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「Don‘t Say Gay」米国でのLGBT論争の行方は?

アメリカフロリダ州議会は、ウォルト・ディズニー・カンパニー(ディスニー社)に認められていた自治特区権限を取り下げる法案を可決しました。これまでフロリダ州の経済発展に大きく寄与し、州政府とも良好な関係を築いていただけに、今回の対立は波紋を生んでいます。

ディスニー社とフロリダ州政府の争いの発端は、フロリダ州法1557号、通称「Don’t say Gay(ゲイを言うな)」法に関する論争です。本日の記事ではこの法律の概要、そして世論や各方面の反発について解説していきたいと思います。

法の内容は?

教育における親の権利法、通称「ゲイと言うな法案」は、2022年に導入・成立した初等教育のための新しい法令で、フロリダ州の公立学区において、幼稚園から3年生までの性的指向や性自認に関する教室での議論や、学校における性・ジェンダー教育の内容を定義づけるものとなっています。

法案では「学校関係者または第三者による性的指向または性自認に関する教室での指導は、幼稚園から3年生まで、または州の基準に従って生徒の年齢や発達に適切でない方法で行ってはならない 」と記載されています。又、どの学年においても「生徒にとって年齢相応または発達上適切ではない」方法で性的指向や性自認に関する指導を禁止しています。

デサンテス・フロリダ州知事は、「これ(LGBT教育)は、幼稚園児や1年生、2年生には不適切です。親は学校でこのようなこと(LGBT教育)が行われることを望んでいない」とし、4歳から8歳の子供たちにその内容を伝えるべきであり、高学年でも特定の題材に親が反対できるようにすべきと主張し、法案に賛同しています。

2022年2月、この法案はフロリダ州議会を通過した。その後、下院版の法案(HB 1557)は2022年3月にフロリダ州上院を通過し、フロリダ州知事のロン・デサンティスが2022年3月28日に法案に署名し、2022年7月1日に施行される予定です。

全方面からの反発

この法案には、アメリカ心理学会、米国弁護士協会、イクオリティ・フロリダ、ジョー・バイデン大統領などが反対の声を上げており、国政与党民主党やアカデミアを中心に激しい反発がある事が伺えます。

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更に、一部の法律学者の間では、フロリダ州内で提案された法案がアメリカ合衆国憲法修正第1条(表現の自由)に違反し、違憲となる可能性が懸念されており、法案可決後も数々の訴訟が発生する事が想定されています。学生からの反対も強く この法案に反発する生徒らによって、フロリダ州内の学校で学生によるウォークアウト(ストライキ)が実施されました。

この法案には民間からの反発も強く、LGBTアライを自認している企業からの反発も強く、全米で158社(マリオット、ヒルトン、アメリカン航空、AirBNBなど)が法案に反対する「人権キャンペーン」の請願書に署名したと報道されています。

ディスニー対フロリダ州

大論争となっているこの法ですがmフロリダ州に本社機能と従業員の多くを持つディスニー社が反対運動の中心的立ち位置を占める様になりました。ディスニー社の従業員の一部は法案に対してウォークアウトを計画し、大規模な抗議行動に発展しました。当初は静観する予定だった同社とボブ・チャペックCEO、そしてディズニーの親族であるシャルリー・コラ氏も法案に公式に反対することを発表し、コラもこの機会にトランスジェンダーであることをカミングアウトしています。

ディスニー社からの反発に対して、この法案に賛同する州政与党の共和党や保守メディはディスニー社を激しく批判しています。

世論は賛成?

企業や政治サイドでは反発が強いこの法案ですが、世論調査の結果によると、この法案は意外にも民主党・共和党両党の支持者から一定の支持を得ている事が判明しています。

米POS社による世論調査によると調査対象者にフロリダ新法の文言を見せ、その賛否を聞いた場合、61%の回答者がこの法案を支持すると答え、反対は26%に留まるする結果となり、ダブルスコア以上で賛成が反対を上回る結果となりました。

さらに、この法案に反対している民主党の支持層でさえ55%対29%でこの法律を支持している結果が判明しました。米国政治では流動層として選挙の勝敗を決定するとされる都市の郊外部分の有権者でも、60%対30%と大幅な賛成多数となっています。子を持つ回答者の間では更に幅が広く、 67%が法案に賛同しています。前回の大統領選でバイデン氏に投票した層であっても53% 対 30%、「自分にはLGBTQの友人がいる」と答えた層でも61%対28%と賛成多数となった模様です。今回の世論調査の結果は、「ディズニー社員やフロリダの進歩的な活動家にとって、衝撃的な数字」だと米ウォール・ストリート・ジャーナルは分析しています。

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民主党としては今年11月に中間選挙を控える中、前回の大統領選と同様、当初優勢な共和党を極端に保守的だと印象付け、中道票を取り込む戦略を練っているとされています。今回の法案に対する反対運動もその一環と位置付けられていますが、現時点では中道層がむしろ共和党側に賛同してしまう結果となっており、民主党は残り6ヶ月で巻き返しを図らなければいけない状況となりそうです。

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