが出てきたり、トリンドル玲奈さんが出てきたり、グッといわゆるハーフタレントと言われる方がより頭角を現し始めたというように、僕自身がいなくなったことで、いわゆる障がい者タレントなるものが出てきたらいいなと思っていたんです。

ところが2年たっても、出てこなかった。乙武しかいないってものすごく不健全だと思っているけど、乙武すらいないはもっと不健全だと思ったので、不本意ながらまたノコノコと出てきました。

ある時、仲いいテレビ局員にちょっと愚痴をこぼしたんです。「なんで俺が死んでいた時に、だれか育ててくれなかったの」、「喋れる人いっぱいいるよ」って言ったんですよ。その答えが結構しんどかったんです。

言いたいことはわかりますと。でも、今のテレビ番組ってほとんどがどんな真面目なニュース番組でも必ずお笑い芸人さんが出ていることが多い。芸人さんというのはおもしろおかしくするのが仕事なので、障がいのある出演者にも絡みがある。その時に乙武さんじゃない障がい者にヒヤッとする、それちょっと失礼なんじゃないかということがあると、まさにいま橋本さんがおっしゃったようにバッシングが来てしまうんです。

それがやっぱり番組としては避けたいので、なかなか乙武さん以外は起用しにくい。でも、乙武さんは長く20年くらい出ていて、キャラクターも浸透していて、多少失礼と思われる、本来ならヒヤッとする場面でもどうせ面白く返せるんでしょうという信頼感があるので、結局乙武さんになっちゃうんですよねと言われたんですよ。

これも闇が深いなと思っていて、橋本さんが言ったように、ちょっと失礼なんじゃないのと思うようなことにバッシングが来るという文化がなくなれば、乙武さんじゃなくてももっと障がいのあるオピニオンリーダーが出てこられるし、多様性がそこにも生まれてくると思うんですよね。そこも何とかしたいなと思っています。

乙武さんが変えたこと

スタッフ:乙武さんが今まで20余年活動されてきた中で、ここは自分が変えたぞと言うことはありますか。

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乙武さん:そうですね。画期的だっただろうなと思うのは、浜ちゃんに叩かれるということだと思います(笑)

僕は20代のころスポーツライターをやっていたので、若い方はご存じないかもしれないけど、ジャンクスポーツという番組が昔あったんですね。スポーツをテーマに浜ちゃんを起用して面白おかしく伝えようという内容だったんです。

スポーツライターをやっていたのでちょこちょこその番組に呼んでいただきました。僕もこういう性格なんで、たまにふざけるわけですよ。そうすると浜ちゃんにパシーンと「お前何言うてんねん!」とほかの共演者と同様に頭を叩かれるわけです。これって画期的だと思いませんか?

障がい者って絶対に守らなくてはいけない弱者だったわけですよ。まだパラリンピックも知られていなかったし、乙武さんの登場まで24時間テレビくらいしかテレビに出てこなかったんです。それがテレビに、バラエティーにでること、さらに日本一のMCと言われる浜ちゃんに頭を叩かれるって、フラットじゃないですか。これは結構画期的だったなと思うんですよね。

ツッコミという意味で「あ、障がい者って叩いていいんだ」というのは人々のマインドを変えたかなと思います。

そこに車いす3人が来ていると思うんですけど、彼女らもそういう活動を続けていて、よくメディアにでるようになってきていますけど、だんだんステージが挙がれば上がるほど、芸人さんと絡む機会が増えてくると思うんですよね。

そういったときに、いい感じの絡み方ができると多分テレビ局員さんもそれを見て、「けっこう芸人さんと絡んでもいけるじゃん」と実績が積まれてくるとまた声がかかって、乙武は老害だからあっち行ってという風になると思うので、ぜひそうなってほしいなと思います。

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▲「文化」の分野に寄せられた問い

強硬的な問題提起はアリ?

参加者:さっきの話(前編)とも通じるんですけども、地下鉄とか電車に乗るときに、車いすに乗る方だったら、必ず乗務員さんが一人ついてくれると思うんですけど、車いすの団体さんが10名とかでどっと来た時に、そこで今までの問題が見える化すると思うんです。だから団体行動をされるとどうなるのかということを聞きたいです。

乙武さん:昔、青い芝の会という脳性麻痺の方々が起こした行動で、バスに車いすの乗車拒否をされたということをきっかけに、集団にバスで乗ろうとしたり、介助者を乗せたバスで、介助者だけ降りて帰ってしまうといことをやったりして、対応をさせたということがあったんですね。

このあたりが、本当に意見が分かれるところで難しいんですけど、おそらくそういう先人たちの行動によって整備ができてきた部分というのもあるんです。でも、社会感情として「障がい者ふざけんな」、「おまえら何やっているんだ」という感情が生まれることも間違いないんです。

