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大学は、原則オンライン授業をいつまで続けるのか

 第1次世界大戦も、始まった頃は誰も「世界大戦」になると予想していなかったと言われる。1914年7月末に始まった戦争は、当初は、「クリスマスまでに終わる」と予想されていた。しかし、数年単位で、世界を巻き込む大戦となってしまった。

 戦争ではないが、新型コロナも当初、「半年後には収束する」という楽観的な見方が多かった。したがって、半年後は終わっているから、今は我慢しようという意見が支配的であった。それに加えて、当時はまだどれほどの脅威を持ったウイルスであったため、飲食店が店内飲食を中止したり、他の店舗も休業を行ったり、様々な自粛策を行ったものだ。

 そして、教育機関も例外ではなかった。大学・高校・中学校・小学校が新学期から一斉に休校を行い、学校から学生・生徒の姿が消えてしまった。特に、大学は令和2年度のカリキュラムの半分(前期分)を、全面的にオンライン授業で行う学校がほとんどであった。今回は、その大学が現在抱えている問題について扱いたい。9月には終わると言われていた大学内部の自粛は、いつになったら終わるのだろうか。

もう半年が経った―大学は「出口戦略」を示すべき

 もう、新型コロナが流行して半年が経った。3月末から4月にかけて、満員電車回避やオフィスでの密防止を目的として、テレワークが始まった。緊急事態宣言下では、路線によってはラッシュアワーでも座れるほど、首都圏では電車が空いていた。高校以下の学校はもちろん休校で、大学はオンライン授業。夜間の店舗営業も自粛要請がなされた。「首都圏総自粛」ともいわんばかりの体制で、少なくとも首都圏では自粛が行われた。

 しかし、今では社会はほとんど元通りだ。大学を除いてだが。

 朝に京浜東北線、小田急線、中央線などに乗れば満員電車に揺られるようになった。ラッシュアワーの主要駅付近の街は、人でごった返していて、いわゆる「三密」のひとつである「密集」状態となっている。小中高は、対面授業を再開した。それにもかかわらず、大学だけが取り残されているのだ。

 多くの大学で後期の授業が開始されたが、原則オンライン授業を取る大学が多い。社会は動き出しているのにもかかわらず、なぜオンライン授業が依然として原則となるのか、理解に苦しむ。多くの学生やその家族などが、ツイッター等のSNSを通じて、意見表明をしているので、いくつか紹介したい。

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https://twitter.com/asa_20011105/status/1297845506882691072

 私は、大学が対面授業を再開しないことに、全面的に反対ではない。しかし、大学は、コロナ自粛からの「出口戦略」を学生に示すべきだ。すなわち、どのような基準で対面授業を再開し、どのような基準で部活動・サークル活動のための施設利用を再開するのか、学生に対し基準を明確に提示すべきだ。そして、その基準を満たした場合には、感染対策を十分に行った上で、速やかに平時と同様の大学に移行すべきである。

 現状では、ほとんどの大学が出口戦略を示さないまま、学生に自粛を強いているだけである。このような状況下で、学生が納得して自粛するはずがない。

オンライン授業への支援も打ち切り

 携帯電話各社が行っていた大学生向けのデータ通信の支援は、8月末をもって打ち切りとなった。これ以降、大学生・大学院生は、オンライン授業のコストを自腹を切って払わなければならない。

 多くの大学がいまだにオンライン授業を原則としているにもかかわらず、支援の打ち切りが8月末のタイミングで行われた。政府と文部科学省は、大学に対面授業の再開を要請するか、携帯会社に支援の継続を要請するか、いずれかを行うべきである。

大学生だけが、自粛する必要はない

 あえて批判を恐れずに言いたい。大学生だけが、自粛をする必要はない。社会が普通の生活を再開しようとしているのであれば、大学生もそれにならって良い。

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 そもそも、現役ないし20代の間に進学した大学生は、新型コロナによる死亡リスク・重症化リスクともにかなり低いはずである。そして、日本の大学生のほとんどは20代以下である。本来最も自粛する必要のない年齢層の大学生にだけ、「出口戦略」を説明することなく自粛を求めるという、今の多くの大学当局の方針には、非常に疑問が残る。

 そして、コロナ初期には大学生の心配をしていた多くの政治家も、大学生のことを忘れているのではないか。もしくは、政治や教育行政は、自粛コストを大学生だけに支払わせるつもりなのか。政治も、教育行政も、この問いに真摯に答えてほしい。