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左派の奇妙なワクチン憎悪

立憲民主党は21日、衆議院岡山5区の公認候補として元生活の党所属参議院議員はたともこ氏(55)の公認を発表した。ごく普通な発表に見えるが、はた氏にはこれまでワクチン反対運動に関わってきた経緯がある。この公認は、日本の左派が抱える奇妙なワクチン憎悪を象徴する。

反ワクチンは非科学的な視点からワクチン接種政策に対して批判をする姿勢だが、これ自体は世界中どこにでもある運動である。欧米ではビーガンやネイチャー界隈などの左派ワクチンに否定的だったり、Qアノン系極右もワクチンに否定的だ。

しかし日本のいわゆる左派エスタブリッシュメントにはワクチン否定を肯定、黙認するような風潮がある。これは、あまり他国では見られない事で、日本特有とも言えるだろう。他国では反ワクチン運動は左派右派ともに、陰謀論界隈など、権力から遠く離れた地位でしか根付く事はない。少なくとも、メディアが反ワクチンに肯定的な報道を行う事や、それに基づいて国会議員がワクチンの効用を否定する事はあり得ない。新型コロナウイルスに対するワクチン接種に関する問題も、その強制が焦点となっており、ワクチン自体を否定する事ではない。

しかし、2010年代になってから、日本ではエビデンスに基づかないワクチン批判が相次で左派に取り上げられ、結果として保健政策に影響と与えている。

HPVワクチンの悲劇

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HPVワクチン

特にこれを象徴するのはHPVワクチン問題だ。HPVとはヒトパイローマウイルス(Human Papilloma Virus)の略称で、尖圭コンジローマや子宮頸がんの原因となるウイルスだ。HPVウイルス性行為で感染し、子宮頸がんは世界で毎年60万人近い女性が罹患し、30万人以上の女性の命を奪っている。

世界中で猛威を振るう子宮頸がんだが、これに対しては現在効果的なVLPワクチンが存在する。このワクチンは大変効果的で、子宮頸がんを7割、肛門癌を8割抑制する事が認められている。世界保健機関(WHO)もHPVワクチンを全世界での接種を推進している。

VLPワクチン
ウイルスのゲノムを含まない外殻たんぱく質のみを、微生物や昆虫細胞、植物で作り、単離、精製したワクチン。投与後、抗原たんぱく質が細胞外から取り込まれ、ペプチドに分解されて、主に液性免疫を誘導すると考えられている。

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DNA・mRNA・ベクター… 多様なワクチンの違いは?ー日本経済新聞

結果的に、先進国と中進国を中心に世界各国でHPVワクチンは今では高い接種率を誇る。多集の多くの国では80%を超え、イギリスでは90%突破が間近だ。しかしながら、日本での接種率は0.3%と、発展途上国も驚くような異常に低い数値となっている。今ではWHOに名指しで批判される程だ。

専門家の副反応検討委員会は、子宮頸がんワクチンと副反応の因果関係は無いと結論を出したにもかかわらず、政府は予防接種を再開できないでいる。以前からGASVSが指摘しているとおり、薄弱なエビデンスに基づく政治判断は、安全で効果あるワクチンの接種を妨げ、真の被害をもたらす。若い女性が本来なら避けられる筈の子宮頚がんの被害と脅威に暴露され続けている。

— 世界保健機関 ワクチンの安全性に関する国際委員会、2015年12月22日

日本の異常に低いHPVワクチン接種率は、左派活動家や左派メディアによる執拗な反ワクチン運動が繰り返された結果だ。HPVワクチン接種後に重大な副反応を患ったと主張する人を取り上げ、WHOやCDC,EMAまでが統計学的に安全性を確認したにもかかわらず、因果関係があるかも怪しい主張を左派主要紙が報道した。これが結果として、HPVワクチン接種反対の世論を生み出し、政府も世論に押される形で積極的接種を中断せざるを得なかった。

子宮頸癌や他のHPV関連疾患は重要な公衆衛生上の課題であり, HPVワクチンは各国の定期予防接種プログラムに取り入れられるべきである。第一次接種対象は9~14歳の女児であり, 次いで実施可能で費用対効果が良く第一次接種対象の接種や子宮頸癌スクリーニングの活動が妨げられない場合にのみ, 二次接種対象として男性や15歳以上の女性を考慮する。

