大学の財務問題を紐解く ー 交付金と教育の未来

 国公立大学は、その学費の安さと教育水準の高さから、現在も高い入学競争率を有している。しかしながら私立大学よりもその運営費が少ないとされ、設備などで劣る面も多いと囁かれている。国公立大学の予算配分が近年どのように推移しており、私立大学とどのような差があるのか、改めて考えてみよう。

大学の金銭運用の仕組み

 そもそも、国公立大学はどのように運営されているのだろうか。国公立大学の財源は主に、国により交付されるものと、自己収入と呼ばれるものに大別される。国によって交付されるのは、「運営費交付金」と「施設費」の2種類であり、自己収入には学生からの納付、附属病院の患者による支払い、企業等からの支払いや研究費の獲得などが含まれている。

 このような交付金に資産などを加えた、東洋経済オンラインによる「国公立大学総資産ランキング」を参照すると、1位は東京大学の約1兆3960億円である。2位に約4990億円の京都大学、3位に約4684億円の大阪大学がランクインしている。また、総資産の半分以上が土地を占めている大学が多い。

 一方私立大学は、学生によって納められる学納金、国によって交付される補助金、そして寄付金に収入源が大別される。寄付金が大きな影響力をもつことは、国公立大学に比べて特異な点だといえるだろう。

 国公立大学では総資産ランキングについて言及したが、続いて私立大学では収入ランキングに目を向けてみよう。第一位は日本大学で、約1946億円の事業活動収入を得ている。第二位には約1580億円の順天堂大学、第三位には1569億円の慶應義塾大学が続く。

 収入の大きい大学の特徴として共通しているのは、医学部を擁しており附属病院からの収入が多いこと、もしくは学生数の多いマンモス校であり学費納入が多くなっているということである。

国公立大学と私立大学の学費比較

4年間でかかる学費の差

国公立大学と私立大学の最たる違いはその「学費」だろう。学部によっても異なるが、平均すると

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  • 国立大学文系:242万5000円
  • 私立大学文系:322万7001円
  • 国立大学理系:254万4662円
  • 私立大学理系:445万5448円

が4年間でかかる学費だとされている。

(参考:https://axivacademy.com/info/column/daigakubunseki/177649)

 国公立大学については、 文部科学省が「標準額」を定めており、大学はこの額の上限20%以内に入学金及び授業料を設定する必要があるため、大学や学部ごとに大きな差はない。逆に私立大学については制限はなく、むしろ2018年には、健全な財務運営のために経営指導を強化する方針を文部科学省が示した。

学費の時系列推移

 大学の学費は年々増加傾向にあり、これは国公立大学、私立大学どちらかに限った話ではない。

(文科省公式サイトより)

 平成の最初には国公立大学で34万円、私立大学でも57万円ほどだった授業料は、平成の終わりには国公立大学で53万6000円、私立大学で86万9000円ほどまで上昇している。

 全体的な物価上昇や、教育や設備の質の増加にその要因を求めることもできるだろうが、高等教育を受けるために莫大な金額が必要とされるようになったことに変わりはないのだ。

交付金は減額の一途を辿っている

 では、国公立大学の財源の大半を占める国による交付金はどのように分配されており、どのように推移しているのだろうか。

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交付金の大学ごとの配分

 2019年度予算で最も多くの交付金を受け取っているのは東京大学であり、822億円が交付されている。続いて大きな差を空けて京都大学が561億円、東北大学が458億円を受け取っている。一概に国公立大学と言っても、交付額には大きな差があるようだ。それぞれの大学にどのように金額を配分するかは、学生数と教員数、また特定の期間について設定した機能強化の方向性とその評価、政策課題についての対応や研究などに基づき、有識者などを交えて設定されているということも分かった。

 全体として、国公立大学への交付金は減額の一途を辿っている。平成16年度から令和2年度までで、国公立大学法人交付金予算額は2000億円減少している。しかしながら経常費用は平成17年度から令和1年度までで7000億円増加している。国公立大学が厳しい経営を強いられていることは明らかである。

(文部科学省高等教育局 国立大学法人支援課より)

 ここで見逃してならないのは、平成17年度から令和1年度までで、計上収益もまた7000億円程度増加しているということである。しかしながらこれは附属病院収益や寄付金の増加に起因するものであり、国からの交付金の占める割合が小さくなっているということは変わらない。

日本は高等教育を軽視する国になってしまうのか

 国公立大学でも私立大学でも、高等教育を受け始める18歳とその養護者の負担ばかりが増えている。国のさらなる発展のために次世代を育成する環境である大学に対し、国は交付金を減らし、寄附金など自己収入で賄わせようとしているのだ。附属病院のない社会科学系に特化した大学などは特に、厳しい経営をこれからも強いられることだろう。

 より快適な施設や質の高い教育を提供しようという意思がないのであれば、この国の学術研究や経済発展は他国から取り残されるばかりである。参院選の投票日が近づいているが、有権者の皆さんは高等教育の学費問題も視野に入れてみてはいかがだろうか。

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おとな研究所 編集部員
ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。

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