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岸田内閣誕生へ。現状維持路線で経済は混迷か?

29日午後行われた自民党総裁選挙では、決選投票で岸田文雄氏が幅広い派閥の支持を集め、当選を果たし、10月4日に総理大臣として任命され、100代総理大臣として就任した。

「新しい日本型資本主義」や「小泉内閣以降の新自由主義路線からの脱却」を掲げ、「市場や民間に任せればいいという時代は終わった」などの発言を繰り返し、統制経済路線を強く推進する姿勢をみせている岸田総理は既に市場から見放されている。海外では「岸田ショック」とも呼ばれている相場が総裁選以降繰り広げられ、総裁選前と比較して一割程度日経平均株価(日経225)は下落している。

誰にも期待されない岸田総理

海外では構造改革を推進する事が期待されていてた河野氏の勝利に期待した上昇基調にあった株価は岸田氏の選出によって下降してしまった。もちろん中国恒大グループ問題や、海外での金利上昇も要因としてあるが、それを考慮した上でも日本の株価下げ具合は異常と言えるだろう。

反応は国外だけでない。国内の財界著名人が次々と岸田政権の方針に懸念を示している。楽天グループCEO、三木谷氏は岸田氏が掲げる「新しい資本主義」と社会主義、ポピュリズムと批判。同じく実業家の松田公太氏や堀江貴文氏なども岸田氏の姿勢を批判している。特に成長戦略やイノベーション戦略などが全く推進されない事に対する懸念が強い。

それでは、岸田氏のどのような政策姿勢が市場と財界の批判を招いているのか、ここから説明していきたい。

関連:岸田政権の新方針『新しい資本主義の実現』に関する新経済連盟の基本的な考え方についてー新経済連盟

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消えた「成長」

令和2年10月16日 成長戦略会議 | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ
成長戦略の要となっていた成長戦略会議(出典:内閣府)

岸田総理は小泉政権以降、「新自由主義」的な政策が推進されてきたと主張し、(事実に即さないが)これが結果として格差の拡大を招いたと指摘している。これまでの政策とは違う、「新しい資本主義」を実現すると主張する岸田氏だが、その中身は事実上の増税と規制強化を行う事かと推測される。

実際に、岸田総理は総理官邸の成長戦略会議と規制改革会議を廃止する事を表明。代わりに「新しい日本型資本主義構想会議」と「デジタル臨時行政調査会」を導入する事を表明した。これは、岸田政権が経済成長と規制改革を目標としない事を高らかに宣言したとも読める。

増税と経済統制

更に、岸田氏は年金問題の解決策として企業側に増税を行い、「勤労者皆社会保険」と導入する事を目標としている。年金問題はそもそも少子高齢化によって賦課方式による負担者と受益者の比率が悪化しているため、事実上の破綻をしている事が問題なのだ。そこで、岸田氏は社会保険料の増額で年金支給額を増やす事を主張している。財源となっているのは企業負担だが、もちろんそれは本来給料であるべき収入を前取りしているだけなので、所得税増税と大差ない。問題なのは、社会保険料の構造上、低所得者が一番損をする事が想像されるからだ。

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もちろん、企業に負担増を求めるのは帳簿を合わせるには正しいかもしれないが、資産保有者に対する給付終了などのミーンズテスト施策、そして給付年齢引き上げなど、現役世代の負担を減らす方向から始めないとますます世代間格差が広まる事となる。

更に、岸田総理は特定の業種の賃金を引き上げる為、「公的価格評価委員会」の設置を主張している。特に保育士の給与増加を目指したい意向だが、市場効率を重視しつつ給与を上げたいのであればバウチャーなど、消費者側への支給を行うべきだろう。ここでも岸田氏の統制経済的な一面が伺える。

これらの施策の財源として高所得者への負担増加を岸田氏は目論んでいる。その一環として金融所得税の増税と主張しているが、改革なき単なる負担増加はキャピタルフライトと経済悪化をもたらすだけだろう。

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既得権を守るだけの岸田総理

中間層の復活を掲げる岸田氏だが、そもそも近年の経済低迷を引き起こしている社会保険料負担の増加には全く手をつけず、増税による支出増によって自分がやりたい政策の為に財源を確保する事に必死になっている。特定の産業にいくら資金を突っ込んでも、分厚い中間層はできず、一部の既得権益・レントシーカーが潤うだけである。必要なのは増税と利益誘導ではなく、減税と制度改革なのである。

日本史上、増税で景気が良くなった例など一度もない。岸田総理は自らが進んでいる道をもう一度しっかり考えるべきだろう。

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