HPVワクチンに関するWHOポジションペーパー 2017

この結果として、2000年から2003年生まれの女性だけで、本来接種を行っていれば防げた筈である子宮頸がんに約1万7000人が疾患し、4000人もの命が失われた事が大阪大学の研究で判明した。

反ワクチンに加担する左派政治家

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山本太郎氏

このインフォデミックに呼応する形で、左派政治家の反ワクチン主張が過激化していった。れいわ新選組代表の山本太郎氏はHPVワクチンに関して「有効性が低く、必要ない」とたびたび主張している。更に、HPVワクチン接種を「人体実験」とも称し、エビデンスに基づかないワクチン否定に走っている。

関連記事:反緊縮以前に反科学:れいわ新選組、山本太郎は「謝罪と賠償」を

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更に、立憲民主党所属のあべともこ参議院議員は質疑でHPVワクチンのリスクが高いと根拠無く主張するなど、国会審議もエビデンスに基づかないワクチン批判の場となった。また、あべ氏はこの様な内容の投稿をSNSでも行っており、不正確な情報を拡散しているとの指摘もある。

反ワクチンは少数野党だけの問題ではない。野党第一党でもコロナワクチンに関するデマも広がりつつある。立憲民主党所属の候補者、北條智彦氏はSNS上でワクチンに関する非正確な情報を拡散、広報誌「立憲民主党号外版」でも同じような主張が繰り返された。

ワクチンに反対する言動こそ行わないものの、立憲民主党の執行部もワクチン軽視と捉えられる発言を繰り返している。枝野代表は接種センターの設置を批判し、接種よりも検査を優先すべきとの見解をしめした。このようなな発言の念頭には、そもそもワクチンの効果性に疑問を持っている可能性も否定できない。やはり、立憲民主党がワクチン自体に積極的な姿勢では無い疑念も出てくる。

関連記事:【ゼロコロナ戦略】「感染者ゼロ」ではなく〇〇ゼロ?! 立憲民主党の感染症政策を徹底解説

もちろん、左派政治家の全員が反ワクチンと言う事ではない。千葉県の熊谷知事などはHPVワクチンの積極的な推進を図っている。しかしながら、この熱意は立憲民主党など左派政党の執行部にはない。

今回のはた ともこ氏に公認は左派のワクチン否定の流れを一層強化するものだ。参議院議員時代には議員として唯一HPVワクチンの定例接種化を記した改正予防接種法に反対した。更に「HPVワクチンは必要ありません」など、ワクチン否定の著書も数冊出版している。

落選後はれいわ新選組の山本太郎前参議院議員の秘書を務めていた時代もあり、山本氏の反ワクチン姿勢に影響を与えた事も推測できる。

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問われる野党第一党の姿勢

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コロナワクチン接種センター

立憲民主党は野党第一党であり、国内の左派勢力としては最大の規模を誇る。自民党に対抗する一部野党による「野党共闘」の筆頭である政党として、少なくとも反ワクチンほど公益と相反するデマを主張する候補者の公認は左派勢力のワクチン否定容認の姿勢を象徴するのではないだろうか?

参照:立憲民主党公式サイト

更に、今月7日には山本太郎氏率いるれいわ新選組も野党共闘の枠組みである市民連合との政策合意を交わした。事実上、立憲民主党とれいわ新選組は共闘する事となったのだが、果たして反ワクチン政党と共闘する事が野党第一党のあるべき姿なのだろうか?少なくとも、国際常識からすれば大変奇妙だとしけ言いようがない。

関連記事:市民連合を介した立民・共産・社民・れいわの「共通政策」を徹底解説!

もしこれが、経済政策や社会政策における奇妙さだった場合、トリビア程度にしかならない事だろう。しかし、ワクチン政策は人々の生命と社会の保健に大きくかかわってくる。ワクチンは疫病の感染拡大に対するほぼ唯一の切り札だ。メディアや左派政党の執行部にはこれを理解した上で、エビデンスファーストの政策論争を行って欲しい所である。

参考記事:

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