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【政治家インタビュー#7】国民民主党 伊藤孝恵参議院議員 前編

おとな研究所は、ヤングケアラーや内密出産問題など、子ども子育て政策に力を入れている国民民主党の伊藤孝恵参議院議員にお話を伺った。

今回はその前編となる。


▲伊藤孝恵参議院議員(本人公式 HP より:プロフィール | 伊藤たかえ Official Site (itoutakae.info))

政治家を志したきっかけ

政治家を志したきっかけを教えてください。

私はもともと公募なんです。だから、政治家の知り合いがいたとか、親族がいたとか、政治を学んでいたとか、政治に興味があったとか、そういうのでは全くなくて、自ら手を挙げて公募に応募して、選挙に出ました。そのきっかけは、次女が耳の障がいを指摘されたことがきっかけです。

彼女は生まれたときに、左の耳が聞こえないと言われました。一側性難聴と言われますけれど、それは今の医学でも治らないし、未来の医学でも治らないと言われています。私はもともと報道記者をしていたので、障がいのある方に自分はネガティブな感情はないと思っていました。

ただ、我が子が、自分が障がい児の母になるといったときに、正直とてもショックでした。ショックを受けた自分にもショックで眠れませんでした。

今考えると、あれは産後うつというか、ホルモンバラスの整っていない時に、告知のされ方もひどくて、眠れないをずっと過ごしていました。そうして自分を責める中で、たまたま見かけたのが、民主党(当時)という政党の公募でした。

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フェイスブック広告で議員を募集していて、なんとけしからんと思って開いたら、そこにいたのが玉木雄一郎でした。

そこに書いてあったのが、「世の中には納得のいかない法律や制度が沢山ある」と。「それを直接、唯一変えられるのが議員の仕事だ」と。そして、山尾さんが「議員の仕事は一つだけ。子どもの未来を創ることだ」と書いてありました。

普通の状態の時なら、何を綺麗ごとと思っただろうけど、その時の私はそれを見た瞬間に号泣をして、一晩で一気に応募書類を書き上げて、翌朝投函をしました。

これが本当に立候補につながっているので、あの夜のことを論理的に話すことは今でもできないのですが、なぜですかとこういう取材で聞かれるときに、最近になってようやく、障がいをもつ人たちに世の中は冷たいとか、不公平だとか、理不尽だとかって愚痴って生きるのではなくて、だったらそれを変えてやると立ち上がる母としての人生を生きたかったのかなと自分の心を整理しています。

議員になって感じたこと

議員会館の部屋(国民民主党公式HPより:【クローズアップ若手議員】出来ることから変えていく。子どもの未来を作っていく。それを出来るのが政治家だから – 旧・国民民主党 (2018年5月〜2020年9月) (dpfp.or.jp))

議員になって得たことや、感じたことについて教えてください。

私も政治に詳しい訳ではなかったので、愛知の51万9510人の方に伊藤孝恵と名前を書いてもらってここに来て見たときに、まず驚いたのは、女性議員がほとんどいないということです。

かつ、私は当時1歳と3歳の子どもがいたのですが、乳幼児を二人育てながら議員をしている人が、ただの一人もいなかったんです。

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びっくりして、なるほどと。それはいろいろな子ども子育て政策の的外れ具合とか、声が届いていないみたいなことを言っている人がいたが、そりゃそうだと。この同質性の高い議員たちの中にあって、それらの声が届かないというか、当事者もいない。子ども子育てをしたこともないし、遠い遥か昔にしか経験がないという人が、今私たちが生きている生々しい声を代弁できるかと言われればそれはできません。

当たり前感覚がずれているというのは感じたし、それはおかしいとか言って変えられるものでもなく、すぐに変わるものでもありません。それらを馬乗りになって変えられることをすごく嫌う人たちというのが分かりました。

では、何か現状を変えたいと思ったときに、みんなは変えるとか、変化を起こすというのだけれど、たぶん変化なんてすぐに起こせるものではないんです。

明るく違和感をつくって、時に「すみません」とか、「ごめんなさい」とか言いながら、違和感をつくる。それに慣れてもらって、2年経ち、3年経ち、振り返ると変わった。これを変化と言うのだろうと思っているので、この(議員会館の)部屋はけしからんと1500件のクレームが来たけれども、今もこういうものを必要に迫られて、次女が待機児童だったので作った部屋ですけど、こういう違和感を持っていくつもいくつも作って皆さんに許してもらって、変化を起こしてきた6年間だったと思います。