特に、今は前の時代よりもSNSがあるので、そういう声がより可視化されやすい。つまり、障がい者と健常者間の分断を起こしやすいんです。じゃあ、分断を起こしてでもそういう行動をして整備をしていくべきなのか、あるいはもうちょっとマイルドなやり方で、時間はかかってもゆっくりすすめていくべきなのかというのは意見が分かれるところだと思うんですよね。

これもちょっと聞いてみたいです。これも正解はなくて、皆さんの価値観です。では、今の「青い芝の会がやっていたことや、いま提案をいただいた強硬手段をとってでも、車いす10人で行って、いったんそういう実験をして、どれくらい困るのかということ可視化して見ればいいんじゃないか」と思う方はどのくらいいらっしゃいますか。おお!多い!3分の2くらいですね。

では、「さすがにそれやると大バッシングで、一人でやっても大バッシングなんだから、そんなの10人でやったらさすがにえらいことになるぞ」、「やりすぎじゃないか」と思う方はどのくらいいますか。3分の1くらいの感じかな。

これ、めちゃくちゃ難しいんですよ。僕が最近結構悩んでいるし面白がっているのが、このダイバーシティというものを目指すときに、アプローチ論というのも大事だと思っていて、目指す方向は一緒なんです。たぶん今どちらに手を挙げた方も最終的なゴールとして、車いすの人でも、車いす同士のグループでも自由に公共交通機関が使えるようになったらいいよねという理念は多分みなさん共有できていると思うんです。

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じゃあ、それをどのルートで実現したらいいかという部分で意見が分かれてくると思うんですよ。今みたいに、「多少強硬な手段をとってもやるべきでしょ」と考えるべきと思う人もいれば、「さすがにちょっとやりすぎじゃない?」「もう少しマイルドにやった方が良いよね」と思う人と色々出てくると思うんです。

問題はそのアプローチの方法が違う人同士がいがみ合っちゃうことが結構もったいないと思っていて、ゴールが一緒なんだから、そこは手を取り合って、「分かった、じゃあ俺らはこっちから山を登るね。」「いやいや、俺たちはそれは間違っていると思うからこっちから登るよ。でも、目的が一緒なんだから、せーので違う方向から登って、どっちかが先に山を登れたら良いよね」、「お互い頑張ろうぜ」と言えればいいのに、あっちから山を登るなんてあいつら分かっていない、馬鹿じゃないかということが始まっちゃっているのが、非常にもったいないなと思います。

これは障がい者社会でもそうだし、LGBT界隈でもそうだし、アプローチが違うだけで反目し合って、ただでさえ少ないマイノリティーがまた小さいグループに分かれていくのは、社会運動としてはめちゃくちゃもったいないなと思います。

橋本区議:私はフェミニストなんですけど、フェミニズム界隈でもアプローチの仕方がいっぱいあって、「なんでそんなこと言うの」、「そんなことを言ったら反感を買って実現が遠のくじゃん」とかって私も思ったりすることもあるんですけど、それは本当にそうだなと思います。

解き方が100通りくらいあるんですよね。課題を感じたときに、自分だったらこう解くなという、科学者ならこう解くし、歴史学者なら解くと言うし、乙武さんが最初に言ったスペシャリストが多かったら生まれていくんじゃないかなと思っていて、義務教育を外れてもみんな得意じゃない科目もやらされて、高校でみんな同じような勉強してから、大学に入ってからも同じようなことをしています。

例えば薬学部とか4年間卒業したところで、薬学のスペシャリストになっていない状況があります。それは、教育の問題でもあり、会社と企業の在り方の問題でもありという気が凄くするんですよね。それも仕組みの話だから政治が変えていかなければならないと私は凄く思うんですけど、乙武さんはどうですか。

乙武さん:僕が思うのは、昔は保守とかリベラルというか、政治的なラベリングがあって、そこにいろんな思想を持った人が分かれてがちがちに戦っていたと思うんです。でもそれってロマンな話もあって、日本という国に予算が潤沢にあったから、まさにいま橋本さんがおっしゃっていたように、この課題を解決するというときの方策が何通りも考えられていたからこそ、「じゃあ保守としてはこの方法が良いよね」。「リベラルとしてはこの方が良いよね」と何通りでもあったからがちがちやれたと思うんです。

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でも、今は予算がないんですよ。この社会課題に対してこれだけのバジェットで解決しなければなりません。じゃあどうしますかというと、昔にくらべると 解決の手段が割と一通り二通りくらいに限られてきてしまっていると思うんですね。「じゃあそれとっととやりません?」ということが割と明確になってきている中で、最近の若手のイケている政治家の主義主張を見ると、実はそんなにばらつきがなくて、割と現実路線の方が割と多いんですよ。

これはいい傾向で、当たり前の傾向というか、「それはそうなるよね」ということが、なんか感じています。もちろん思想を持つということは大事なんですけど、政治家は思想家というわけではありません。

困っている人の生きづらさを解消しなければいけない。でも、これだけしか予算がない。どうするといったときに、実際に票を預かった政治家がやるなら現実的にやっていこうという、そこに尽きる気がするんですよね。

乙武さんが政党を選ばない理由は?

