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合流新党に、消費減税を実現することはできない!

 立憲民主党が解党し、国民民主党が分党して結成される、合流新党の代表選が行われている。今のところ、立憲民主党代表の枝野幸男代表に、国民民主党政調会長の泉健太が挑む一騎打ちの構図となっている。他に、旧維新の党グループや直諌の会から、第三の候補者擁立が検討されているという。

 ところで、泉氏が時限的な消費税ゼロを代表選の公約に掲げたところ、枝野氏も消費税減税を検討すると主張を明確にした。しかし私は、実際に合流新党が消費減税を公約として選挙を戦ったり、同党を中心として消費減税を実現したりする可能性は、低いと考えている。以下に理由を述べる。

「令和元年増税」阻止に全力を尽くさず、今まで減税の主張もない

 令和元(2019)年10月、消費税が増税されるとともに、同時に①軽減税率、②ポイント還元制度が導入され、複雑で分かりにくい消費税制となってしまった。野党第1党の立憲民主党は、消費増税に反対の立場を取っており、公約にも消費増税反対を掲げて選挙を戦った。しかし、参議院通常選挙前の通常国会で立憲民主党が主要なテーマに掲げたのは、森友学園・加計学園問題・統計不正などのスキャンダル追及であり、経済問題ではなかった。もちろん、これらのテーマが重要であることには異論はないし、問題があれば追及すべきである。もっとも、立憲民主党は、通常国会で消費税増税凍結法案を提出することはなかった。衆議院で、単独で予算付議院立法を提出できる野党は、50人以上を擁する党であり、今は立憲民主党しかない。与党の増税に対する対案として、消費税増税凍結法案を提出すれば、かなり与党に対する圧力になったはずであるし、これをもって最大限の努力であると評価できる。法案提出という最大の努力を怠った立憲民主党は、増税反対に対する本気度が欠けていたと言うべきである。

 また、実際に10月に増税がなされた後、立憲民主党は今まで党として減税を掲げることがなかったし、枝野代表が減税を主張することもなかった。立憲民主党は、コロナ下にあっても、今の今まで消費増税を「追認」したと評価すべきである。

 国民民主党との合流にあたっても、玉木雄一郎代表が求める「消費減税に関する考え方の一致」について議論に応じなかった。また、須藤元気議員は、立憲民主党で消費減税を主張することに限界を感じ、離党することとなった。これらの事情も加味すれば、立憲民主党の「増税反対」「消費減税」という主張に本気度は見られない。もし本気で消費増税に反対しているのであれば、コロナと言う未曽有の不況に際して、玉木氏や須藤氏とともに消費減税を主張すべきであったからだ。

 最近、枝野氏の消費税を巡る発言には短期間で変化が見られる。令和2年3月時点では、同氏は「こうした経済状況に対応する政策としては消費税(減税)を含めて、あらゆる施策を選択肢として検討する必要がある」と発言し、消費減税には未だ慎重姿勢を崩していなかった。ところが、8月末の枝野氏の会見では、具体的に検討する3案の1つに消費税が急浮上し、代表選出馬に当たってより消費減税に前向きな発言を行った。代表選や衆院選が近づいたこのタイミングで急に減税を主張するという枝野氏の発言には、SNS上でも疑問視する声が目立っている。

https://twitter.com/sakamoto1haruki/status/1300374713529544704

※枝野氏発言の変遷について参考文献
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031901399&g=pol
https://www.sankei.com/politics/news/200317/plt2003170040-n1.html
https://www.sankei.com/politics/news/200830/plt2008300032-n1.html

「三党合意」の立役者も合流

 消費増税「三党合意」の立役者である野田佳彦前首相も新党に合流する。首相経験者の合流は、自民党が倒れた場合に政権を担いうる野党第一党としては歓迎すべきことであるかもしれない。しかし、野田佳彦前首相は強硬な増税派・財政再建論者として有名であり、れいわ新選組の消費減税公約に対し、「甘いことを言えばいいというものではない」と酷評したこともある。そのような野田氏は、合流新党の政策決定に影響を及ぼしかねない。実際に、他にも、今回の合流新党には、平成26(2012)年の消費増税「三党合意」に関わった重鎮議員が数多く参加する。そのような中で消費減税を選挙の公約として戦い、減税法案を提出するまでこぎつける可能性は低いのではないかと、私は考えている。

※野田首相発言に関する参考文献https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_47788/

まとめ

 主要政党で、消費減税について最も結果を残しているのは、「消費減税プログラム法案」を提出した日本維新の会と、恒久減税を主張し続けているれいわ新選組である。次いで、国民民主党がコロナ対策として時限的減税を党の政策にすることを決定していることも、評価できる。また、あまり知られてはいないが、NHKから国民を守る党も消費減税法案を作成済である。

 間もなく解散総選挙が行われるという見方が強いが、総選挙においても、消費減税を本気で実行する気があるかは、政権公約を見て判断すべきである。それとともに、今までの消費増税阻止・減税に対する努力も考慮しながら、各政党が本気で減税する気があるかを、有権者がよく判断すべきである。

 今回、合流新党に対しては消費減税に対する本気度が疑われると言う趣旨で記事を書いた。実際に、枝野氏の最近の言動は、消費減税を主張する代表選の対抗馬に対する「争点隠し」ではないかと疑う声がある。過去の枝野氏の言動との整合性を重視すれば、枝野氏がどれほど本気で減税を主張しているのか疑問を持たれるのは当然である。代表選で勝利することが有力とされる枝野氏をはじめとする、合流新党のメンバーには、この疑問を良い意味で裏切られるように、頑張ってもらいたい。

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