ママパパ議連について

▲ママパパ議連の様子(本人公式HPより:活動報告 | 伊藤たかえ Official Site (itoutakae.info)

2018年にママパパ議連が設立されてから、子育てされている議員さんに違和感の共有がされたとか、流れとかは感じますか。

良い質問ですね。

当時は愛知県から往復5時間かけて毎日国会に通っていました。夫は石川県にいたし、私は新人議員だけれども、子どもたちは保育園に入れなかったので、犬山の実家から通わざるを得なかったから通っていました。

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そうしたら、うちは認知症のおじいちゃんおばあちゃんが倒れてしまって、このままでは死んでしまうからこっちに連れてこなきゃと思って連れてきたら、今度は私が回らなくなりました。

「皆さんどうしていますか」ということが聞きたくて、ひたすら「助けてください」、「どうしていますか」と710人の国会議員をまず調べたら、私みたいな人が20人いました。2人育てている人はいなかったけれど、1人乳幼児を育てながら議員活動をしている人はいたから、その20人全員を訪ね歩いてみました。

そうしたら、「わかるわぁ」とか、「これじゃあ生活が立ち行かない」、「自分の職責を全うできない」とみんな思っていました。でも、「変えてください」と言うと、我田引水で「議員になるんだったら、そんなものは覚悟していただろう」とか、「24時間戦うのが議員のフォーマットだってわかっていただろう」と言われてしまうから、みんな声が出せませんでした。

だから、超党派ママパパ議連の検討というのは、実は2つのミッションがあって、1つは党でそんなに隔たりのない子ども子育て政策が進まないのが問題だから超党派で進めようというエンジンと、もう1つは、この子ども子育て層の声を我がものとして聞ける議員を増やす。増やすために私たちの働く環境だって変えていくというこの両輪で走っています。だから、最初私が訪ね歩いた20人と共有し合ったのは、実は後輪の方だったりするのですが、そういうふうに集まった議員たちだからものすごく結束も固いです。

最初16人で始めたのですが、今は全党から84人も参加していて、派閥でいえばちょっとした一大派閥です。これまたチームワークもすごく良くて、例えば乳児用液体ミルクの発売の解禁にこぎつけたり、最近では多胎ママパパ1000人会議というのをやってみたり、いろんな提案をしています。

多事ママパパ1000人会議では双子や三つ子を育てている方々1000人に集まってもらったのですが、国会の中にも双子のママパパって5人います。その全員に集まってもらって、多胎育児支援の話をしたり、本当にいろいろなありとあらゆる政策を話し合しあったりして発信しているので、この超党派ママパパ議員連盟というのは、ものすごく仲間が頼りになります。

私は野党の一年生なので、私が誰かから一人の人からバトンもらって、「うわ、たまんないね」、「わかった、やるわ」、「ちょっと待ってて」と言って走れるトラックは結構決まっています。でも、それを与党の議員に渡せばまた違うトラックを渡せるし、大臣に渡せばもっと違うトラックを走れる。

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だから、このバトンを受け取ってもらう仕組みっているのが、超党派ママパパ議員連盟の中にあって、会長は野田聖子大臣で、副会長は蓮舫さん、幹事長は橋本聖子さん。超党派で84人いるわけだから、だれか受け取ってと言うと誰かが受け取ってくれたりして凄くいい仲間です。

YouTubeについて

伊藤さんはYouTubeでの発信を積極的にされていますが、発信する中で心がけていることや意識していることを教えてください。

嘘をつかないということです。全部見せるということです。

政治家って本当に要るのかどうかもわからない生き物になっているし、政治家って表の顔と裏の顔、本音と建前の間にマリアナ海溝がある感じがしませんか。私もそう思っていたし、事実そうなんですが、そういうのは政治不信のかまびすしいこの昨今において、本当に邪魔だと思っていいます。だから、私は生活感も弱音も見せます。

だけど、感じてほしいのは、どうしてもこれは政治と暮らしは何があっても繋がっていて、かつ、政治がよくないとか、「あれはけしからん」というのなら来てよ!という話で、私のように何もないのに政治家になってここで七転八倒してぼろぼろになるのだけど、「それでも見て!私何もないけど何とか生きているし!こんな私でもできるのだから、あなたには絶対にできる!」ということを伝えるために嘘を言わない、腹にあることしか言わないというのを心がけています。

