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高校「現代社会」廃止で22年度から「公共」新設へ 社会科教育、何が変わるのか

2022年4月から、高等学校において公民系の科目である「現代社会」が「公共」へと置き換わる。

従来の「現代社会」の教科書に比べ、「公共」の教科書は、SDGs(持続可能な開発目標)など社会的な課題を通じて自分の考えをまとめ、授業で話し合いを行うといった内容が目立つ。

いったい、新教科の導入で社会教育がどのように変化するのだろうか。選挙権年齢が18歳に引き下げられたことにより「主権者教育」が盛んになったが、それとの関連性はあるのだろうか。

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公民科だけでなく、社会科全体が大きく変わる

2022年度から新しく実施される高校の学習指導要領では、高校の社会科全体が大きく変わる。

地理歴史科はこれまで、「地理A/B」「日本史A/B」「世界史A/B」に分かれており、地理/日本史のいずれか+世界史のいずれかの2教科が必修だったのに対し、来年度からは「地理総合」「歴史総合(日本史+世界史)」がそれぞれ必修となり、「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」から1科目必修となる。

現行では、世界史が必修で地理/日本史は選択必修だったため、理系の生徒を中心に日本史を学ばない生徒がいることが問題視され、日本史の必修化を求める声があった。このことから、必修とされた新設の「歴史総合」では、日本史/世界史の双方を学ぶことになる。

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公民科はこれまで「現代社会」または「倫理」「政治経済」が必修となっていた。来年度からは現代社会は「公共」に変更、必修となり、「倫理」「政治経済」いずれかの選択となる。

「現代社会」改め「公共」が必修となり、重要性が増したといえるだろう。いったい高校生は「公共」でなにを学ぶのだろうか。

参加型の学び、新時代を見据えた学習内容に

今回の「公共」導入により、各社の教科書は参加型の学びを重視したり、新時代を見据えた学習内容となっている。

東京書籍が発行する教科書は、以下の3点を特長として掲げる。

東京書籍

公民科の核となる学習事項を網羅し、従来の現代社会の「知識・理解」を深めることに加え、課題探究学習や参加型の授業を導入する。実際に「模擬請願をやってみよう」では「請願の基本を知ろう」で請願権、請願のシステム、請願書の書き方について取り上げ、その後の「請願書を作ってみよう」で生徒に実践的な活動を行わせる仕組みになっている。また、QRコードで読み取ることのできるデジタルコンテンツを搭載し、生徒の予習などの学習に役立てる。

教育図書が発行する教科書は、「暗記する公民科から考える公民科へ!」を掲げる。

教育図書

公共の学びは単なる知識の習得では足りないとし、その知識を用いて現実社会をどう捉えるか、生徒の思考力や判断力を問うものとなっている。そのために、実際の社会課題やリアルな問題を考えるといったテーマを設定する。実際の教科書では、「生徒会の予算をどう分配するか」といった、身近かつ公共の学習にもつながるテーマが提示されており、生徒が自分事として考えられるような仕組みになっている。また、イラストや図解を用いて、視覚的に知識を理解するというような工夫もなされている。

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数研出版の発行する教科書は、「身近な話題から考える」を掲げる。

数研出版

資料集並みに補足資料・写真・図版を豊富に掲載し、本文は知識量を確保しつつも簡潔にまとめた。また、「18歳成人」を実感できる資料を多数提示して問題提起を行い、生徒の主権者意識の高揚にもつなげる。実際の教科書では、コンテンツを効果的に配置し、デジタルコンテンツも搭載する。

このように、どの教科書も「対話」を中心とした探究活動を取り入れるなど、公共導入の主目的である「主体的、対話的で深い学び」を色濃く反映したものとなっている。

「公共」の進む先は

今回は、来年度から導入される高校の新教科「公共」について取り上げた。18歳選挙権導入により、高校生がより社会の諸課題について考える必要がある中、この「公共」導入が果たす意義は大きい。現在主に「総合的な学習の時間」で行われている主権者教育ともリンクする部分があるだろう。

現状、若者の政治参画は進んでいない。18歳に選挙権年齢が引き下げられたが、10代・20代の投票率は3~4割前後と低調をたどっている。10年後はどんな社会になっているのだろうか。新教科の導入だけでなく、どう活用するか。教える側の技量も求められている。

参考資料

新教育課程「公共」の授業を考える —中学校「公民」の流れを踏まえて―|東京書籍

公共|東京書籍

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高等学校 公共|教育図書

高等学校 公共|数研出版

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