温暖化のファクト

温暖化はファクトだ。意見でも、一説でもない。地球の平均気温は確実に上昇しており、その傾向は近年更に顕著となっている。これは疑いようの無い事実である。地球の平均気温は西暦1900年と比較して、約1度も上昇している。

1850年以降の地球平均気温


地球温暖化は炭素をなど温暖化ガスによって引き起こされているとの認識は世界の主要気候研究所を始めとする様々な研究機関が結論付けている。米国家サイエンスアカデミー(PNAS)の調査によると、論文を執筆した気候研究者の97%から98%が温暖化ガスが地球温暖化の主因と考えており、科学界においては疑いの様もない事実と捉えれている。異論を唱える科学者もごく少数存在するが、多くは気候学では無く、専門外の分野からの意見であり、否定されているものばっかりである。医師の変わりに持病の診察を物理学者に頼む事は無いのと同じで、気候変動は気候のプロに任せるべきであろう。

温暖化を疑いの様がない事実として理解してくれた読者の中には「でも、たかが一度」と思う方もいるかもしれない。しかし、平均気温と真夏日、真冬日の関係により、平均の動きはその何倍以上もの影響を異常気象日にもたらす。たった一度の平均気温上昇は、その地域の平均気温より5度以上熱い日数を141%増加させ、平均気温5度以下の日数を64%減らす

これが二度の平均気温上昇になれば、5度以上の日数は406%上昇し、5度以下日数は89%減少する。要するに、地球温暖化は単純に毎日温度が2度上がると言うわけでは無く、真夏日が大幅に増える事となる。特に日本の様な海洋国家の場合、これは連続真夏日の頻度、期間上昇により海面温度の突発的上昇を招き、気候の不安定化に繋がる事となる。

更に、温暖化により回帰線辺りの砂漠気候が上昇する事により多くの農耕地の生産性が急激に低下する事となる。変わりにシベリアの一部などの地域は農耕地の生産性が上昇すると考えられてるが、地球はあいにく球体なので、総量で見ると農耕可能地が最大5%低下する事が予測されている。ここに、異常気候の影響を考慮すると、これからも当分は増え続ける人口に対応する食糧生産はますます困難になってくるだろう。

温暖化による様々な障害は経済的な障害(外部不経済)となり、長期的なGDP押し下げ要因となる。CGEモデルを応用した研究によると、4度の温暖化が気候に与える一時的な要因のみを考慮した場合、長期的には世界GDPは約4%押し下げられる。中には15%程度押し下げられる国もあるが、1%未満の国もあり、地理的な要因に左右される不合理な格差が出来上がっている。特に影響を受けやすい赤道付近の後進国は政情の不安定化による政府機構の崩壊や内戦と経済低迷に伴う難民危機なども危惧されている。

しかしこの4%は一次的な要因にも考慮しており、その4%の押し下げに伴う二次波及的効果は計算していない。実際に把握は難しいが、一説には10%弱の押し下げとも言われている。

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温暖化は環境だけの問題ではなく、実際に迫りつつある経済問題なのだ。

計算可能な一般均衡(CGE)モデルとは?
関税や税制、規制などのミクロ経済学の問題に対して、現実の経済政策の策定や定量的な評価に役立てるよう開発されたのがCGE(computable general equilibrium、コンピュータで計算可能な一般均衡)モデルである。国別、産業別や部門別の分析を得意とし、データは産業連関表が用いられることが多い。プログラムにはGAMSやFortranが一般的に利用されている。

https://www.jcer.or.jp/environment/terms/term_ka.html

温暖化の対処方法

もちろん、温暖化を阻止する唯一の有効策は大気に排出する温室効果ガスを削減する事だ。しかし一部の左派が主張する、急激な脱炭素化は逆に(特に工業国の)経済的なダメージを加速させ、全体的な経済費用が増大化してしまう。即ち、温暖化対策は脱炭素化と温暖化両方の経済コストを最低限に抑えなければいけないのである。

この問題を解決するモデルがDICEモデルだ。DICEモデルはウィリアム・ノードハウス博士が開発したモデルであり、その画期性から彼はノーベル経済学賞を受賞し、IPCCもが使用している温暖化の複合的要因を考慮した経済モデルだ。

DICEモデルは今世紀中の温暖化を約2度で阻止する事がコストを一番低減できる地点と算出してる。

温暖化を2度で阻止する為には、温室効果ガスの排出を一定量にまで抑えなければならない。その為に存在するのが気候モデルである。様々な気候モデルが存在してる。その中でも世界的に使用されているIPCCの気候モデルは不正確だ、などとのデマ誹謗中傷に悩まされているが(実際に初期は様々な問題が存在していたが、主にそれは各国の将来排出量の見誤りであり、温暖ガスと気温の関係性ではなかった。)、これまでの炭素排出と温暖化をかなり正確に予測してきた。

forecast evaluation for models run in 2004
IPCC4次モデル(平均値=黒字)と実際の気温変化(赤字)の比較, NASA

DICEモデルとは?
DICE (Dynamic Integrated Climate and Economy)モデルは、世界を一地域として扱い,13本の方程式により,世界の経済と地球温暖化のメカニズム,さらには温暖化による被害 も表現 しており,温室効果ガス削減の最適パスを推定する動学最適化モデルである

