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【高校生のあなたへ】頑張らなくても大丈夫

世界一忙しい高校生?

 アジア圏で顕著に見られる傾向であるが、日本の高校生は課題が多く、熱心に勉強し、大学受験という熾烈な争いを勝ち抜こうとする。今、日本の高校生はどのような生活を送っているのだろうか。

「忙しい」と感じている割合

 2018年に河合塾マナビスが行った調査によると、現役高校生の21%が「とても忙しい」、37%が「忙しい」と回答している。主な理由は勉強・部活・アルバイトなどである。さらに、ベネッセが2013年に行った調査によれば、高校生の70%が「疲れやすい」と回答していたという。これらの数字は年々増加傾向にある。

睡眠時間

 また、日本の高校生は世界的に見ても十分な睡眠時間が取れていない。国立睡眠財団や米国の睡眠学会などが推奨している14~17歳の適切な睡眠時間は「8~10時間」である。

 しかしながら、高校生の平日の平均起床時刻は6時36分、平均就寝時刻は23時42分であり、これらの数値から概算すると日本の高校生の平均睡眠時間は「6時間54分」となる。高校生が本来必要としている睡眠時間から、1~3時間ほど足りていないことになるのだ。

 睡眠時間の不足が身体の発達や精神の安定に大きな影響を与えることは、科学的にわかっている。

うつの割合

 また、悲しいデータではあるが、高校生のうち30%が中等度以上のうつ症状を有していることが、2021年の調査によって判明した。この結果は、2020年から起こったコロナ禍の影響を強く受けていると考えられる。(参考:国立成育医療研究センター)

 鬱の症状が極端に至ってしまうと、自らの命を絶つという選択につながる。G7各国の中で、15~34歳の死因トップが自殺なのは日本だけであり、その自殺率も16.3%と各国に比べて高い。若者のメンタルヘルスに、様々な側面から取り組む必要があるだろう。

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頭を抱える男性

インターンシップ、今必要?

 ここで取り上げたいのは、今高校生に広がる「課外活動」ブームである。SNSを通じて、いろいろなコミュニティの人とつながることが可能になり、社会問題などについて受け取ることができる情報量も増えた現在、それらを解決しようと熱心に取り組む高校生が増えている。自主的なボランティアやプロジェクトのみならず、企業でのインターンシップに取り組む高校生も多い。

 高校生の間にインターンシップに取り組むことには、「社会の仕組みを知ることができる」「大人の礼節やマナーを学ぶことができる」「進路選択がしやすくなる」などの利点がある。しかしながら、未成年でもある高校生の間から、大人の社会に揉まれて仕事の体験をすることはそれほどまでに重要なのだろうか。

広い世界を知ろう

 まず伝えたいのは、高校生の間に見えている世界よりも、現実はもっと広いということだ。公立・私立に関わらず、高校生までは同じような年齢・住環境・価値観である人が集まっている。

 もしも大学に進学した場合には、全国各地から集まった、時たま年齢の離れた人々と、高校よりもフレキシブルなスケジュールで学び合うことができる。

 高校生の間に見えている興味関心の分野や、自分が成し遂げるべきだと思っていることが、簡単に覆るような経験が高校から出た世界では待っている。

有給?無給?

 また、高校生のインターンは無給であることが多い。未成年ゆえ責任のある仕事を任せることができない、というのも一つの理由かもしれない。

 しかし、有給インターンシップやアルバイトなど、かけた時間に対し報酬が発生するようなプロジェクトの方が、自分のアクションに責任と積極性をもち取り組めるかもしれない。「やりたいこと」だとしても、自分自身のやる気や好奇心を無償で社会に提供し続けるのは、忙しい高校生の間でなくても良いかもしれない。

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休むことも覚えよう

 日本の社会人の労働環境を見てもわかるように、この社会は「効率性」「生産性」がかなり重視されている。しかしながら、上述したようなメンタルヘルスの状況の悪化を受け、「休むこと」を肯定する文化も広まりつつある。

 自分自身の心身の状態を見極め、然るべきときに休養を選択するのも立派な自己管理の方法なのだ。勉強や部活と目まぐるしく、頑張りたい人ほど社会にも目を向け体を動かそうとする高校生の生活でも、「休むこと」「寝ること」を忘れず大切にするべきだ。

大人に焦らされるな

残念ながら社会には、学生に必要以上の努力を求める大人たちがいる。彼らは沢山の課題を課し、優勝を求め、団体を勧め、実績を評価する。自分の睡眠時間の短さを愚痴り、学生時代の行動歴を語り、もっと高みへと鼓舞してくる。もっと休め、しっかり寝ろ、と伝えてくれる大人は本当に少ない。しかし、あなたを何かに目覚めさせ、早く行動させようとする大人に焦らされないでほしい。高校生にしかない時間を、気付きを大切にしてほしい。

生産性神話から抜け出そう

 結局この記事で伝えたいことは、「この社会の生産性重視に、巻き込まれないでほしい」ということなのだ。

 社会は私たちを早く「おとな」にさせたがる。

 高校生が、高校生であれる時間が、16歳、17歳、18歳の等身大であれる時間が短くなってきている。

 生き急がなくても、社会問題や活動は待ってくれているものだから、どうか、動き続けるべきという波に呑まれず、心身を第一に大事にしてほしい。そして、おとなや社会を、自分ひとりでゆっくりと見つめる時間をとってみてほしい。

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Alice
ライターページ おとな研究所 編集部員 ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。