おとな研究所は新しくなりました!

世論”調査”なのか、操作なのか。

ほぼ毎週どこかの大手メディアが実施している世論調査。内閣や政党の支持率を始めとしたリアルタイムの社会動向を知ることができ、新たな調査結果が出される度に大きな反響を呼ぶ。

 しかし、一部からは「政権による世論操作だ」「マスコミの不当調査である」などの主張も少なからず聞こえる。世論調査は本当に正確であるのだろうか、まさか私たちは政府やマスコミに扇動されているのだろうか。

1.そもそも世論調査はどのようにして行うのか?

かつては個別面談方式(調査員が自宅などに訪れて直接回答してもらう)ことが主流であったが、莫大な経費や外出時間の増加、プライバシー意識の向上などにより回答率の減少傾向がみられた。そこで2000年ごろより各社は「電話調査」に変更し、調査を行っている。また、電話調査のほとんどはRDDという方式を用いている。

RDD方式とは?

⇒Random Digit Dialing の略称で、コンピュータでランダムに発生させた番号に電話を掛ける調査である。かつては電話帳データを元に調査対象者を決定していたが、近年は電話帳に番号を載せない世帯が増加したため、この方式に変更された。

更に若年層を中心に「固定電話を持たない」人たちが増加したために携帯電話での調査も追加されたが、これは特定の地域を対象とした世論調査では行われていないことが多い。

 一部の調査会社では、結果が偏らないように他にも様々な工夫を施している。例えば朝日新聞は、まず世帯人数を聞いてから乱数表に従って「年齢が上から○番目の方にお願いします」と対象者を決めるそうだ。家にいることが多い高齢者や主婦に回答が偏ることを避ける狙いがある。

<スポンサー>

(出典:https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/3018 )

また、月例世論調査でのサンプル数は2000、回答数1000程度(回答率5割程度)が相場である。たった1000であるが、統計的には十分な数である。また、国政選挙が近い時期などはサンプル数を倍にして調査していることが多い。(NHKなど)

なお、誤解されやすいのは「世論調査」と「選挙情勢調査」の違いである。この2つの大きな違いついては後日、別の記事に掲載する。

2.調査会社によって数字が違うのはなぜか

内閣支持率が○○新聞では40%、○○放送では35パーセント…などと調査会社によって数値が異なることを疑問に思っている方は少なくないのではないか。

例として、今年2月の一部調査における内閣支持率を羅列してみた。これだけでも各社大きく数字が違うことが分かる。

もちろんすべて同じ日・時間・地域・人で調査を行っていないために差異が生じることは当然であるが、ほかにも様々な理由が考えられる。

大きな影響を与えるのは、聞き方の違いである。単刀直入に「支持するか支持しないか」から「○○である政権を支持するのか」など表現を若干変える、そして質問の順番を変えるだけでも異なる回答が生じてしまう可能性が高い。

<スポンサー>

もちろん政策の賛否を問うことにも関係がある。例えばこのように聞いた場合はどうだろうか?

  • あなたは消費税増税に賛成ですか、反対ですか
  • 財政再建のために消費税の引き上げは賛成か、反対か

「財政再建のため」と付け加えることで賛成が増えることは想像できるだろう。言い換えれば、質問文を変えることで調査結果を誘導することも十分可能であるといえるだろう。

また重ね聞きの有無も支持率や賛否の変動に大きく反映する。つまり「どちらでもない・未回答」者に対してあえて言えばどちらか、などと再度質問を行うことである。これを行っているのは日経新聞や読売新聞などであり、これらの証拠に支持・不支持が他の調査(重ね聞きを行わない朝日新聞など)よりも相対的に数値が大きくなっていることが分かる。(表参照)

日経新聞や朝日新聞では有料ではあるものの、詳しい調査結果(クロス集計)を閲覧することが可能だ。重ね聞きの影響なども知ることができるため、気になる方は会員登録して詳細を調べてみることをおすすめする。

3.「世論調査は嘘」botツイートの切り取り

Twitterで「世論調査」と検索するとbotであるみたいだが、以下のような画像が添付されたツイートが多く見られる。

https://twitter.com/lBlb0PIthd5UUzE/status/1241204139406704640?s=20

良識ある方々ならこれらの項目を見れば一目瞭然であると思うが、これらはそもそも安倍内閣の支持率が相対的に低い地域である調査(沖縄の琉球新報や北海道の十勝新聞)、正確な調査とはいえないもの(テレビ生放送でのアンケート)が並べられただけである。

ネットの偏った情報や都合のいいように歪曲された思想に惑わされず、真摯に向き合っていただきたいものだ。

<スポンサー>

4.各社調査を見比べよう

 同一機関でない以上、調査結果数値が乖離するのは当然のことであると言えるだろう。各社特有の偏りがあるからこそ「世論操作」ではないのかとの指摘があることは分からなくもないが、以上のような要因が存在するかつ、世論調査には全体的に見れば同一傾向がみられるため、結果が操作されている可能性は極めて低いと考えられる。

ただし、一つの調査結果だけ見て妄信するのではなくて複数の結果を見比べていただくことをおすすめしたい。