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/5636/kenkyu0260400310.pdf

エネルギー消費を減らすのは世紀の愚策

温暖化を阻止するには炭素排出の削減が必須となる。これは、火力エネルギー源からの転換が必要となる事になる。主要国では石炭石油発電の廃止、そしてその大部分を非火力源に転換する事を想定している。(一部をよりクリーンで効率的な天然ガスをベースロードとして確保する国は多い)米国では2050年までに電力の約42%を再生可能エネルギーで確保する予測となっており、英国では2040年までに約46%を再生可能エネルギーで確保する予測だ。

EIA projects renewables share of U.S. electricity generation mix will  double by 2050 - Today in Energy - U.S. Energy Information Administration  (EIA)
米エネルギー局(EIA)によるエネルギーミックス予測

経済成長にエネルギーは必要不可欠である。どの国の想定でも、エネルギー需要はこれからも上昇していくと言う想定でエネルギーミックスを組んでいる。しかし、日本は次期エネルギー基本計画では電力消費量を一割削減する計画と言う報道がなされている。しかし、経済の為に行う温暖化対策を推進する為にエネルギー消費削減と言う経済を苦しめる本末転倒な計画は全く意味不明である。

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世界のどの政府も把握していないエネルギー効率の莫大的上昇でもない限り、そもそもこの計画には無茶がある。政府が強権的に電気制限を行うなら別の話だが。単純に、脱炭素環境整備の開始に遅れた日本が今からどれだけ再エネを増やしても政府目標の2030年までの46%削減と達成する事は難しいから、面目を保つためだけに作られた計画であろう。

もちろん、炭素排出取引制度(ETS)によるカーボンプライシングを推進する事で市場に即する形で炭素排出削減する事は可能であるし、推進されるべきだETSは経済的コストはほぼゼロに近く、炭素税と違い政府の恣意的介入や裁量行政を招きにくい。しかし、ETS制度に炭素価格を考慮した需要と供給のマッチングでは無く、政府による強権的な電力消費引き下げは絶対良い結果を生み出さない。

再エネの問題点。

米倉山太陽光発電所

勿論脱炭素社会に進むにはエネルギーミックスの多くを再生可能エネルギーに頼らざる得ない。しかしながら、勿論色々問題点は存在する。

家庭用ソーラーパネルは送電網に対する家庭の電力需要を削減するには効果的だが、送電網維持コスト自体は変わらない。即ち、同じコストよる少ない量の売り上げ(電力)で賄わなければいけない為、電力価格が高騰する要因となる。これは主に太陽光パネルを購入する事ができない低所得者層が特に打撃を受ける事となる。

メガソーラーは風力発電所は従来火力発電をそのまま代替する為、送電網コスト問題には影響しない。しかしながら、太陽光や風力発電自体はベースロード電源となり得ず、変化する電力供給が送電網管理に負担を掛ける場合が多い。このため、再エネに依存する為には、揚水発電やバッテリーによる蓄電、若しく再エネ非稼働時のみ運転する電源が必要とり、このコストが電力価格上昇を引き起こすであろう。

Pumped Storage Hydroelectric Power Plant 02-ja.svg
蓄電時の揚水発電所
揚水発電の模式図 電力需要が下がる深夜等の余剰電力で下部貯水池から上部貯水池へ水の汲み上げを行い、昼間・夕方などの高需要時間帯に上部から下部へ水を流し発電することで需給調整を行う。
発電時の揚水発電所

勿論、これらの問題に関わらず、再エネを推進する事が必要だ。政府の2030年再エネ約2割目標はそれを加味した現実的な目標と言えるだろう。

良識のある電力行政を。

美浜原子力発電所

政府はこれからも安定した電力供給を行う事が必須となるだろう。今年のテキサスでの電力供給障害も見ても、健全に管理されていない電力市場の供給が追い付かなくなると、実際に死人が出てくる事態となる。他の商品と違い、電力はその供給量を一気に増やす事は難しく、ショックには弱いと言える。そこで重要なのが、自由化を推進しつつ、きちんとインセンティブによってベースロード電源を確保する事だ。

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そこで、重要なのがどの様な外的ショックでも一定期間は必要最小限の電力を安定供給できる設備を確保する事だ。化石燃料は海外事情に左右されやすく、備蓄も難しい。再エネだけに頼るのは安定性に欠け、政府による維持コストも高くなる。そこで重要なのが原子力発電だ。ゼロカーボンでベースロード電源になり得る事ができ、更に備蓄と供給が非常に安定している。政府は原子力発電所の新設を行わず、原子力発電所の耐用年数を60年に先延ばしする事で当分対応する計画だ。実際2030年には約2割の電力が原子力発電所で発電される計画となっている。しかし、電力消費を減らすなどと言うふざけたオプションでは無く、本気で脱炭素を推進し、安定安価な電力を供給するのが目的であれば、国は原子力発電所の新造を行うべきである。最新型の原発は非常に安全であり、福島事故の教訓も生かされている。

電力市場においても炭素取引制度を導入すれば、再エネと原発建設にインセンティブがかかる。現有の維持だけではなく、原子力発電所の新造を行えば、2050年までに電力の4割を原子力で担い、火力発電をほぼ排除する事が可能となる。

10年前の事故により、国民的なトラウマとなってしまった原子力発電だが、科学が風評に負ける事はあってはならない。温暖化と言う地球規模の問題に襲われている我々にとって重要なのがきちんと科学と経済学的エビデンスに基づいた政策を実行する事だ。ポストコロナ、温暖化で正念場を迎えた21世紀は国家の良識が問われる時代となるだろう。

 

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マクロスおとな研究所 経済担当

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某国立大学の文系学生です。主に経済や選挙制度に関する記事を書きます!
※2021年7月15日を以て引退。

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