今こそ、カーボンプライシングを:炭素税への対案

今、全世界で地球温暖化を筆頭とする気候変動対策に世界各国が動いている。目標は産業革命前と比べ、地球平均気温の上昇を1.5度までに食い止める事だ。その為には世界各国が2050年前後までにCO2を始めとする温室効果ガスの純排出をゼロにする事が重要となる。温室効果ガスの純排出ゼロは、二手の対応によって達成される。

The awful truth about climate change no one wants to admit - Vox
IPCCによる炭素排出予測(左軸)に対する想定気温上昇(右軸)出典:IPCC

一つ目はカーボンキャプチャーなどに代表される「空気中の温室効果ガスを減らす」手段だ。これは、現在技術が進歩しつつあり、IPCC等主要な温暖化対策機関の想定では2040年以降主流の手段になるうるが、現時点ではこの手段を使って純排出を減らすのは困難であろう。

二つ目の手段は、実際に温室効果ガスの排出を減らす事だ。これに関しては、原子力や再生可能エネルギーの発達によってより技術的に容易となっているが、既存の火力エネルギーの方が低コストであるが故に市場での採用は遅れたままだ。しかしながら、温暖化対策を真剣に取り組むのであれば、火力エネルギー源を原子力又は再生可能エネルギーに転換する事が避けて通れない

市場が現在、高炭素排出な体質にあるのを是正する手法として効果的なのは、「カーボンプライシング」である。これは炭素排出によって起きる外部性コストをそのまま排出者に転嫁させ、これによって排出削減を目指す政策だ。

そこで現在環境省が提唱しているのが「炭素税」だ。炭素税は簡単に言うと、CO2排出自体に税と言うコストを掛ける制度だ。これは、カーボンプライシングではあるが、政府にとっても一トンあたり数千円から一万円程度、最大10兆円程度の新しい大規模財源を確保する手段にもなる。当然、それだけ経済にもダメージを与える事となるだろう。

炭素税導入側のロジックでは、この税収は環境技術開発振興などに充てられ、政府投資を強化する事による経済対策を行う、と言われるが、政府が策定する民間市場に対する技術介入計画で成功した例はほぼない。逆に第五世代コンピュータ計画や情報大航海プロジェクト等々、コストだけかかって、自由経済による配分機能に研究開発を任せた他国に結局負けた例は山ほどある。よって、大幅な新税は経済にダメージを与えるだけでなく、政府の裁量支出による技術革新には全く期待できないのである。

しかしながら、炭素排出を大幅に削減する為にはカーボンプライシングは避けて通れない課題である。そこで提唱されるべきなのが、日本でもエミッション・トレーニング・スキーム(炭素取引・ETS)を導入する事だ。

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ETSは炭素排出企業に対して、これまでの排出規模や産業平均などを考慮した「排出クオータ」を与える制度だ。このクオータを下回る排出を記録した企業はその残りを炭素市場に売りさばき、それを超えた企業はクオータの購入を行わなければいけない。このクオータは国の炭素削減目標に沿って年々下げられる。この制度は炭素排出の外部性を価格に組み込むだけでは無く、市場原理による低排出者の優遇を同時に行う事となる。即ち、炭素排出を減らす事に莫大なインセンティブが働き、自由経済下で排出を減らす取り組みや技術開発投資が行われる事となり、生産性の向上も見込まれる。企業間が取引を行うクオータは国債や株券と同じく中央市場で扱われる事となり、結果的に金融商品となり、新たな産業も育成される事となる。

ETSは既にEUや中国、そして米豪の複数の州で採用されており、実際にCO2排出を減らす効果があると認められている。逆に炭素税を導入したケースでは政治論争が勃発したり、景気低迷で数年内にETSへ変更、又は撤廃されたケースもある。

Carbon taxes and emission trading worldwide
緑:ETS導入国、青:炭素税導入(予定)国 黄色:カーボンプライシング導入検討国

更に、炭素税とは違い、市場内で完結される制度であるが故に、国に新しい財源を持たせる事にはならないし、大幅な増税にもならない。元々外部性があった市場に、単純な市場原理を持ち込んでこれを解消させる制度なのだ。

カーボンプライシングはこれから環境対策の為、絶対避けて取れない道ではある。しかし、経済を殺し、政府を肥大化させる増税で対応するのか、自由と市場原理を最大限尊重するETS制度を選ぶのか。答えは明白である筈だ。

 

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マクロスおとな研究所 経済担当

投稿者プロフィール

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某国立大学の文系学生です。主に経済や選挙制度に関する記事を書きます!
※2021年7月15日を以て引退。

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  1. 2021年 7月 15日
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