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生活保護制度は欠陥制度である! 【ポストコロナの社会像】

2019年、中国武漢から発生した新型コロナウイルス感染症は全世界で猛威を振るった。日本国内でも約73万人が感染し、長期に及び感染症対策を強いられ、社会経済に大きなダメージを与えた。コロナ危機により、日本の現体制における問題点が露呈し、誰もが現状からの変革を求めるようになった。ワクチン接種の開始によりコロナ危機の終結が見え始めた今こそ、ポストコロナ社会の設計図を描くチャンスとなる。

※この記事は前回【ポストコロナの社会像】の3本目である。この記事を読む前に前2記事を参照して頂きたい

安定した社会の根底に必要なのは安定したセーフティネットだ。国民が精神的で健康的な生活を営むためには、政府による最低限の生活保障は必須だ。安定したセーフティネットがなければ治安は悪化し、社会基盤自体が崩れるだろう。更に、セーフティーネットの廃止は再チャレンジを封じる事となる。一回の失敗以降、生涯貧困に見舞われるのは道義的な意味でも、国家全体のポテンシャルを考えた面でも理不尽な事だろう。

日本のセーフティーネットは強固に見えるが、実態は欠陥制度だ。設計当時に予期できなかった社会構造の変化に対応する為に数々の増築が繰り返され、難解かつ不安定な構造となっている。現在の社会保障制度の大きな問題は大きく分けて4つある。

  • 「社会保障の崖」
  • 「捕捉率ギャップ」
  • 「世代間格差」
  • 「財政サステナビリティ」

捕捉率問題とは?

前回の記事では、「社会保障の崖」が特に社会的弱者の低所得者層の就労意欲を阻害しているかを解説した。しかし、その記事では社会保障が確実に給付されているとの前提で読者の多くは読んでいたかもしれない。しかしながら、我が国の社会保障制度は必要な人に必要な社会保障を届けられていないのだ

生活保護制度は居住地域や家族構成などの基準を元に、生活に必要な最低限度の扶助を行う事と目的とする制度である。原則として、一定の収入以下の国民は加入する事が出来る制度である。

しかしながら、生活保護制度は自己申告制である為、受給自体にスティグマがあるが故にそもそも申告する人の数が少ない事や、役所の窓口業務側での追い払い(いわゆる水際作戦)などもあり、給付水準は約2割とも言われている。

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要するに、現行制度下で生活保護を受給できる人の約8割が受給してないと言う事だ。これでは、制度として全く機能していない事となる

これは重大な問題であり、生活保護を必要としている人が受給出来ていない状況が出来上がっていると言う事だ。確証は無いが、一番必要としている人は現在優先的に受給しているとしても、低すぎるだろう。

難解割高な生活保護

しかしながら、いわゆる左派が主張する一方的な受給率引き上げは極端な財政支出増大を招き、既に慢性的な赤字に見舞われている我が国の構造収支を更に悪化させる事となる。日本の生活保護は世界有数に手厚い制度であり、所得補償は他の先進国より5割程度高い水準となっている。

給付水準が高く、実質税率100%(所得を増やせば同じ額、生活保護が減り、大幅に所得を増やせない限り、働いても働かなくても同じ)である生活保護は更に、就労意欲を阻害している。生活保護は地域の物価を考慮しているがために地方格差ができ、東京や大阪などの都市部への集中を招いており、生活保護受給者間の不平等も発生している。

更なる問題として、生活保護が医療や食事など、細分化された制度の為、行政コストがかさんでおり、無駄が発生している。特に医療費に関しては、多くのケースにおいて、ゼロコストで医薬品を購入出来る為、非受給世帯を比較して、医薬品の消費が無駄に多いとの指摘もある。

この様に、様々な制度的な問題が指摘されている生活保護制度だが、構造的な欠陥もまだまだある。
それでは、どの様な生活保護制度がいいのだろうか?それは来週「世代間格差」の説明と共に示していきたい。

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