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【世界経済解説】中国が抱える時限爆弾 -いつまでも続かない「大国」の幻想

冷戦の終結は、自由民主主義体制の勝利とされ、一部の識者は「歴史の終わり」とまで言うほどであった。国家間対立の終局論は同時多発テロやテロとの戦いが過熱した2000年代でも信じられていたが、近年の中国の経済成長と外交姿勢は国家間対立が果たして終焉したのか、大きな疑問を浮き出させた。

実際、現在の米中対立は近年ますます過熱してきているが、果たしてそれが紛争までに発展するのか、そして中国が米国を抜く日があるのか。先週は「中進国の罠」と関連付けて検証したが、今日は中国が抱える人口問題を通じて中国の将来を占いたい。

減少傾向の人口

国家のGDPは一人当たりの生産性と人口で決定される。先週の「中進国の罠」では中国の生産性(一人当たりのGDP)成長が長続きしない可能性について言及したが、それでも中国の人口が伸び続けれれば、中国の国力も伸び続けるし、実際中国の強大な国力は生産性では無く、人口によって支えられているし、GDPの成長の三分の一は人口由来であった。

それでは中国の人口はこれからどう推移するのだろうか?中国の人口は2020年現在14.1億人である(ただ、実際これは多少の粉飾があるかとの指摘もある)。これは1980年代の9.8億人から大幅に上昇しており、労働者の供給などと、中国の発展に貢献した。

しかし、一人っ子政策(2015年には撤廃されたものの)の影響もあり、特殊合計出生率は1.3と人口維持に必要な2.1には程遠い(日本のTFRは2019年現在1.37)。

この低出生率の結果、2020年代中盤から中国の総人口は急激な減少期に陥る事が想定されており、2100年までには10億人を下回る想定が国連から出ている。

待ち受ける超高齢化社会

更に、中国の65歳以上人口比率は現在訳1割だが、これから進行する少子高齢化により、2100年時点では65位歳以上が人口の約3割を占める事が想定されており、日本と同等の超高齢化社会に襲われる事となるだろう。

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この様に、中国の人口状況はこれから悪化する事が想定される。中国の人口が減少に転じる事は生産及び消費活動に対する押し下げ効果があり、更に生産年齢人口比率の低下は(日本と同じく)医療などの社会セーフティネット予算の増加を招き、軍事に割けれれる予算額が減少する事となり、軍事的に米国と対抗する事が難しくなるだろう。

結果的に人口問題は中国の将来的な成長に対して大きな障害となることは避けられない。しかし、中国の人口減少が本格的に始まるまで、ある程度の時間がある。人口という「時限爆弾」を抱えている以上、その前に覇権を握ろうと暴発する可能性があるのではないか。次回はその可能性を分析する。

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