来年2月4日に開会式が行われる北京冬季オリンピック。しかし、開催を目前にして新たな問題が浮上している。
アメリカ、オーストラリアに続き、イギリス、カナダといった主要先進国が相次いで外交的ボイコット(選手が出場できなくなるのではなく、政府関係者を派遣しないこと)を表明したのである。
なぜこの期に及んで外交的ボイコットを表明したのか。狙いはいったいどこにあるのか。今回の記事で明らかにしていきたい。
五輪ボイコットに関しては、以下の投稿もご覧ください。
外交的ボイコットの背景とは
主要先進国が相次いで外交的ボイコットを決めた背景には、中国による新疆ウイグル自治区での大量虐殺や人権侵害があげられる。近代オリンピックの創始者であるクーベルタンが提唱したオリンピズムに照らせば、それは当然のことだといえるだろう。
オリンピズム スポーツを通じて心身ともに調和のとれた若者を育成すること、異なる国や地域の人と交流することで、互いを尊重し、偏見をなくすこと、スポーツを通じて世界平和を構築すること
これに対して中国側は、大量虐殺について「世紀の嘘で事実ではない」、「嘘とデマに基づいて北京冬季五輪を妨害しようとすることは、アメリカの道義と信頼を喪失させる」と主張した。さらに、「断固とした対抗措置をとる」と猛反発した。ドミノのようにボイコットの動きが起こるのを警戒しているのだろう。
日本はいまだに対応を明らかにしていない。岸田首相は「オリンピックの意義や、我が国の外交にとっての意義等を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」とした。
ボイコットは五輪の政治利用か?
主要先進国が相次いで外交的ボイコットを表明したことについて、「五輪の政治利用にあたるのではないか」と懸念する声がある。
確かに、「人権侵害行為を容認しない」というメッセージを示す目的ではあれ、スポーツの祭典を利用するのは間違っているのかもしれない。
しかし先月には、中国の女子プロテニス選手が前副首相から性的関係を迫られたと告白した後、行方がわからなくなるという問題が起きているなど、中国の人権侵害により注目が集まっている。国際的な世論を見ても、中国に厳しい姿勢を示すべきという声が高まっており、主要先進国は相次いでこのような対応を取ったのだろう。
しかし、このことが直接的な人権問題の解決に繋がるから疑問だ。外交的ボイコットは「象徴に過ぎない」とする米メディアもある。
選手を巻き込むべきではない
今回の外交的ボイコットは、極めて賢明な判断といえるだろう。政治上の目的で選手が五輪に出場できないとなるのは得策ではない。
先日、以下のツイートが反響を呼んだ。
北京オリンピック開催に反対する投稿者は、男子フィギュアスケートの羽生結弦選手にオリンピックのボイコットを呼びかける意図をつづった上で、関係各所にに当てた3枚の手紙を公開。
Twitter上では「羽生君を政治利用するな!」「選手の人権を侵害している」「池江選手にやった行為と同じだ」と批判が殺到した。
今夏の東京五輪開幕前には、競泳の池江璃花子選手が辞退を強要される事態も発生した。
アスリートへの強要、ひいては誹謗中傷が問題となっている昨今、無関係なアスリートを巻き込むことはすべきではないだろう。
正しい主張ではあれ、このような動きには難しさがつきまとう。今後、日本を含め、国際的にどのようなムーブメントが起こるのか注目だ。
引用・参考資料
・【詳しく】外交的ボイコットとは アメリカの思惑 中国の反応は
・羽生結弦へ北京五輪ボイコットを訴える手紙3通 SNSに批判殺到「政治利用するな!」
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