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【イチから解説】為替介入ってなに?

 2022年9月22日、日本銀行による11年ぶりとなる為替介入が行われた。円安是正のための介入としては24年ぶりとなり、大学生、ましてや中高生ではその概要を把握、理解するのが難しい人もいるだろう。

 この記事では為替介入の概念を説明し、今回の介入についても簡単に述べる。

為替介入とは

定義

 「為替介入」とはそもそもなんだろうか。為替介入は外国為替市場介入とも呼ばれており、正式名称は「外国為替平衡操作」という。これは、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることを目的として行われるものである。

 つまり、為替市場が大きく動き、日本円になんらかの影響が出ている時、その動きを和らげるために政府の指示で円の売買が行われるのが「為替介入」である。日本が単独で行う「単独介入」と、各国と合意の上、一緒に同じような動きをする「協調介入」が存在し、状況によってどちらになるかは異なる。

プロセス

 為替介入は政府によって行われる金融政策のひとつである。これがどのように実行されるかというと、まず日本の中央銀行である日本銀行が財務省に報告する市場の情報をもとに、財務大臣が為替介入の必要性を判断する。

 必要だ、と判断した場合にも、日本銀行は変動要因やマーケットの状況など、実施有無を判断するのに必要な情報を改めて提供する。これに対して財務省が最終的な判断を下し、日本銀行に指示を行うのである。

実際の動き

 為替介入には2つのパターンがある。「円買い・ドル売り介入」がされる場合と、「ドル買い・円売り介入」がされる場合である。前者が行われるのは円安が急激な場合である。今一度確認すると、円安とは、

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円の他通貨に対する相対的価値(円1単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のこと

日本銀行 https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g18.htm/

である。

 つまり、他の通貨と交換しようと思った時、多くの量がなければ「1ドル(など)」を手に入れられない時、日本の円の価値は下がっており、円安という状態になる。この時、日本では円の価値を高めるために、円を買って、フランクに言えば円の価値が高い、円の需要があることを示さなければならない。

 実務においては財務省の所管である「外国為替資金特別会計」、通称「外為特会」にあるドル資金を売却し、日本円を買い入れるということが行われる。

 反対に「ドル買い・円売り介入」がされるのは円高が甚だしい場合である。円高とは、円安と逆に、円の他通貨に対する相対的価値、言い換えると、

円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に多い状態のこと

日本銀行 https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g18.htm/

である。

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 つまり、他の通貨と交換する際に、同じ1単位の円でもより多くの外貨を獲得できるとき、円の価値が高く、円高という状態になる。円高が進みすぎると、輸出業績が悪化したり、外国人の国内消費が減少したりする可能性があるため、円を売りに出し、外貨を買い入れることでその価値を緩和しようとするのだ、

 この場合には、政府短期証券の発行により「円」の資金を調達し、売却した資金でドルを買い入れるという動きがなされる。

大量の1万円札

歴史

 今回の為替介入が注目されている理由の一つに、前回最後に為替介入が行われてから長い年月が経っているということが挙げられる。円高、円安に関わらずこれまでに為替介入はどのようなタイミングで行われれてきたのだろうか。ドルに限ってみていく。

 1995年から2004年3月にかけては、ほとんどの場合1回につき1兆円に満たない程度で、100日以上為替介入が行われている。この時期の為替介入はほとんどが円高対策であった。たとえば、1995年の2月から9月には、1ドルに対して79円という規模の円高によって日米の間に貿易摩擦が発生する懸念を解消するため、日米共同で約5兆円規模の介入が行われている。

 為替介入の要因として興味深いのは、2001年の円高阻止であろう。アメリカ合衆国で9.11のハイジャック事件が起こったことでドル安が進み、その影響による円高を阻止するために約3兆円規模の介入が行われた。この時の為替相場は1ドルに対して115円の水準であった。

 また、2011年の3月には約2兆円規模の円売りドル買い介入が行われた。これは東日本大震災が発生した後に投機的な動きが加速し、これを抑制するためにG7各国で協調して行われた介入である。

 ここで注目しなければならないのは、円安是正の介入は1998年4月に行われたものが最後であるということだ。この時は1ドルに対し130円水準の円安であり、この時点で約3兆円規模の介入が行われた。円安のピークは1998年9月の147円であったが、1年後の1999年9月には120円ほどまで抑制された。

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今回のケース

 ここまで為替介入の概要と歴史について見てきたが、今回行われる為替介入について解説する。

 実に24年ぶりとなる円安是正の為替介入は、9月22日の午後に行われた。24年前、1998年の円買いドル売り介入には3兆円弱が充てられたのに対し、今回は1日で既に3兆円ほどの介入額になったと予測されており、全体の介入額は10兆円規模になるともいわれている。もしこれが事実であれば過去最大規模の為替介入が行われることになるが、それに報いるほどの効果があるかどうかが肝心だ。

 介入が行われた22日には、145円台後半から140円前半まで一気に5円超の下落が起こった。しかしながら5日ほど経過した27日時点で144円台まで戻ってきてしまっている。一発で変動を抑えられるような為替介入はこれまでにも存在しなかったとはいえ、効果が疑わしいのは仕方がないだろう。

 また、このような円安の状況が起こってしまった原因にも目を向ける必要があるだろう。それは、日本と欧米各国の金融政策の隔たりにある。コロナショックを抜け出し、欧米各国の中央銀行が利上げを加速している中、日本は金融緩和を継続しているため、市場に出回る通貨に多寡が生まれ、日本円の価値が下落しているのである。

日本経済のこれから

 今回の記事では、為替介入の概要とその実施の歴史、そして急激な円安是正に対して放たれた円買いドル売り政策について解説した。

 この介入の是非の議論は世の経済学者や金融政策の有識者に任せるとして、昨今の為替市場や経済状況、「30年」 にもはや突入してしまいそうな「失われた20年」を生み出したのは誰なのか、一人一人の金融と政治のリテラシーを高める必要がありそうだ。

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ライターページ おとな研究所 編集部員 ジェンダー/セクシュアリティや外国人の権利問題に強く関心を持っています。社会問題についての記事が多くなると思いますが、おとな研究所に新しい風を吹かせることができればと思います。