政治家ってストロングな面持ちをしていて、全能で、全部を語れて凄い人しかなれないイメージがないですか。高学歴で、タレントさんだったり、お金持ちだったり、二世三世だったりする人たちで、事実そういう人が多いです。

でも、この同質性の高いこの町で、この社会の多様性についていけなくなっているここに、いろんな人を迎えたいと思っているときに、私もそんなふりをしていられない。国民民主党を選んだ時点で、選挙厳しいなってわかっていました。

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でも、任期まであと1年というのに、私は何もない中で議員にしてもらって、この中をたくさん見せてもらって、最後に何を伝えたいかと思ったときに、政策解説とか、政治というのは国家を語ったり、素晴らしいものですとか全然語りたくなくて、ここに本当にいろいろな感情を持った、もっといろんな経験をもったもっと彩りのある人が来れば、政策はもっと彩りのあるものになるはずだから、「来て!」と。「私見て!」と。「私だったらあなたの方が政治家できそうでしょ」と政治への障壁を下げるなら私できるわと思ってやっています。

ヤングケアラー問題について

伊藤議員は、ヤングケアラー問題に取り組まれておられますが、そのきっかけや今日までの経緯、今国会での政策的議論や今後の展望などを簡単に教えてください。

私は次女の耳の障がいがきっかけと最初に言ったと思うんですけど、あの時にちょっと言えなかったことが一つあるんです。それは、私は彼女を産んで、そして彼女に障がいがあると言われたときに一番に思ったのは長女のことでした。

私は39歳で次女を産んでいるので、私の方が早く天に召されるわけです。その時は、障害の程度が分からなかったから、その時に、この子を抱いて私が死んでしまえば、もしかして長女はもっと自由に生きられるんじゃないかって思ったんですよ。まあ愚かな母親だと思われるかもしれませんけど、産後鬱ってそういうものなんです。

だからきょうだい児(障がいを持つ兄弟ををケアすること)についての自分の中に刻まれてしまったあの感情と言うのは、今でも抜けるものはないし、抜けることもないんです。

そうなったときに、ヤングケアラーというのは育児や介護や学業を両立することと言われているけど、そうではなくてきょうだい児だったり、外国ルーツを持つ親に代わって通訳をする子だったり、そういう子たちを範囲とするヤングケアラーと言う定義がない訳です、この国には法律がない訳だから。定義もない、しかもこの国の政治家たちはそれを「お手伝いだろ」と言ってしまい、正しく理解をされていません。

そして調査もしてくれなければ、実態もわからない。実態がわからなければ政策に繋がりません。

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私の中でヤングケアラーというのは我がごとだから、18回と国会で相当しつこく質問しています。

その結果、国が調査をしてくれて、こんなに深刻な問題があったのかというのがようやく明らかになったので、いま報道等で言われている通り、自民公明国民の3党の第二回実務者会議というのが19日にありますけど、私は自分が書いて参議院に提出しているヤングケアラー支援法案の成立を求めています。

公明党さんは、運用でなんとか行けないかと言っていますが、自民党の田村元厚労大臣がどう判断されるか、自民党さんがどう考えられるかという、いま交渉の大詰めです。

分かってほしいのは、ヤングケアラーはかわいそうな存在ではないということです。うちの長女を含めてかわいそうな存在ではなくて、ただただ家族を愛していて、ただただ一生懸命毎日を生きているんですが、物差しを充てたときに、あふれてしまっているところがあるんです。

このあふれてしまっている部分は、大人や政治家や行政が引き取って、家族ごと支援をして、あなたには勉強してください、あなたには学校に行って、恋をして部活をして、そして翼を授けてもらって、大人になっていってほしいんです。

そういうのをつくるためには絶対に法律が必要で、やっぱりヤングケアラーというのは、一つは生まれた時からその状態なので、自分がその支援をされる対象だと気づいていないんです。

そしてもう一つは、思春期特有の羞恥心から、お友達と自分が違う者だとバレたくないから、自分で言えない。隠れている困窮者がいるから、ちゃんと全数調査をして、何県何市何学区にどういう支援を求めている子がいて、その子を家族ごと支援して、その子が来年はどうなっているかちゃんと全数調査・継続調査をしなければ、ヤングケアラーというのはきっとずっと隠れています。

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だから法律が必要で、あまりに多岐にわたる問題で、七割の自治体が無視だから法律を絶対に作ろうと。任期の限り、絶対に道筋を付けようと思っています。

