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外国人の公務就任権について

外国人の公務就任権について

 私のツイッターアカウントのタイムラインで、ある憲法問題について論争が起こっていた。発端は、とある方が「教員は全員日本国籍にすべきだ」という趣旨のツイートをしたことにあった。即座に私は、「公立学校で外国人の教員就任を認めないのは、憲法15条に違反するのではないか?」と考えた。もっとも、外国人の人権をめぐる議論は単純な問題ではなく、この問題は多くの議論を呼んでいた。そこで、今回は、教員を含む公務就任権が外国人に保障されているのかに関し、対立する見解を紹介した上で、私の見解を述べたい。

外国人の人権・総論

 ある人権が保障されるときに、その人権を制約した場合には、そのような制約が正当化されない限り憲法違反となる。したがって、人権が保障されるかがまず重要となる。

 外国人にも、日本国憲法上の人権が認められることは、既に過去の判例で明らかになっている。マクリーン事件最高裁大法廷判決(最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁)は、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としているものを除き、わが国に在留する外国人にも等しく及ぶものと解されるべき」と示しており、今日では大多数の学説も賛同している。

 ただし、上記の権利性質説を取ったところで、何が性質上外国人にも保障される権利なのかは、個別的検討を要する。例えば、外国人の参政権は、国民主権原理からして、憲法上保障されるものではない。したがって、このような個別的検討の段階で見解が分かれうるところである。

外国人の公務就任権

 公務就任権は、広義の参政権として、憲法15条1項の解釈から保障される権利である。また、学説によっては、22条1項の職業選択の自由として保障される権利と解している。

 この公務就任権が外国人にも保障されているのか。保障されていなければ、国籍条項を設けることが直ちに15条1項や22条1項から違憲とは言えないであろう。

 在日外国人の管理職就任権の有無が争われた、いわゆる管理職選考受験資格確認等請求事件大法廷判決(最大判平成17年1月26日民集59巻1号128頁)では、以下のような判断が示された。まず、「国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである」とした。すなわち、公権力を行使する地方公務員の管理職に外国人が就くことは国民主権原理からして許されないと判断している。

 次に、それ以外の管理職であっても、「普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である」と判断した。そうすると、明文上外国人の公務就任権自体が保障されているかは明らかではない。裁判官の中でも意見が分かれたため、あえて判断を避けた可能性が考えられる。

 もっとも、同事件の高裁判決では、外国人の公務就任権自体が保障されることを前提とした判断を行っている。他にも、憲法の著名な基本書である『憲法 第7版』(芦部信喜著)でも、外国人の公務就任権は広く保障されるべきであると記述されている。もし仮に、外国人の公務就任権自体が保障されると考えた場合、外国人が教員となる権利も保障されることとなり、国籍条項を設けることは違憲となるだろう。

 これに対し、外国人の公務就任権は保障されているものではなく禁止されていないだけだと考えた場合には、国籍条項を設けることが合憲となる余地もある。

多様性を可能な限り認めるべきである

 外国人の公務就任権については、外国人の公務就任権は一部の管理職を除き保障されていると、私は考える。すなわち、上記事件の高裁判決を支持する立場を取る。その理由は、公務就任権を保障するという立場を取った方が、外国人を差別する条件について憲法14条(法の下の平等)違反を導きやすいからである。

https://mainichi.jp/articles/20180513/ddn/010/100/038000c

 上記の記事のように、今なお外国人の教員が正規採用されにくい状況がある。また、副主任ですら管理職の登用が認められないと言う厳しい現状もある。政治の意思決定と無縁の職種に関しては、管理職であっても、日本人が適任で外国人が適任でないとは、言えないのではないか。政策論としても、政治の意思決定に関与しない場面では、外国人の公務就任権を可能な限り認めるべきであると考える。

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