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乱立!?オーストラリアの主要政党

前回の記事では豪州の政治制度について説明したが、今回は豪州の政党について説明したいと思う。豪州の政党要件は単純に500人の党員を有する事だけなので、数百もの政党が存在するが、今回はその中で(1)連邦院または複数の州議会で議席を有す(2)事実上の無所属議員政党では無く、(3)ワンイシュー政党では無い政党を取り扱っていく。

前回記事: オーストラリアの民主主義

自由党 (Liberal Party of Australia)

イデオロギー:自由主義、自由保守主義、自由経済主義、反共主義
支持母体:中流層、経営者、宗教関係者等
党首:スコット・モリソン

Liberal Party (@LiberalAus) | Twitter


与党自由党は1944年に設立された政党で、二大政党の中では新しい方だが、そのルーツは建国時から存在していた「自由貿易党」や、自由党自身の前身団体である「オーストラリア統合党」にあり、非労働党勢力として豪州の歴史上重要なポジションを占める。結党以来、ほぼ一貫して国民党(後記)と連立を組んでいる。

自由党は党名の通り、党是を自由主義としている政党だが、経済及び社会での自由を拡大する政策に基本的に賛同し、減税や規制緩和などの経済政策を表に打ち出す事が多い。

中道右派勢力と言う事もあり、党内では(都市部の議員が多い)社会リベラル勢力と(宗教団体出身の)保守勢力との間でイデオロギーの対立は若干存在する。現在のモリソン党首は中間派の存在として党内融和を推進しているが、それはリベラル派のターンブル前首相と保守派のアボット前首相の過酷な主導権争いの結果である。

自由党の伝統的な支持者は中流層や経営者、宗教関係者であったが、エネルギー政策に関連して、鉱山産業に従事する労働者も自由党支持者になりつつある。逆に中流層でも特に若年層は近年自由党支持者では無くなる傾向があり、かつて強固だった中流層の支持は上中流層だけになっているのが課題である。

自由党の地盤は西オーストラリアとクィーンズランド州であるが、基本的に沿岸郊外地域であればどこでも常勝と言った状況である。

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国民党 (National Party of Australia)

イデオロギー:保守主義、重農主義
支持母体:農家
党首: マイケル・マコーマック

South Australian National Party | SA History Hub

与党の一員である国民党は1920年に設立された政党で、主に農業者の立場を代弁する事で指示を集めている。社会的には自由党一部と同様、保守的な傾向があるが、経済政策では保護政策を好むなど、自由党との一定の差はみられる。

設立時は自由党と同規模であり対等な関係であった国民党だが、今では衆院151議席中、15議席のみ占めるなど、人口構造、産業構造の転換により徐々に影響力が減ってきており、一部の州では自由党との合併も行われている。

国民党は農村地方に置いて強固な支持基盤を築いているが、特にニューサウスウェールズ州にて強固な得ているを得ている。

労働党 (Australian Labor Party)

イデオロギー:中道左派、第三の道(二オリベ亜種)、民主社会主義
支持母体:労働組合、労働階級、大学生
党首: アンソニー・アルバニ―ジー

Australian Labor Party - Wikipedia

最大野党である労働党は1901年に設立された政党で、労働組合を母体としている。伝統的には社会主義政策のみを推進し、社会政策は十人十色だった政党だが、20世紀後半からは民営化や規制緩和など市場原理政策を採用しつつあり、逆に社会政策での左傾化が進んでいる。

労働組合をバックとしている政党として、自由党よりも強固な全国組織を有している労働党だが、戦後の選挙結果は9勝19負(1引)と、自国連立に後塵を拝しているのが実情だ。

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労働党は伝統的に労働者階級を支持基盤をしてきたが、近年は労働者層の「労働党離れ」が顕著であり、支持は主に都市部のインテリ層や非ヨーロッパ系移民となっている。地盤は労働組合が伝統的に強いビクトリア州と南オーストラリア州となっているほか、都市部の移民系が多く在住する郊外や都市中心部でも労働党が強い傾向がある。

労働党は主に経済政策において左派と右派(中道~中道右派)勢力に分けられるが、国政上は右派の力が強く、結果的に二大政党の差は他国より小さいものとなっている。ただし、地方レベルでは右派左派も勢力で拮抗している状態であり、それぞれの支援団体も巻き込み、支部長公認争いが勃発する事も多々ある。

緑の党 (The Greens)

イデオロギー:緑の政治
支持母体:活動家、グリーンピース、大学生、ビーガン等
党首:アダム・バント

Australian Greens - YouTube

緑の党は環境問題を第一に掲げる政党で、1992年に設立された政党である。得票数では自由党、労働党に次ぐ3位(10%程度)であり、議席数でも国民党に次ぐ4位となっている。

支持者は主に都市部の学生や環境活動家などだが、世界中の緑の党にみられるように、ビーガンや反ワクチン活動家も緑の党の支持者である場合が多い。団体としてはシーシェパードやグリーンピースからの支援を受けている他、大麻合法化スタンスから大麻関係団体からも支援を受けている。

設立当初は完全な第三極として立ち回っていた緑の党だが、近年では労働党の連立パートナーとしての側面も強めている。

一つの国家 (One Nation)

イデオロギー:保護貿易主義、国家保守主義、右派ポピュリズム
支持母体:保守系労働者層
党首:ポウリーン・ハンソン

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One Nation Australia (@OneNationAus) | Twitter

一つの国家(ワンネーション)は1997年に設立された右派ポピュリズム政党である。設立時から一貫してポウリーン・ハンソン党首が指導的立場にいたワンマン政党である。

元々保守的な傾向が強かったクイーンズランドの内陸部で強固な支持を得ている「一つの国家」は国民党よりも強固な保護貿易政策と社会保守政策を掲げる事で、1998年の総選挙ではクイーンズランド州で20%以上の得票(全国では8%)を獲得し、その地域での国民党支持を崩壊させた。

現在でも国政選挙では5%程度の得票を継続的に得ており、与党が過半数を獲得する事が難しい元老院では重要なポジションを占める。支持者は主に左傾化した労働党を嫌った労働者や、保護政策を好む保守的な農家となっている。

自由民主党 (Liberal Democrats)

古典的自由主義、リバラテリアン主義、小さな政府主義
支持母体:銃規制反対派、リバラテリアン、薬物合法化団体
党首:ロイド・ラッセル

Liberal Democratic Party (Australia) - Wikipedia

自由民主党は2003年に設立されたリバラテリアン政党で、現在では西オーストラリア州議会とビクトリア州議会の上院で議席を獲得しており、かつては連邦上院でも議席を保有していてた政党である。

銃規制緩和や小さな政府を掲げる政党で選挙では3%程度の得票を獲得しており、一定の規模を保っている。

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