橋本区議:でも乙武さんって今度の参院選に無所属で出ることにしたわけで、政党を選んでいないわけじゃないですか。全体合意があらゆる政党で取れているけど、でもそこから選べないというか、選ばないっている決断をしたのはなぜですか。

乙武さん:2つあって、1つはやっぱり全面的に納得ができる政党がないというのはやっぱりあります。

例えば自民党でも「こういうところはいいけど、これは納得できないよね」というところもあるし、立憲民主党でも、「ここはいいよね」、「でもここはちょっとないよね」というところもあるし、どの政党でも、一長一短があります。だから、これは乗ったというところもなかなかない。

でも、そんなものは最終的にはどこかで妥協しないと、いつまでたってもそういう政党は見つからないと思います。

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最終的には言い訳になってしまいますが、一番の理由はさっきの僕6年前に皆さんの信頼を失って、何もできない状態になりました。それでも6年間、僕を応援し、僕の可能性を信じ続けてくださった応援団がいて、その方々の政治思想があまりにばらばらだったんですよ。

だからこっちの政党から出ると、「え、乙武さんのことは応援しているけど、その政党から出るの?」となるし、また違うところから出ると、「え、いままで応援してきたけど、そこからでるならもう無理だよ」となってしまう。

もちろんどこかの政党から出た方が当選確率はぐんと上がるし、選挙もぐんと楽だったと思うんですけれども、今の僕がよしもう一回政治にチャレンジしようと思えているのは、この6年間支え続けてくださった方々のおかげなので、まずは全員が乗れる船を用意したいなと。でないと僕はスタートを切れないなと思っていて、どんなに不利になろうが、一旦この全員を載せられる船をつくりたいなと思って今回は無所属を選びました。

橋本区議:目指す場所が同じならどの船に乗るかと言う話になってきて、乙武さんは仲間と乗れる船をつくったということですね。

乙武さんからの宿題

スタッフ:最後、乙武さんからみなさんに宿題をお願いします。

乙武さん:はい。僕は公平な社会ってどうやって作ったらいいというのを皆さんに問いかけたいと思っています。

そもそも今の社会が公平なのかどうか、ということから考えてほしいなと思うんですが、僕はあまり公平な社会だと思っていません。例えば、さっきロンドンに3か月いたという話をしたと思います。そのときに面白かったのが、ロンドンも大都市で、通勤ラッシュの時間は混んではいるんですが、車いすでも乗れるくらい、ベビーカーを押していても乗れるくらいの混雑にキープされているんです。

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不思議だなと思って。だってロンドンも大都市じゃないですか。なのに、なんでこんなに混雑していないのかと思ったら、駅の中で入場制限をしているんですよ。ロープを張って階段の下に行けないようにしているんです。そして、一定程度の人をホーム荷下ろし、その人たちだけが電車に乗れるようにしているので、一定の込み具合をキープできているんですね。

それっていいじゃないと思いませんでした?でも、そのぶん入場規制を敷いているから、階段の上で全員が15分くらいは待たされているんですよ。でもね、何が公平な社会かと考えると、全員が等しく15分待たされて、全員が等しく利用できるのが僕は凄く平等だし、公平な社会だなと、これが公共交通機関だなと思うんです。

一方で、日本は、東京はどうなっているかというと、車いすユーザー、ベビーカーユーザー、視覚障がい者といったいわゆる交通弱者を、朝の通勤時間帯から排除することによって多くの人の15分を節約しているんです。これは公平な社会と言えるんですかねと考えると、概念としてはたぶん言えないですよね。

じゃあ、日本でもそうしますかと言ったときに、実現はしないんですよね。大多数の反対にあって、そんなものは成り立たないんですよ。

公平な社会であるべきとみんな言うのに、現実解として成り立たない。じゃあどうするのっていうところで、いろいろな知恵を出し合うことが必要なんだろうなと思っているんです。公平な社会をつくろうとお題目としてはみんなが唱える、概念としてはみんな賛成する。でもなかなか現実としてそれが成立しない。

そこの壁は何なのかということはみなさんに考えていただき、何をどうすることが人々のマインドを変えることなのかルール作りを変えることなのか、どこかに予算をつぎ込むことなのか、そのあたりをみなさんに宿題として考えていただけると嬉しいなと思います。

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