ヤングケアラー問題はおっしゃる通り調査がものすごく大事で、全数調査というのはできてはじめてそれに合った政策というのができると思うんですけれども、一方で国民の側のヤングケアラーの理解とか認識の広がりが今後課題になっていくと思うのですが、それにはどういったアプローチを考えていますか。

まさに今2つのことを思いました。1つは今AC(公共広告機構)がやってくれいるんですけど、あれは、友達が野球をしているのを悲しい顔して見て家に帰って、ご飯を作って…みたいに、かわいそうな存在に描かないでほしいと思っています。

ヤングケアラー支援先進国のイギリスはそこを間違えてしまったんです。かわいそうな存在と言うふうに問題が広がる入り口で描いてしまったことで子どもたちはより隠れたし、ケアをされている人たちがより自分たちをかわいそうなものにしてしまっているというスティグマが生まれてしまった。このスティグマが余計問題を根深くしてしまったというのがあります。

もう一つは、やはり全数調査をして、ちゃんと改善されたかというのを見に行かなければいかないというのはそうなんですけども、その際に、その子たちに伝わっていないという問題があります。

毎日新聞出版社の4人の記者たちがずっとヤングケアラーの件で私と伴走をして、国会で何かやっていても必ず広がらないから、私はメディアを捕まえるんです。生理の時はNHKを捕まえたし、ヤングケアラーでは毎日新聞を捕まえました。そうでないと明らかになっていかないから。

この4人の記者が書いたヤングケアラーという素晴らしい本があって、そこの中に1.5頁私のことが書いてあるんだけども、は「この本は素晴らしい」と。「たぶん世の中の人たちに広がっていくだろう」と。そして、「これを児童書や絵本にしてくれ」と彼らに言っています。

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伝えたい人たちに伝わるものにしてくれないといけません。さらに文科委員会で、副教材にしてくれと言う話をしていて、「あ、これ私のことかも」というふうに気づかせる、当事者に届けるというのは、やはり工夫がいるんです。そのため、毎日新聞出版社は真剣に検討してくれています。

19日の与野党の交渉の場でもヤングケアラーの件の国民の理解というのはいると思うし、たくさんの人に知ってもらう、一番間違えてはいけないかわいそうな子ではないというところは、ここは本当に丁寧に進めていく必要があると思います。

子ども手当て・少子化対策について

自民党が提言した「第二子に月3万円、第三子以降は月六万円(所得制限あり)」の児童手当案についてどう感じるか教えてください。

Twitterで何気なくそのニュースを見たときに、「なぜ第一子から支援してくれないの?」、「なぜ目の前にいるすべての子どもを支援しないの?」、「どうして真の少子化対策とは子どもを産み育てると思える給与の確保と徹底的な子ども子育て支援だとわかってくれないの?」と思いました。

これをつぶやいたら、ものすごくバズってびっくりしたんですけど、まさにそれって政策哲学の話なんです。子どもの学びや育ちに線引きは必要ない。これに共感する人だったら、そんな政策は出てきません。

でも、まさにそこがずれているから菅さんの所信表明演説では、少子化パート10行が全て不妊治療助成でした。私も子ども二人ともを不妊治療で授かっているので、ありがたく思いますけれど、やっぱり少子化対策・不妊治療助成が10行だったときの気持ち悪さったらないでしょう?岸田さんも岸田さんで、奨学金の出世払いなんて世知辛すぎます。

そういう産めよ増やせよという少子化対策は間違っているから卒業すべきで、そこが我々の党とは違うところです。

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でも、前回の衆院選のパンフレットをつくる際にも、やっぱり3歳までは親が育てるべきだと言う人もうちの党にはいました。だけども、その時味方してくれたのは、山尾さんであったり、矢田わか子さんだったり、田村麻美だったり、舟山さんや西岡さんだったりで、「これかシスターフット」と、「これがクリティカル・マス3割」かと、すごく稀有な体験をしました。その結果、「国民民主党は産めよ増やせよの子育て政策から卒業します」との文言を勝ち取りました。

今の問題になっている所得制限もそうだし、外国人児童生徒の学びの場を保障しないというのも全部ここなんです。子どもの学びや育ちに線引きは必要ありません。この一言で、分かり合えるんだったらそんな違いはないけれども、そうじゃないから所得制限が書かれて、外国人の排除が生まれて、第2子第3子が排除されるわけです。

動画編


前編は、ここまで。後編では細かい政策について切り込みます。後編はコチラ

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